パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2015年8月28日

平成27年 日本パラリンピック委員会選手発掘事業
「めざせパラリンピック! 可能性にチャレンジ2015」

2020年東京パラリンピックへ向けた選手発掘イベントが終了

パラリピアンのアドバイスを受けながらビームライフルで的を狙う

今年度ははじめて大阪で開催
中学生以上の43人が競技体験

パラリンピック選手らトップアスリートにレクチャーを受けながら障がい者スポーツを体験できる「めざせパラリンピック! 可能性にチャレンジ2015」が8月26日、大阪市の長居障がい者スポーツセンターとヤンマーフィールド長居で行われた。この催しは、将来のパラリンピック日本代表選手を発掘することを目的とした日本パラリンピック委員会(JPC)選手発掘事業のひとつで、事前に申し込んだ43人が参加した。9日に行われた東京会場とあわせると100人を越える申し込みがあり、2020年東京パラリンピックへの関心の高さを感じるイベントになった。

歴代パラリピアンが
デモンストレーションと直接指導

大阪会場には、来年のリオパラリンピックから正式競技となるパラトライアスロンとパラカヌーを含め、ボッチャやシッティングバレーボール、ウィルチェアーラグビーなど17競技団体が参加。アスリートに欠かせないアンチドーピングの知識を学ぶコーナーも設置された。参加対象は中学生以上の肢体不自由、視覚障がいおよび知的障がい児・者で、訪れた人たちは、各競技団体のブースに足を運び、選手や関係者からのアドバイスに熱心に耳を傾けていた。

車椅子バスケットボールのミニゲーム体験

車椅子バスケットボールは、女子日本代表の網本麻里や元男子代表キャプテン根木慎志さんらが参加者を迎え入れた。はじめはルールやボールの扱い方を緊張した面持ちで聞いていた参加者たちは、ミニゲームを体験すると次第に笑顔に。最後はハイタッチで締めくくり、充実した表情を見せていた。

会議室では、射撃のビームライフル体験がにぎわっていた。アテネ・北京・ロンドンとパラリンピック3大会に出場した田口亜希が、銃の構え方や集中力の大切さを直接レクチャー。福井県から母親と一緒に参加した高校2年の中村元哉君は、「少し動きがぶれただけで失敗してしまった」と、射撃ならではの奥の深さに触れた様子。中村君は水泳の大会にも出場しているといい、「この後はプールも見に行く予定です」と笑顔で話してくれた。複数の競技を体験できるのも、このイベントの魅力だろう。

和歌山盲学校高等部3年の田辺隼杜(はやと)君は、陸上部に所属するスポーツ少年。この日は、「楽しみにしていた」という視覚障がい競技を体験。ゴールボールに続いて、柔道にも初めて挑戦し、額に汗を滲ませていた。田辺君は「これまで晴眼者で、今は弱視になったけれど、パラリンピックをめざすというチャンスをもらった。東京パラに出たい」と力強く語ってくれた。柔道で田辺君を指導したロンドンパラリンピック代表の北薗新光は、「一度に複数の競技に触れるこういうイベントは障がい者スポーツを知るうえでとても大切。自分のときもあったらよかったなと思います。若い人たちの可能性は無限なので、初めからひとつのことに絞らず、いろいろな競技の景色を見てもらえたら」と話し、エールを送った。

マラソンの中山竹道さんが参加者にアドバイスする場面も

オリンピアンも駆けつけ
参加者と一緒に汗を流す

パラリピアンに加えてオリンピアンも協力。盲人マラソンでは、中山竹道(ソウル・バルセロナオリンピック代表)さんと谷口浩美さん(バルセロナ・アトランタオリンピック代表)ら日本マラソン界のレジェンドたちも応援に駆けつけた。中山さんと一緒にトラックを走った、知的障がいの中学3年生の北川健太君は、中山さんから「足を高く上げ、腕も低く大きく振るように」とフォームについてアドバイスを受けたという。「将来は陸上で東京パラリンピックに出場することが夢」と目を輝かせていた。

ランナーの発掘や育成についてロンドンパラリンピック5000m銅メダリストの和田伸也は、「一般の市民ランナーが増えたように、盲人ランナーの裾野も広がっているけれど、競技として始める人はまだまだ少ない。とくに若い世代の人をいかに取り込むかが今後の課題」と語った。

このイベントは昨年に続いての開催。JPCの大槻洋也強化委員長は、「今年も会場に足を運んでくれた参加者、また身体能力が高く、2020年の即戦力にもなり得る人も何人かいました。新しい選手の確保と育成、競技の裾野を広げるためにも、来年以降も続けていきたい」と話す。なお、同じ選手発掘事業の一環として、11月3日には東京で障がい者スポーツの現役選手を対象とした競技間のトライアウトが開催される予定だ。

東京パラリンピックまで5年を切った。日本における障がい者スポーツの底上げと発展に注目が集まる。

(MA SPORTS)