パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2015年9月11日

IBSA ブラインドサッカーアジア選手権2015

重かった1点───。パラリンピック初出場を目指した日本は4位で大会を終える

中国戦の失点シーン。緻密な組織プレーで堅守を築いたものの、1点に泣いた

自慢の守備が切り裂かれた。後半7分、日本は中国のコーナーキックから失点。0-1で落とした初戦の敗戦が響き、2位に勝ち点「1」の差でリオへの切符を逃した。

国立代々木競技場フットサルコートの特設会場で、6日間に渡って開催された「IBSA ブラインドサッカーアジア選手権2015」が7日、幕を閉じた。中国、イラン、韓国、インド、マレーシア、そして日本の6ヵ国が出場。大会は5日間に渡る総当たりの予選リーグ戦の後、最終日に勝ち点の上位2ヵ国による決勝、順位決定戦が行われた。リオパラリンピックのアジア地区予選を兼ねており、リオ行きの条件となる上位2ヵ国には、イランと中国が入った。

韓国戦で初ゴール! 日本の得点源に成長した川村

予選リーグで、日本は世界ランキングの高い順に対戦していく。初戦で中国に0-1で敗れ、第2戦で宿敵イランにスコアレスドロー。続く韓国戦に2-0で勝利して望みをつなぎ、インドに5-0と快勝した。だが、予選最後のマレーシア戦を迎える前に、イランが韓国に勝利。中国が勝ち点13、イランが11になり、日本の3位以下が確定した。日本はマレーシアを2-0で下し、勝ち点10。

4年前、仙台で開催されたアジア選手権でイランに敗れ、ロンドンへの切符を逃した。今回もイランにリオへの切符をさらわれ、悲願のパラリンピック初出場は叶わなかった。

日本は最終日、3位決定戦で再び韓国と対戦。前後半0-0のままPK戦に持ち込まれると、1-2で敗れ、4位で大会を終えた。

また、決勝は0-0で延長に突入したが、互いに無得点。PK戦を制したイランが、中国を抑えて初優勝を飾った。

日本のダイヤモンドを切り裂く
強豪中国が仕掛けた日本対策

大一番の中国戦で日本は、魚住稿監督が「世界一美しい」と誇る“ダイヤモンド”を機能させ、前半を0-0でしのいだ。ダイヤモンドとは、フィールドプレーヤー4人がひし形の陣形をとり、4人全員が連動して守備ブロックを固める戦術だ。日本の堅守は、ドリブルで攻め込む中国からゴールを守った。

しかし、中国は後半、4人全員が前線に上がったり、コーナーキックの度に日本の壁を2人がかりで押え込んで味方の進路を作ったりと、攻撃的に仕掛けてきた。

そして、そのコーナーキックで、日本のダイヤモンドの中にはさみこまれるように位置どった中国選手が、川村怜をブロック。目の見えない選手にとって、敵と味方を見分けるのは難しい。右方向にドリブルをする中国のワン・ヤーフォンを追おうとした守備のスライドが一瞬遅れた。ワンのシュートが決まり、0-1。これが冒頭で述べた日本唯一の失点だった。

強豪・中国が、日本の対策をしてきたのだ。失点の場面を振り返り、黒田智成は「対応はできていたが、少しの甘さを突かれた」と悔しがった。

課題の得点力アップを図るも
アジアの壁は高かった

リオを目指した日本代表は、サポーターに感謝を伝えた

「こんなにもパラリンピックという道は険しいのか」。ロンドン予選後にチームに加入し、今大会7得点と台頭した最年少の川村は、報道陣からの問いかけに「中国やイランからゴールを奪える選手になりたい」と声を振り絞って答えた。日本は、とにかく守備を固めて結果を示した世界選手権以降、積極的に点を取る波状攻撃などを取り入れ、得点力アップに努めたが、リオ行きにはつながらなかった。

主力が30代半ばのチームは、4年前にピークを過ぎたと思われた。だが、確固たるコンセプトのもと世界選手権で6位になるまでのチームに生まれ変わり、今大会でも流れの中から7点を奪い、失点もわずか1と成長した姿を見せた。それでも勝ち抜けないほどアジアの壁は高く、魚住監督は「ひたむきにやってくれた選手たちを誇りに思う」と述べるしかなかった。

イランのような体格のいい相手にも絶対に屈しない。そんな思いから対外試合を重ねてきた。代表チームの試合数も年間3〜4試合から26試合程度に増やし、自信を持って臨んだリオ予選だった。

就労形態を変えて決戦に備えたキャプテンの落合啓士は、5年後に向け、環境面の充実を訴えた。「サッカー文化が根付けば、日本にはまだない専用コートも常設され、サポーターも増えるはずだ。地域から盛り上げていきたい」

初戦は有料チケット1292枚が完売し、連日雨の中スタンドに駆けつけたサポーターによる応援は“ブラサカ人気”を象徴するものだ。リオ行きは逃したが、2020年には東京がやってくる。夢の舞台へ挑戦を続ける選手たちに向けて、声を枯らすことなく、声援を送り続けてほしい。

(MA SPORTS)