パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2024年3月5日

CO・OP 2024 FISパラ・ノルディックスキージャパンカップ白馬大会

国内最高レベルの大会を白馬で開催!

国際スキー・スノーボード連盟(FIS)と日本障害者スキー連盟主催の「CO・OP 2024 FISパラ・ノルディックスキージャパンカップ白馬大会」が24日から2日間にわたり、白馬クロスカントリー競技場(スノーハープ)で開かれた。国際大会で活躍するトップ選手のほか、競技を始めたばかりの育成選手らも参加し、熱い戦いを繰り広げた。

今季、W杯で2勝を挙げている川除が圧巻の強さで2種目を制した

今季W杯2勝の川除が圧巻勝利

初日のスプリントクラシカル1.25㎞は、男子・女子、すべてのカテゴリー(身体、視覚、聴覚、ID)を統合したオールコンバインドで実施。レースは予選の上位12人が準決勝に進み、さらにその上位6人で決勝を争う形式で行われ、目まぐるしく順位が入れ替わる白熱した展開に会場は多いに盛り上がった。

決勝は、昨季のワールドカップ(W杯)総合優勝の川除大輝(日立ソリューションズ、LW5/7)が終盤に先頭に立ち、そのままトップでゴールし、優勝を飾った。4番手でスタートした新田佳浩(同、LW8)は、バックストレートで怒涛のラストスパートを見せ、2位に入った。女子選手で唯一、決勝に駒を進めた阿部友里香(同、LW6)が3位に入った。今回は平地が多いコースレイアウト。優勝した川除は、「平地でも加速することを意識した練習の成果を出すことができた」と振り返った。

今季もイタリアでのW杯で2勝を挙げ、好調を維持する川除。2年後のミラノ・コルティナダンペッツォ2026パラリンピックでの連覇も期待されている。「イタリアのW杯はパラリンピックとは別会場だったけれど、時差や食べ物、標高が似ていた。その環境でメダルを獲得できると証明できたので、今季のテーマとしては2年後に向けてどう調整するかを大切にしたい」と話した。

出産後、大会復帰2戦目の阿部が表彰台!

女子立位フリー5㎞で優勝し、娘の桜羽ちゃんを抱いて表彰台にあがった阿部

2日目のフリー5㎞は、立位、座位、男女別にレースを実施。4人がエントリーした女子立位は、阿部が優勝を果たした。昨年4月に第一子となる桜羽(おとは)ちゃんを出産した阿部。8月末の合宿に参加し、今年1月の全日本障害者クロスカントリースキー競技大会で大会に復帰。北海道のスキーマラソン大会などを経て、今大会は復帰2戦目となる。

当初は体力の低下を実感していたが、合宿参加やトレーニングを重ねて徐々に戻ってきているという。今大会の2種目も最後まで力強いパフォーマンスを披露しており、「しっかり滑ることができた」と、笑顔を見せた。3月にカナダで開かれるW杯にも出場予定だといい、「海外勢はレベルが高く、さらに強くなっている。W杯で今の自分の現在地を把握し、オフシーズンのトレーニングに活かしたい」と話し、前を向いた。

男子立位は、上り坂を軽快に登りリードを広げた川除が制し、2冠を達成。一周1.25kmのコースを4周する男子座位は、森宏明(朝日新聞社、LW12)がレース終盤までスピードを落とさず駆け抜け、強さを発揮した。

J-STARプロジェクト生も奮闘

今後の成長が期待される鈴木(左)と佐藤

競技歴の浅いに育成選手とっては、川除や新田らパラリンピックメダリストと同じコースを滑ることで、自分の実力を測る絶好の機会となった。
育成選手のフリー5㎞は測定レースとして行われ、男子立位の鈴木剛(LW8)が7人中トップでゴールした。「同じ育成の選手たちと互いに刺激しあいながらレースができた。1位を獲れて嬉しい」と喜んだ。先天性の左ひじ先欠損で、学生時代は水泳やサッカーに取り組んだという27歳の鈴木。スポーツ庁によるアスリート発掘事業「J-STARプロジェクト」6期生で、スキー競技はほぼ未経験ながら、関係者の丁寧なサポートを受け、着実に力を着けてきている。1月の全日本が初レース。この時も育成選手のなかでトップの成績をおさめ、「NHK旭川放送局長賞」を受賞した。「思うように板が前に進まないし、難しいけれど、激励していただいたので続けてみようと思った」と笑い、「いろんな種目に挑戦して自分の適正を探していければ」と力強く語った。

また、鈴木と同じJ-STARプロジェクト6期生で女子座位の佐藤那奈(丹羽広域事務組合消防本部、LW11)も測定レースで6位と奮闘した。約4年前にサーフィンによる非外傷性の脊髄障がいを発症し、車いす生活になった佐藤。もともとスポーツが得意で、アルペンスキーやスノーボードにも親しんでいたが、「やったことがない競技に挑戦したい」とノルディックスキーを選んだ。元消防士で、受傷後は事務職として同じ消防署に勤務しながら競技を続けている。「消防士は身体を動かすことが日常。しんどいのが当たり前という気持ちの持ち方が、競技にも活きていると思う」と話し、前を向いた。

(MA SPORTS)