第31回飯塚国際車いすテニス大会(JAPAN OPEN)
国枝慎吾が8度目V、上地結衣が三連覇達成!
大会を支えたボールボーイらと集合写真におさまる上地、国枝、レイドの三選手
世界のトップ選手が今年も飯塚に集結
5月12日から17日までの日程で、福岡県飯塚市で「第31回飯塚国際車いすテニス大会(JAPAN OPEN)」が開催された。国際テニス連盟(ITF)で全仏オープンなどグランドスラムに次ぐスーパーシリーズに格付けされている大会で、世界のトップランカーから若手選手まで多くの選手が参加した。
注目のシングルスは、男子は世界ランキング1位の国枝慎吾(ユニクロ)、女子は上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)、クァード(四肢まひ)はディラン・アルコット(オーストラリア)が優勝した。
「若手も伸びているが、自分が一番成長している」と31歳の国枝は語る
国枝が見せた圧巻のプレーと存在感
男子は国枝の他、ステファン・ウデ(フランス)をはじめ、ゴードン・レイド(イギリス)やマイケル・シェファーズ(オランダ)、眞田卓(埼玉トヨペット)ら世界ランキングトップ10に入る選手がずらりと名を連ねた。
シングルスは、第1シードの国枝が準々決勝で眞田を、準決勝でシェファーズを破って決勝に進出。決勝の対戦相手は、準決勝でロンドンパラリンピック銀メダリストのウデにストレートで勝利したレイド。2014年のシドニー国際など過去に2度、国枝に勝利している23歳で、国枝も以前から「彼は強くなる」と注目している若手成長株のひとりだ。
第1セットは国枝が6-2で先取。一方、フォア、バックとも強打が持ち味のレイドは、第2セットで国枝のサービスゲームをいきなりブレークし、第4、5ゲームもコースを突く精度の高いショットで3-2とリードする見せ場を作った。
だが、“王者”国枝は冷静だった。「世界一」と称されるチェアワークでボールに最後まで食らいつき、相手のスマッシュミスを誘った。さらに、1段、2段とギアを上げたかのような高い集中力でコートを支配した国枝に対し、レイドはボールを返すのがやっと。最後は国枝が4ゲームを連取して試合を決めた。
「相手にリードを許した時はひやひやしたけれど、そこは幾多の難しい試合を経験し、くぐりぬけてきた経験があるので」と、サラリと試合を振り返った国枝。6月の全仏オープン二連覇への手ごたえも感じた様子だった。
また国枝は、このレイドとペアを組んだダブルスでも、シェファーズ(オランダ)・ジェレミアス(フランス)組を6-1、6-1で下して優勝した。
2年連続ダブルス年間グランドスラム達成を狙う上地とホワイリー
挫折乗り越え自分のプレーを追求
女子は上地のプレーに満員の観客の視線が集まった。シングルス決勝では、同3位のアニク・ファンクート(オランダ)と対戦。第1セットはファンクートのベースライン際の深いショットなどに対応できず1-6で落としたが、第2セットは落ち着きを取り戻して6-1で奪い返す。さらに、相手が度重なるダブルフォルトで自らリズムを崩したところを見逃さず、スライスやボレーを織り交ぜた丁寧なテニスで追い込み、セットカウント2-1で勝利した。
昨年、プロ2年目で世界ランキング1位になった上地。全仏オープンでは初めてグランドスラムのシングルスで優勝を経験した。だが、10月のアジアパラではタイの選手に敗れて3位、最終戦の世界マスターズでは4位と失速。今年の全豪オープンも、決勝に進出するもタイトルを逃すなど、「頭で考えていたことが表現できずに落ち込む、という負のスパイラルに陥っていた」(千川理光コーチ)。全豪の後にコーチと話し合い、リオに照準を合わすことを再確認した上地は、自分のプレーに納得できる試合を増やしていくという目標を明確にし、再スタートを切った。
現在はバックハンドによるスピンの強化に取り組み、質の高いテニスを追求しているところで、「新しいことに挑戦しているので吹っ切れました。1位になった去年より、今のほうがプレッシャーはないですね」と笑顔を見せた。
また昨年、年間グランドスラムを達成したダブルスは好調をキープ。今大会も“相方”ジョーダン・ホワイリー(イギリス)とペアを組み、優勝を果たした。21歳の上地と22歳のホワイリーはシングルスではライバルであり、普段は仲の良い友人でもある。「互いに尊敬しあう仲。私が良いプレーができなくてイライラしている時、ユイが補ってくれる」とホワイリー。また、上地も「どうやって良い方向にもっていくかを二人で探して実行できる感覚があるので、負けていてもすごく楽しいです」。
全仏オープンでもペアを組む予定の両選手。全豪に続くグランドスラム優勝に期待がかかる。
(MA SPORTS)