パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2019年5月21日

パラトライアスロン 宇田秀生選手

隻腕の鉄人が3位「東京でも表彰台を」


左手一本で操作するバイクで順位を上げ、得意のランにつないだ宇田

国際トライアスロン連合(ITU)が主催する「世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会」が18日、横浜市の山下公園周辺の特設会場で開催された。日本人9選手が出場し、男子では唯一、PTS4の宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本)が表彰台に上がった。

第1種目のスイムは「自分のペースを守って」泳ぎ、8人中7番目。次のバイクでは力強くペダルを踏み込み、前を行く2人をキャッチ。得意のランでも2人を抜き、3位でフィニッシュ。宇田は「満足いくレース展開」と、自信をのぞかせた。

東京2020パラリンピックでの活躍が期待される32歳。2013年、26歳の時に就業中に機械に巻き込まれる事故に遭い、利き腕の右腕を失った。その半年後にリハビリの延長でトライアスロンを始め、2015年の初レースで準優勝。さらに2カ月後のアジア選手権で頂点に立つと、2017年7月にはついに世界ランキング1位の座にたどり着き、トップトライアスリートの仲間入りを果たした。

隻腕の宇田は、スイムは左腕一本で水をかき、バイクはギアチェンジとブレーキが片腕で操作できる特注自転車を操る。高校時代は滋賀県代表に選抜されるほどの実力だったサッカーで培った脚力は、ランでの追い上げに生かされている。宇田の現在の世界ランキングは3位。「バイクとランはいいレベルで勝負できると感じた。でも泳力で劣る。3種目すべてのパフォーマンスを上げないとトップは狙えない」と宇田。

その課題克服のため、プールはもちろん、地元・滋賀の琵琶湖でも強化に励む。波やうねりに負けずまっすぐ泳いでタイムロスをなくすトレーニングだ。また、路面抵抗や空気抵抗を低減するための工夫が施されたバイクを新たに作っているところだといい、東京大会に向けて着々と準備を進めている。

その夢の大舞台まで、あと1年。「目指すところは金メダルと言いたいけれど、まずは堅実に銅メダルから」と笑う宇田。隻腕の鉄人のさらなる成長から目が離せない。

(MA SPORTS)