パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2015年10月21日

三菱電機2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉

男子がリオパラリンピックの出場権を獲得!

車椅子バスケットボールのリオパラリンピック予選を兼ねた「三菱電機2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」が10月10日~17日の日程で、千葉ポートアリーナで開催された。12の国・地域が参加した男子は上位3チームに出場権が与えられ、日本は3位に入って11大会連続12度目のパラリンピック出場を決めた。

3位決定戦で韓国に勝利し、リオ行きを決めて喜びを爆発させる日本チーム

“全員プレー”で体力温存
勝利のカギは後半の爆発力

キャプテン藤本怜央は攻守にわたってチームをけん引した

男子はまず、2つのプールに分かれて総当たりの予選を行い、各リーグの上位4チームが決勝トーナメントに進んだ。

元日本代表選手の及川晋平ヘッドコーチが率いる日本は、抜群の得点力を誇るキャプテン藤本怜央と香西宏昭をWエースとし、どのメンバーのユニットも戦力が落ちないチームづくりをしてきた。それを実証するように、大会初戦のタイ戦では12人全員が出場して快勝。そして、選手たちが「予選最大の山場」と口をそろえる韓国戦を迎える。韓国は昨年のインチョンアジアパラ競技大会の決勝で敗れた因縁の相手だ。一方の韓国も、4年前のロンドンパラリンピックの最終予選で日本に敗れて出場を逃した苦い経験があるだけに、打倒・日本に燃えていたはずだ。

試合は韓国優勢のまま、日本の2点ビハインドで最終ピリオドへ。だが、日本にとって“後半勝負”は想定内の試合展開。ほぼフル出場の主力メンバーの体力が落ち始めた韓国に対し、主力を休ませるユニットを使うことで体力を温存していた日本が一気にたたみかける。藤本が2本のフリースローを決めて同点に追いつくと、香西のスリーポイントで流れを一気に引き寄せた。チーム最年少16歳の鳥海連志も、相手の必死のディフェンスをクイッキーなプレーでかきまわして勝利に貢献。55-48でチームを勢いづける大きな一勝を挙げた。

翌日のアフガニスタン戦にも勝利し、決勝トーナメント進出を決めた日本。ところが、大きな落とし穴が待っていた。予選4戦目となる中国戦で、日本は最大7点差のリードを活かせず、61-64で痛恨の逆転負けを喫してしまう。この敗戦により、日本は韓国の勝ち点を下回り、予選プールBを2位で通過。準決勝では、優勝候補筆頭のオーストラリアと対戦することに。この試合に勝って、リオ行きを決めたい日本だったが、世界王者であるオーストラリアの高さとスピード、そして素早い修正力に対応できず、41-70で完敗。3位決定戦にまわった。

最後の1枚の切符をかけて、再び韓国と激突した日本。予選と同様、序盤は韓国がリードするが、第2ピリオドで逆転に成功した日本は積極的にゴールを狙い、確実に得点を伸ばす。その後は、攻守の歯車ががっちりと噛みあい、最後まで主導権を握りながら80-56で勝利。地元の大声援を力に変え、プレッシャーと戦い続けた選手らは、「ホッとした」と涙を流して喜んだ。

「やってきたことは間違ってなかった」と、及川ヘッドコーチ。これまでの強化に手ごたえを感じる一方で、「世界のトップで戦うには、采配というか、もう少し戦略のカードを持たなければいけないと強く感じた」とも語り、強豪ぞろいのパラリンピックで上位に食い込むために、さらなるチーム力の向上を誓った。

わずか「1枠」を巡る熾烈な争い
女子は2大会ぶりの出場を逃す

オーストラリア、中国、日本が参加した女子は、わずか「1」という狭き門を争った。総当たり2巡の予選で0勝4敗となった最下位の日本は、準決勝で予選2位のオーストラリアと対戦し、49-69で敗れた。北京大会以来、2大会ぶりのパラリンピック出場をめざした日本だったが、決勝進出を逃した時点で、その道は閉ざされた。

リオ出場を逃し、エース網本麻里は「世界の壁を感じた」と語った

今大会を前に、経験豊富で実績のある大島美香、藤井郁美が代表に復帰。情報戦を含めて、ライバルたちにリオ出場への強い想いを見せつけた。橘香織ヘッドコーチは、12人全員が多彩なバリエーションを生み出し、最後まで勢いが落ちないパフォーマンスができるチームに成長させてきた。だが、中国やオーストラリアの厳しいチェアコンタクトに動きを封じられた。課題の後半にリードを広げられる苦しい展開が続き、また試合のなかで修正しきれなかったことが結果に響いた。

「私たちの成長を超える形で、オーストラリアと中国は成長していた。互いのスピードと強いコンタクトのなかでプレーを成功させる精度の高さに差を感じた」と橘ヘッドコーチは大会を振り返る。また、チームをけん引したエース・網本麻里も「今までやってきたことを40分間やり続けようという想いはあったけれど、やっぱり力の差があった。クロスの精度、チェアコントロールの精度といった細かい部分の相手との違いが結果につながってしまった」と語り、肩を落とした。

今大会の結果により、男子はオーストラリア、イラン、日本、女子は中国がリオへの出場権を手にした。

(MA SPORTS)