パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2016年3月9日

平成27年度春季静岡水泳記録会
(リオ・デ・ジャネイロパラリンピック派遣選手選考戦)

男子12人、女子7人の計19人がリオパラリンピック代表に内定

競泳のリオパラリンピック日本代表選考会を兼ねた「春季静岡水泳記録会」が6日、静岡県富士水泳場で開催され、男子4人、女子1人が派遣標準記録を突破し、日本代表候補に決まった。また、大会後の選考委員会でさらに13人が選考され、昨年の世界選手権100mバタフライなど2種目を制し、すでに代表に内定している木村敬一(東京ガス/S11)を含む、男子12人、女子7人の計19人が代表に内定した。

50m自由形で派遣標準記録を上回るタイムを出し、ガッツポーズを作る成田真由美

元世界女王・成田真由美が2大会ぶりの代表へ

「一発勝負」の形式で行われた今大会。冷静に自分の泳ぎを貫いたベテラン勢が、自らの力でリオ行きの切符を手中に収めた。

とくに、その泳ぎに注目が集まったのが、過去にパラリンピックで金メダル15個を含む計20個のメダルを獲得している「水の女王」成田真由美(横浜サクラ/S5)だ。50m背泳ぎでは49秒45を出し、自らが持つ日本記録を更新するも、派遣標準記録にあと0.02秒及ばず。悔しさをにじませながらも「応援を力に泳ごう」と、気持ちを切り替え、2種目目の50m自由形で突破。2大会ぶり、自身5度目となるパラリンピック出場を確実にした。

北京パラリンピック以降は第一線を退いたが、2014年11月に選手復帰を決断した。「復帰した当時はリオのことは考えていなかった」が、コーチ指導のもと練習を強化するなかで、少しずつ「まだいける」という実感を得た。今では北京パラリンピック前以上のトレーニングをこなしているといい、「リオでは、私らしい力強い泳ぎをしたい」。元世界女王が、再び世界の頂点をめざす。

男子は木村、山田、鈴木、中村、小山が派遣標準記録を突破!

エースの自覚を持って競技に向かう山田拓朗。リオでは50m自由形で頂点を狙う

男子は、木村が100m自由形で59秒56の日本新記録を樹立。100mバタフライでアジア新の1分1秒61をマークした。100m平泳ぎでも派遣標準記録を突破し、すでに代表内定を決めているその実力を証明した。

昨年の世界選手権の銀メダリスト・山田拓朗(NTTドコモ/S9)は、50mと100m自由形で派遣標準記録をクリア。得意種目の50m自由形では通常2回呼吸するところを、1回で泳ぎ切った。新たな挑戦に手ごたえを感じつつも、「最後のタッチが合わなかった」と反省の弁。100分の1秒を争うレースでは、わずかなタッチの差が致命的な差になる。調整を重ね、リオでは金メダルを狙うつもりだ。

昨年10月から、ロンドンオリンピック200m平泳ぎ銅メダリストの立石諒が師事する高城直基コーチから指導を受けている山田。立石コーチからは、長期的な練習の組み立て方や前向きな姿勢を学び、「刺激を受けている」。史上最年少の13歳でアテネパラリンピックに出場した山田も、この4月で25歳を迎える。リオでは、競泳陣をけん引するエースとしての活躍が期待される。

50m平泳ぎ(SB3)の世界記録保持者である鈴木孝幸(GOLDWIN)は、この種目で派遣標準記録を3秒以上上回る好タイムをマーク。150m個人メドレーも突破した。普段はイギリスを拠点に練習に励む鈴木。好調を維持し、自身4度目となるパラリンピックに挑む。

唯一エントリーした100m平泳ぎで圧巻の泳ぎを見せ、派遣標準記録をクリアしたのは、中村智太郎(HISAKA/SB7)。この種目のロンドンパラリンピック銀メダリストであり、アジア記録保持者でもある中村。リオを見据え、今年からスプリント系の練習から持久力をつける練習にスイッチした。両腕がない中村の平泳ぎでの推進力をもたらすのは足。一蹴りで長く伸びる中村ならではの泳ぎを、さらに追求していくつもりだ。

小山恭輔(日鉄住金P&E/S6)は、50m自由形では突破ならずも、北京、ロンドンパラリンピックでメダルを獲得している得意の50mバタフライで派遣標準記録を上回り、リオへ前進した。「自由形で内定が取れなかったのは心の弱さがあったから。リオまでにはそれを取り除き、メダルにつながるフィジカルの強化に励みたい」と前を向き、3大会連続の表彰台を誓う。

派遣標準記録を突破し、日本代表候補を決めた選手と峰村史世監督(2列目右端)

今大会の派遣標準記録は世界選手権5位相当の記録をもとに設定された。そこにきっちりと照準を合わせてきた5選手と木村について、日本代表の峰村史世監督は「いいタイムで決めてきたので評価できる」とコメントした。一方で、パラリンピック初出場を狙う10代や20代前半の選手がひとりも突破できないなど、若手選手の伸び悩みが浮彫になったことに対しては、「期待と強化をしてきたので、若手が出てきてほしかった。東京に向けての課題です」と話した。

日本代表推薦選手となった19人は、日本パラリンピック委員会(JPC)の審査を経て正式にパラリンピック代表に決定する。

(MA SPORTS)