パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2023年9月2日

木下グループ ITTF JAPAN PARA OPEN 2023

4年ぶり開催! 日本勢は単複で7個の金メダルを獲得!

パラ卓球の国際大会「木下グループ ITTF JAPAN PARA OPEN 2023」が8月30日から4日間にわたり、東京体育館で開かれた。初開催の2019年大会以来、4年ぶりの開催。パリ2024パラリンピック出場のためのポイント対象大会で、強豪国の中国や大会日程が重なったヨーロッパ勢は参加を見送ったものの、世界11の国と地域から130人を超える選手が集結した。

激闘の末に逆転勝利で優勝を飾った八木

立位男子単で八木が大逆転優勝! 舟山もライバル下して頂点に

立位のシングルスでは、男子の2つのクラスで金メダルを獲得した。最新の世界ランキングで3位につける男子クラス7の八木克勝(琉球アスティーダ)は、準決勝で来田啓幹(日本オラクル)にフルゲームで競り勝ち、決勝ではパンプー・チャレンポン(タイ)にチャンピオンシップポイントを握られながら、そこから脅威の粘りを見せて逆転に成功。3-2で優勝を果たした。9位だった東京2020パラリンピック(以下、東京2020大会)後にパリ大会を見据えてより攻撃的なラバーに変えたという八木。今季は5月と7月の国際大会を制するなど結果につなげており、「10月のアジアパラでも優勝を狙う」と、自信をのぞかせていた。

男子クラス10の舟山真弘(早稲田大)は総当たりのグループリーグ最終戦で、2連敗中の蘇晉賢(チャイニーズタイペイ)と対戦。強化してきたフォアハンドの安定感が光り、3-1で勝利し、頂点に立った。小学5年で卓球を始め、高校3年だった昨年はインターハイにも出場。2021年のアジアユースパラ競技大会でパラ卓球の国際大会デビューを果たしている。最新の世界ランキングは10位とパリ大会を狙える位置につけているが、「焦らずに実力を身につけたい」と冷静に自身を見つめ、さらなる成長を誓っていた。

男子クラス9の岩渕幸洋(協和キリン)は、決勝で東京2020大会銀メダリストのマ・リン(オーストラリア)に1-3で敗れて準優勝。阿部隼万(キンライサー)と組んだ男子ダブルス(クラス18)と、友野有理(タマディック/村上ジュニア)と組んだ混合ダブルス(クラス17)では強さを発揮し、ダブルス2冠に輝いた。

女子はクラス10の中村望(花野井クラブ)が決勝で世界ランク1位のヤン・チェン(オーストラリア)と激突。ストレートで敗れたものの、堂々の銀メダルを獲得した。また、コンバインドで行われたクラス8-9では、友野が3位に入った。

車いすは男子単で宇野が銀メダル獲得! 中本は3種目で表彰台

男子ダブルスで息の合ったプレーを見せる宇野(右)・松尾組

車いすのシングルスは、男子クラス2の宇野正則(コスモトレードアンドサービス)がグループリーグで2勝1敗とし、銀メダルを獲得した。身長181㎝と日本人のなかでは大きく、腕のリーチは武器となる。一方で、利き手の右手の握力はゼロで、ラケットをバンドで固定するなど工夫する。試合が長引くと痺れることがあるというが、最後まで集中力を保ち、戦い抜いた。現在は、海外勢の短いサーブやロビングといった多彩なショットに対応するために、車いすの高さを上げて試合に臨んでいる宇野。「母国開催の大会でメダルを獲れたのはすごく嬉しい」と、笑顔を見せた。宇野は松尾充浩(ベリサーブ)と組んだ男子ダブルス(クラス4)でも3位に入った。

最多エントリー数の男子クラス3は、日本勢では北川雄一朗(関西福祉大)が唯一、決勝トーナメントに進出。準々決勝で韓国人選手にフルゲームの末に敗れてメダルには届かなかったが、存在感を見せた。男子クラス5は土井健太郎(D2C)と中本亨(ドマーニ卓球クラブ)がそれぞれ3位に入った。

中本は北川と組んだ男子ダブルス(クラス8)で銅メダル、宮崎恵菜(鳥取県立倉吉総合産業高/ドマーニ卓球クラブ)と組んだ混合ダブルス(クラス10)で銀メダル獲得と、エントリーした3種目すべてで結果を残した。同クラスの中村亮太(ドマーニ卓球クラブ)・別所キミヱ(同)組は銅メダルだった。女子シングルスでは日本勢は表彰台を逃した。

知的障がいクラスは女子の櫨山が3冠を達成!

櫨山は知的障がいクラスで見事に3冠を達成した

知的障がいクラスでは、女子の櫨山七菜子(青葉クラブ)がシングルスとダブルス2種目を制し、見事3冠を達成した。シングルスでは山口美也(絆サンセリテ滋賀)と激闘を繰り広げ、フルゲームの末に逆転で勝利。ライバルであり、ダブルパートーナーでもある山口との一戦への想いは強く、試合後は涙を浮かべて感極まった。女子ダブルスは4組中3組が日本人ペア。互いの手の内を知るだけに戦いにくさがあるなか、櫨山・山口ペアが3戦全勝で頂点に。混合ダブルスでも、櫨山は原一(レゾナック・ガスプロダクツ)と息の合ったプレーで決勝に進出。韓国人ペアを3-1で下した。

櫨山は大会を振り返り、「3冠を狙っていた」と明かし、「相手は強い人ばかりだけど、自分から向かっていく気持ちで戦った。自分のプレーに満足している」と、力強く語った。

男子シングルスは、グループリーグを突破した日本の4選手が決勝トーナメントに進出。そのうち、原と竹守彪(TO MAX)が準決勝まで駒を進めた。今大会と同じ東京体育館で行われた東京2020大会で5位だった竹守は、「この舞台でプレーができて嬉しい」とコメント。10月のアジアパラでのさらなる活躍に期待したい。男子ダブルスは、グループリーグで2勝とした山本駿太(フォレストTTC)・竹守組が日本勢最上位の2位に入った。

(MA SPORTS)