パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2016年2月4日

第1回日本IDハーフマラソン選手権大会

初開催となったIDハーフマラソンで選手たちが躍動!

世界の舞台でも戦う金子遼が総合2位の活躍

人気ハーフマラソンと初共催!
日本記録保持者の金子が圧巻の走り

31日、明治神宮外苑をスタートとし、明治神宮野球場をフィニッシュとする第1回日本IDハーフマラソン選手権大会(ハーフマラソン/10km)が行われ、49人の知的障がいランナーが快走した。

第14回を迎える新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソンと初めて同時に行われた今大会は、新宿シティハーフマラソン大会実行委員長の宇佐美彰朗氏(メキシコ、ミュンヘン、モントリオール五輪マラソン日本代表)と、2020年東京パラリンピックに向けてトップ選手の出場できる大会を増やしたい日本知的障害者陸上競技連盟のつながりで共催が実現。大会前より、浅野武男事務局は「一般ランナーに知的障がい(以下ID)スポーツを知ってもらう貴重な場。IDクラスのレベルの高さを知ってもらえたら」と期待を寄せていた。

そして、当日。心配された天気も晴れ、9時半にハーフマラソンの号砲が鳴った。参加者4,300人のうち、ID選手は19人。市民ランナーたちに混ざって力走を見せ、その存在感を大いに発揮した。

なかでも、ひときわ目立ったのが、185cmの長身を活かし、大きなストライドで走る金子遼(埼玉・滑川走友会)だ。序盤から先頭集団につけると、苦しそうな表情をしながらも、3~4人の集団の中で粘りの走りを披露。20km付近で箱根駅伝出場経験のある平塚潤さんに刺されたものの、全体で2番目にゴール。記録は1時間09分47で、総合2位(IDで1位)という輝かしい成績を残した。

リオを目指す阿利美咲の力走

「先頭集団にいたので、『よし、行こう、ここまで来たら1位になりたい』と思って走りました。だから、抜かれてしまい、悔しいです」と唇を噛んだ金子。2015年5月にINAS世界ハーフマラソン選手権でも銅メダルを獲得した実力の持ち主であり、普段から健常者とともにハードなトレーニングを積んでいる。「悔しかった分、(出場予定の)東京マラソンで頑張ります。目標は2時間23分です」と、すでに気持ちは次のレースへ。「世界選手権で1位だった選手に二度と負けないよう、気合いを入れて頑張る。もっと上を目指します」と言葉を強めた。

難コースをものともせず
一般ランナーに混ざって力走

今回のコースは、国立競技場改修などの影響で、入り組んだ周回コースで行われた。彼らにとって難しいコースだったといえるが、「聞いていた通り、曲がり角が多かった。でも、集団にいたのでよかったです」と金子は冷静に振り返った。IDで2位(総合6位)の久保田史郎(大阪走友会)も、「しんどかったけど、順位も記録も出てよかったです」とさわやかに話し、関係者らの心配を吹き飛ばした。

女子で唯一出場した池永久美子(大阪・高槻市)は、「坂道がきつかったが、最後は飛ばせた。(初めての大会の優勝メダルは)記念になる」とはにかんだ。

そして、10kmの部でも、男子3選手、女子2選手のID選手が総合8位に入賞する活躍を見せ、一般ランナーを驚かせた。なかでも、リオパラリンピック出場を目指している阿利美咲(徳島・吉野川市陸協)は、女子総合1位に。今後の重要なレースに向けて、コンディションの良さをアピールした。

今大会は、都市型の市民マラソンと同時開催された

同時開催で行われた今大会。ID選手の活躍は、多くの一般ランナーの目に触れた。ハーフマラソンに出場した30代の男性は「金子選手に抜かれたが、障がいがあるとは知らなかった。彼のように迫力ある走りの選手は、障がいのある子どもたちのあこがれの存在になる」と話す。実行委員長の宇佐美氏も「全員が完走という素晴らしい結果。今後、出場選手がさらに増えるといいのでは」と満面の笑顔。初めての共催は、選手たちの活躍により、より意義の大きい大会になったのだ。

4年前のロンドン大会からパラリンピックの実施種目に復活した陸上競技のIDクラス。リオ大会では中距離の1500mは実施されるが、日本選手の得意とする5000mやフルマラソンの長距離は実施されない。だが、今後は日本でも国際大会が行われ、彼らの活躍の舞台が増えていくことを期待したい。

(MA SPORTS)