パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2025年2月19日

三山慧さん
(日本車いすラグビー連盟 強化委員会メカニック)

頂点目指す選手を支えるミリ単位の神業整備


激しいタックルが繰り返される車いすラグビー。競技専用の車いす「ラグ車」は、部品が欠けたり、パンクしたり、しばしばトラブルが起こる。これをメンテナンスするのがメカニックと呼ばれる“職人”だ。三山慧さんは日本代表チームの専属メカニックとして2007年から国内外の合宿や遠征などに帯同し、パラリンピックも北京2008大会から東京2020大会まで、4大会連続でサポートした。

アスリートはラグ車に乗った時のフィーリングを大事にする。障がいにより感覚がない選手もいるため、一人ひとりと対話し、観察し、何を求めているかを探っていく。選手の要望に応え、練習や試合中に素早く修理・点検するには、幅広い知識と技術が必要だ。「10人いれば全員セッティングが違う、正解がない世界」であるがゆえに、壁にぶつかることもあったが、日本の車いすラグビーの発展を望む情熱で乗り越えてきた。

2月のジャパンパラ競技大会でラグ車の修理を行う三山さん

そんななか、メカニックとして集大成を迎えたのがパリ2024大会だ。日本代表が金メダル獲得という結果を出したことで、「やってきたことは間違いじゃなかったと思えた。自信になりました」と振り返る。三山さんは現地には行かず、日本で試合映像をチェックした。コート上からではなく俯瞰で試合を観ることで、選手の個性や世界のラグ車の現状をより客観的に捉えることができたことも収穫だった。「そのなかで、日本のメンテナンス技術は最先端だと感じました。ただ、現状維持は衰退と同じ。今後は日本代表をサポートしながら、より良い資材の研究や部品開発なども手掛けていきたいと思っています」と付け加える。

三山さんは現在、連盟の国際部の事業の一環として、タイやマレーシアなどアジア諸国の競技団体や車いすメーカーと連携し、コストを抑えたラグ車の製造やメンテナンスのノウハウを伝える普及活動にも力を入れている。「日本も車いすラグビーに取り組み始めたころは、ニュージーランドやオーストラリアから担当者が来て、ラグ車を採寸してくれたり、クリニックを開いてくれたからスタートできました。日本が世界の頂点に立った今、当然その恩返しをするべき時が来ていると思っています」。三山さんは、これからも車いすラグビーに大きな情熱を注ぎ、選手たちを支えていくつもりだ。

(MA SPORTS)