2015IPCアイススレッジホッケー世界選手権Aプール
最下位の8位に沈んだ日本はBプールに降格、ピョンチャンへ厳しい道のり
大一番を前に円陣を組み、気合いを入れる日本代表
5戦全敗で通算3得点のみ、
世界との大きすぎる“差”
2得点をマークした成長株の熊谷昌治(FW)
アイススレッジホッケー世界選手権が4月26日から5月3日までの日程で、アメリカニューヨーク州バッファローで開催された。世界のトップ8か国(カナダ、アメリカ、ロシア、チェコ、ノルウェー、イタリア、ドイツ、日本)が参加。日本は、5戦全敗で最下位の8位に終わった。優勝は地元アメリカ、2位カナダ、3位ロシア。
日本は2つのグループに分かれて戦った予選でカナダ、チェコ、ノルウェーと同じAグループ。初戦のカナダ戦では、試合開始からわずか20秒で失点すると、世界トップクラスの圧倒的なスピードに終始翻弄され、立て直す間もなく0-17の大差で敗れた。カナダは前回大会優勝の格上の相手とはいえ、日本は一試合45分を通して一度もチャンスを作れないまま終わってしまった。
その後、2戦目のチェコ戦を1-2で、3戦目のノルウェー戦を0-5で落とした日本。予選を全敗で終え、もうひとつの予選グループ3位のイタリアとのプレーオフに臨んだ。
この試合に勝てばAプール残留、負ければBプール降格という大一番。何としても先制点が欲しい日本だったが、立ちあがりから波に乗れず、徐々にペースはイタリアに。3点ビハインドの日本は第2ピリオドに熊谷昌治(FW)が1 点を返すが、その後は決定打が出ず、1-5で敗れた。
日本は2012年世界選手権(ノルウェー)で7位に終わり、Bプールに降格。翌年のBプール世界選手権で2位に入って1年でAプール返り咲きを決め、今大会に臨んでいた。だが、このイタリア戦で敗れたことで7位以下が確定。同時にBプール降格が、再び決まった。
須藤悟(DF)は主将としてチームを引っ張った
失意の日本が臨む今大会の最終戦は7-8位決定戦。対戦相手は、予選で惜敗したチェコだ。キャプテンの須藤悟(DF)が「来季以降、再びBプールから上がるにしても、今大会を7位で終わるか8位で終わるか、このひとつの差は大きい。すべてのミスを減らして勝つ」と話していたように、“1勝”をめざして試合に臨んだ。しかし、その意気込みとは裏腹に、残酷な結果が待っていた。
チェコに先制点を奪われると、防戦一方になり、立て続けに失点。これまでの試合と同様に、ディフェンスラインを簡単に崩されてゴール前への攻撃を許すという展開だ。日本は最終ピリオドに、パワープレーの場面でここまでチームを引っ張ってきた高橋和廣(FW)が意地の一発を決めたが、得点はこの1点のみ。1-5で敗れた日本は、最後まで組織的に攻められないまま、大会を去ることになった。
人材確保と育成、実戦での強化が
ピョンチャンへの課題
日本は2013年10月のソチパラリンピック最終予選以降、シーズンを通して海外遠征を実施していない。その理由のひとつが、IPC(国際パラリンピック委員会)が新たに取り組むワールドシリーズの存在だ。各国持ち回りで開催するポイント制のトーナメントで、格上の国に勝利すればより高いポイントが付与される。これに日本は一度も参戦できなかったのだ。ヨーロッパ勢や北米のチームにとっては、移動時間も費用もかかり、勝ってもさほどポイント有利にならない日本と対戦するより、近くの強豪と技術を磨き合うほうがメリットがあるからだ。
2010年バンクーバーパラリンピックで銀メダルを獲得した日本だが、世界との差は広まるばかりだ。今大会を振り返ると、決勝を戦ったアメリカとカナダのホッケーは、スキルも戦略もソチ以降さらに進化しており、それ以外の国もチームとしてきっちりと機能するまで仕上げてきた印象だ。残念ながら、日本だけがそのレベルに達していないことが証明された格好だ。今大会の日本代表平均年齢は38歳。人材育成を含めた早急な競技環境の改善が求められる。
「史上最悪なAグループの戦いをしてしまった」と反省を口にした中北浩仁監督。「最大の敗因は、1年半あいた試合勘を埋めて臨めなかったこと。新たな日本のシステムを作り出せる体勢を整えていかなければならない。海外遠征も自国開催の大会もきちんとやって試合勘を増やし、這い上がっていくしかない」とコメントした。
日本が2018年ピョンチャンパラリンピックに出場するには、まず次回(2016-17年)のBプールの世界選手権で上位に入ることが最低条件となり、次に最終予選を戦うことになる。今大会で得たものは、あえて言うなら「世界との差」が明確になったことだ。チームとして全員がその現実を正面から受け止め、基本に立ち返り、悔しさを力に変えることができるか。日本代表の再挑戦が始まる。
(MA SPORTS)