一般社団法人日本デフ水泳協会理事長/JPC運営委員 豊田律さん
デフリンピック東京開催に向け、「大会の関心を高めていきたい」
デフリンピックへの想いを語る豊田さん
デフ水泳の指導者として、聞こえない選手の強化と競技発展に尽力する豊田律さん。21歳でデフ水泳の選手を引退後、指導者に転身して以降、多くのトップスイマーを育ててきた。4年に一度開催される夏季デフリンピックでは、1997年のコペンハーゲン大会(デンマーク)から前回のカシアスドスル大会(ブラジル)まで競泳日本代表の監督を務めた。
カシアスドスル大会は、新型コロナ感染拡大の影響で日本代表選手団は途中辞退をしたものの、競泳日本代表は金メダル7個を含む、計11個のメダルを獲得。選手団全体のメダル獲得数も2017年のサムスン大会(トルコ)を上回る過去最高の30個と、強豪国として結果を残した。また、デフリンピックは各国の聴覚障害の選手を取り巻く環境や、活動支援の在り方など情報を交換する貴重な機会になっており、海外勢との積極的な交流も日本チームにとって重要なミッションのひとつだという。
2025年11月15日から12日間にわたり、第25回夏季デフリンピックが東京で開催される。1924年の第1回大会以降、日本で開かれるのは初。JPC運営委員でもある豊田さんは、「全日本ろうあ連盟と各競技団体が連携を深め、しっかり準備することが大会成功のカギになる」と話す。
2021年に日本財団パラスポーツサポートセンターが行った調査結果では、国内におけるデフリンピックの認知度は16.3%。スペシャルオリンピックスは18.6%、パラリンピックは97.9%と差があるのが現状で、選手の経済的負担が大きかったり、職場での休暇が取りにくいといった課題もある。「まずは、機運醸成に向けた取り組みが大事。これまで以上にメディアやSNSを活用したデフリンピックに関する情報発信やイベントの開催に力を入れるほか、地域団体等と連携した学校での教育活動等を通して、広く知ってもらう努力をしたい」と、豊田さんは語る。
過去にデフリンピックを開催した国の多くは、国の継続的な支援もあって聴覚障害者への理解が深まり、大会後も競技力を維持しているという。アジアでもっともデフスポーツが発展しているのは、2009年に台北大会を開いた台湾だそうだ。豊田さんは、「日本も来年の東京大会の開催によってデフリンピックの認知度向上、そしてさらに共生社会が進むことを期待しています」と、言葉に力を込める。
(MA SPORTS)