パラアイスホッケー 伊藤樹選手
氷上の若き戦士、15歳の挑戦「世界一の選手に、僕はなる!」
クラブ選手権の3位決定戦ではゴールを量産し、チームの勝利に貢献した伊藤
パラアイスホッケーの「2020年国内クラブ選手権大会」で存在感を示した選手のひとりが、ロスパーダ関西の伊藤樹(FW)だ。初戦の東京アイスバーンズ戦では、ターンオーバーからスピードを活かしてゴール前に攻め込み、鮮やかな先制点を決めた。3位決定戦では、東海アイスアークスを相手に8ゴール1アシストと、大車輪の活躍を見せた。
日本パラアイスホッケー協会の今季の強化指定選手にも選ばれている中学3年生。年の離れた仲間たちと汗を流すが、「氷の上では年齢は関係ない。自分が一番うまいという気持ちでやっている」と、熱い心を持つ。
幼稚園からアイスホッケーを始め、大阪の臨海ジュニアアイスホッケークラブに所属。小学3年の時に練習に向かう途中に交通事故に遭い、車いす生活になった。翌年からパラアイスホッケーを始め、クラブの練習時にリンクの片隅を借りて、同クラブOBで元パラアイスホッケー日本代表アシスタントコーチの青木栄広さんと二人三脚でスレッジでのスケーティングを磨いた。「大阪に競技を始めた小学生がいる」と聞いた強豪・長野サンダーバーズの選手たちが、特別に大阪で練習を実施し、まだスレッジを乗りこなせない伊藤を優しくも厳しく、指導したこともある。
負けず嫌いで、朗らか。昔も今も、自然とにぎやかな輪の中心にいる。ロスパーダ関西には2018年の結成当初から参加し、ムードメーカーとして、またパックへの執着心とゴールに向かう姿勢で、チームメートに刺激を与えている。
憧れの選手は、16歳でソチパラリンピックに出場し、平昌大会では同点ゴールと決勝ゴールを決めてアメリカを金メダルに導いたデクラン・ファーマー。“世界最速のスピードスター”と称される若き英雄だ。伊藤が2022年の北京パラリンピック日本代表に選ばれれば、ファーマーと同じ16歳での出場となる。
「僕も彼みたいなドリブラーになりたい。誰も寄せつけないくらい、めっちゃ強い、世界一の選手に僕はなります」
世界の頂点を夢見て羽ばたく15歳の挑戦を、これからも応援したい。
(MA SPORTS)