
パラ水泳ワールドシリーズ富士-静岡2025
3日間の熱戦! パラ水泳のワールドシリーズが日本初開催
パラ水泳の国際大会「パラ水泳ワールドシリーズ富士-静岡2025」が10日から3日間にわたり、静岡県富士水泳場で行われた。パラリンピック、世界選手権に次ぐ位置づけとなるワールドシリーズが日本で開催されるのは初。21の国と地域から233人がエントリーした。日本の選手は9月にシンガポールで開かれる世界選手権の代表選考も兼ねており、次世代スイマーからパリ2024パラリンピック競技大会(以下、パリ2024大会)のメダリストまで、多数参加した。

山口(中央)は男子100m平泳ぎで世界新記録を樹立した
山口が男子100m平泳ぎで2年ぶりに世界記録を更新!
パラ水泳は選手の障がいの種類や程度により「クラス分け」を実施し、同じクラスの選手同士でタイムを争うが、ワールドシリーズは障がいによるクラス分けが異なる選手たちが一緒に泳ぎ、クラス別に算出したポイントシステムで種目ごとに順位を競う。
そんななか、男子100m平泳ぎで大記録が誕生した。予選を1位で通過した山口尚秀(SB14/四国ガス)が決勝でも好パフォーマンスを披露。スタート直後からリードを保ちトップで折り返すと、後半も2位以下を大きく引き離す力強い泳ぎでフィニッシュ。自身が2年前に樹立した世界記録を0秒11上回る1分2秒64で優勝を果たした。連覇を期待されたパリ2024大会では銅メダル。「できればパリで出したかった」と苦笑いを浮かべた山口だったが、世界の競技レベルが上がるなかでの優勝に手ごたえを感じた様子で、「まだまだ速くなれるという実感がある」と力強く語った。同種目では、佐藤悠人(SB14/イトマンスイミングスクール向山校)も世界選手権の派遣基準記録を突破した。
また、男子100mバタフライは決勝に日本人5人が駒を進め、松田天空(S14/NECグリーンスイミングクラブ溝の口)と村上舜也(S14/同)がワン・ツーフィニッシュ。それぞれ57秒台をマークし、ともに世界選手権の派遣基準記録をクリアした。
地元出身の鈴木は「日本開催がパラ水泳の普及の一助になれば」

鈴木は「金メダルを狙いたい」と話していた男子50m平泳ぎで見事、頂点に立った
パリ2024大会の男子50m平泳ぎで金メダルを獲得した鈴木孝幸(SB3/GOLDWIN)は、今大会でも存在感を発揮。決勝を49秒49で泳いで頂点に立ち、「タイムも良かったし、非常にうれしい」と、充実した表情を見せた。また、男子100m自由形のレースでは視覚障がいや知的障がいのクラスの選手らと競って準優勝だった。鈴木はポイントシステムについて、「全クラスで競えるのは楽しい」と話し、ワールドシリーズの日本開催については「パラ水泳の普及の一助になれば」と、言葉に力を込めた。なお、鈴木と、同じくパリ2024大会で2種目で優勝した木村敬一(S14/東京ガス)は同種目のレースに出場したことで世界選手権の代表に内定した。
男子100m背泳ぎは、窪田幸太(S8/NTTファイナンス)が予選で全体の1位となる1分7秒26で泳ぎ、世界選手権の派遣基準記録を突破。今大会は獲得ポイントで順位が決まるため、「必ず決勝に行けるとは限らない状況だったので、予選にかけるつもりで泳いだ」と窪田。決勝も安定したフォームで7秒台をマークし、金メダルを獲得した。2位には山口尚秀が入り、予選を全体の2位で通過した荻原虎太郎(S8/セントラルスポーツ)は4位だった。
男子50m背泳ぎと同50mバタフライで2冠の田中映伍(S5/東洋大)、男子400m自由形のユース決勝を制した川渕大耀(NECグリーンスイミングクラブ溝の口)は世界選手権のU21の派遣基準記録を突破する活躍を見せた。
辻内、石浦らが世界選手権派遣基準記録をクリア

女子100m自由形で力強い泳ぎを見せた辻内
パリ2024大会の女子100m自由形で銅メダルを獲得した辻内彩野(S12/三菱商事)は同種目で4位となったが、予選を1分01秒53で泳ぎ、世界選手権の派遣基準記録を突破。「個人的にはアジア圏での世界選手権に出るのは初。すごく楽しみ」と話し、笑顔を見せた。また、女子50m自由形では3位に入った。
女子50mバタフライは決勝レースのみ実施。この種目を得意とする西田杏(S7/シロ)が自己ベストとなる36秒61で優勝を果たし、世界選手権の派遣基準記録もクリアした。西田はレース後、「地元開催でたくさんの声援が聞こえたるなかで、気持ちよく泳げた」と振り返った。
女子50m自由形は、石浦智美(S11/伊藤忠丸紅鉄鋼)が世界選手権の派遣基準記録をクリアした。決勝ではパリ2024大会で世界新記録を樹立して金メダルを獲得した馬佳(中国)らに競り勝ち、2位に入った。現在はパワーで押し切るよりも、より大きなストロークで距離を延ばす泳ぎに改善しているところだといい、レース後は「スタートの課題も見えたし、世界選手権に向けて泳ぎの精度を上げていきたい」と話し、前を向いた。
女子100m平泳ぎでは、芹澤美希香(SB14/宮前ドルフィン)が4位と表彰台を逃したものの、世界選手権の派遣基準記録を突破する力強い泳ぎを見せた。
(MA SPORTS)
