パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2025年4月9日

JAPAN FOOTBALL LIVE 2025

デフサッカー男子日本代表が国立競技場でエキシビションマッチを実施


初めて国立競技場でプレーしたデフサッカー男子日本代表

4月2日、国立競技場でデフサッカー男子日本代表が日本フットボールリーグ(JFL)のクリアソン新宿とのエキシビションマッチに臨んだ。11月に日本で開かれる「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025(以下、東京2025デフリンピック)」の機運醸成、男子代表の強化と育成を目指すもので、デフサッカー代表が国立競技場でプレーするのは初めて。会場には約3800人が応援に駆けつけ、手話をベースにした応援スタイル「サインエール」で背中を押した。

選手は補聴器等を外してプレーし、ピッチ上では手話やジェスチャー、アイコンタクトなどでコミュニケーションを取る。今回は国際大会同様に主審は笛とフラッグの両方を使用してファウルなどの状況を選手に伝え、両ゴール裏にもフラッグを所持した審判員が配置された。

試合は、元Jリーガーらを擁するクリアソン新宿の厳しいプレスに動きを封じられ、前半20分に先制点を許したデフサッカー男子日本代表。後半に入ると積極的に選手交代しながら連携を深めて好機を作るが、残り3分で追加点を入れられ、0-2で敗れた。吉田匡良監督は「失点は自分たちの技術ミスが原因。テーマにしている『5秒に一度は周りを見る』が出来ていなかった。1点を取れなかったのは悔いが残るが、全力で戦った。この素晴らしい経験を次につなげたい」と、言葉に力を込めた。また、クリアソン新宿の北嶋秀朗監督は、「デフの選手のボールや相手など見えているものへの執着心が強く、プレーが研ぎ澄まされていると感じた。強度の高い試合ができたことに感謝したい」と話した。

主審は笛以外にフラッグも所持し、視覚的に情報を伝える

デフサッカー男子日本代表は、第20回夏季デフリンピック競技大会(オーストラリア)から4大会連続でデフリンピックに出場している。前回の第24回夏季デフリンピック競技大会(ブラジル)はアジア予選となる2大会を開催地の政情不安やコロナ禍の影響で参加を断念したため、出場できなかった。ただ、2023年の世界選手権では準優勝、翌年のアジア太平洋ろう者競技大会で優勝と結果を残し、存在感を示し続けてきた。それだけに、どの選手もアジア王者として臨む地元開催の東京2025デフリンピックに懸ける想いは強い。

キャプテンの松元卓巳(GK/光陽クラブ)は、「東京大会で世界一という結果を残すことで、スポーツには聞こえない、聞こえにくいという障がいは関係ないということを証明したい。格上のチームとの対戦が想定されるが、ライバルは自分たち。自分自身から逃げないこと、取り組んでいるサッカーをしっかりと出すことができれば、勝てると思っている」と力強く話し、「ぜひ応援してほしい」と結んだ。

(MA SPORTS)