パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2019年6月4日

陸上競技 若生裕太選手

バットと白球をやりに持ち替えて、22歳の挑戦


「いろんな方のアドバイスを吸収し、技術を磨いていきたい」と語る若生

「第30回日本パラ陸上競技選手権大会」が大阪市のヤンマースタジアム長居で行われ、男子やり投の視覚障がいF12クラスで若生裕太(関東パラ陸協)が54m25をマークし、初優勝を飾った。

軽快なステップワークから力強く投げられた2投目は、晴天を切り裂くようにぐんぐん飛んだ。自身が今年5月の北京グランプリで出した日本記録を2m05更新。「その北京でファウルだった投てきが最長の54mくらいだった。今大会もハマれば出せるかも、と思っていました」と、振り返る。

日本大学の体育学科で学ぶ22歳。高校時代は甲子園に出場経験のある名門野球部で主将も務めた。大学のサークルで野球に取り組んでいた20歳の秋、突然ボールが見えにくくなり、急激に視力が低下。レーベル遺伝性視神経症と診断された。その半年後、周囲のアドバイスもありパラスポーツへの挑戦を決意。ブラインド競技を含め、いくつか体験したうえで、野球で鍛えた肩の強さを活かせるやり投げを始めた。

初大会となった昨年7月のジャパンパラ競技大会の記録は42m55で、3選手中3番。そこから約1年で国内トップクラスのスロワーへと成長した。普段は高校時代に競技経験がある後輩などに指導してもらい、「肩の力だけでは記録は出ない」と、とくに下半身の強化に取り組み、自分の投てきを追求している最中だ。

今大会3位に入った政成晴輝(大阪パラ陸協)も元球児で、切磋琢磨する仲。また、先天性右手欠損でクラスは違うが同じく野球からやり投げに転向し、いまや世界を主戦場に戦う山崎晃裕(順天堂大)の活躍にも刺激を受ける。

今季は11月の世界選手権の出場を目指し、7月のジャパンパラ競技大会までにJPA派遣指定記録(57m02)の突破を目指す。その先に東京2020パラリンピック出場を見据える若生は、こう話す。

「家族や野球部時代の仲間たちがすごく応援してくれています。パラスポーツでも『アイツ頑張ってるな』と思ってもらうためにも、結果を出している姿を見せたいですね」

(MA SPORTS)