BNPパリバワールドチームカップ
車いすテニス世界国別選手権
男子準V、女子とクアードは3位。リオにつながる課題と収穫
車いすテニスの国別対抗の団体戦「BNPパリバワールドチームカップ車いすテニス世界国別選手権」が5月23日から28日まで、有明コロシアム・有明テニスの森公園で行われた。
日本開催は初。男子、女子、クアード、ジュニアの各カテゴリーで頂点を争うもので、29か国から52チーム、約160人の選手がエントリーした。2020年東京パラリンピックの会場になる有明で繰り広げられた世界最高レベルの戦いは、実に見ごたえがあり、最終日には3,700人を超える観客が熱戦を見守った。
4か月ぶりの実戦で単複合わせて6試合に出場した国枝。徐々に調子を上げ、試合勘を養った
実践復帰の国枝が見せた「修正力」
3度目の優勝を狙うワールドグループ1部の日本男子は、予選で強豪のスウェーデン、ベルギーと同じB組に。日本はいずれも第1シングルスに眞田卓(フリー)が出場。2戦ともストレートで快勝し、第2試合の国枝慎吾(ユニクロ)につないだ。
その国枝は、4月上旬に右ひじの手術を行い、今大会が復帰戦になることから、ライバルチームも大いに注目。そんな中、国枝は初戦で世界7位のオルソンに、またベルギー戦で世界ランク2位のジェラードにそれぞれストレート勝ちしたが、序盤は動きが硬く、首をひねりながらのプレーが続いた。
チームにとっても、国枝にとっても大きなステップになったのが、準決勝のイギリス戦だ。第2シングルスの国枝はヒューウェットに第2セットを奪われてフルセットにもつれ込む展開に。だが、“今”の自分を冷静に分析し、重心を前に取って立ち気味だった姿勢を正すなど、国枝は試合の中で本来の攻撃的なテニスに近づける「修正力」を発揮し、18歳の挑戦を退けた。
決勝はフランスと対戦。第1シングルスを落とし、王手をかけられた日本。勝負の行方は、国枝と世界ランク1位のウデのライバル決戦に委ねられた。ウデは今の勢いを見せつけるかのように強力なサーブとストロークで試合をコントロール。国枝も要所でウィナーを繰り出すなど応戦したが及ばず、勝利はならなかった。フランスは2年ぶり7度目の優勝を手にした。
「手探り状態で始まった」約4か月ぶりの実戦も、徐々に調子を上げた国枝。「最初と比べるとずいぶん僕らしいテニスができた。リオまでの3か月間で何とかなるという手ごたえも感じた」と話し、パラリンピックでのリベンジを誓った。
上地はエースとしてチームを引っ張った
女子は宿敵・中国に敗れて悔しい3位
トップランカーをそろえるオランダが圧倒的な強さで17連覇を達成した女子。「打倒オランダ」を掲げた日本は準決勝で中国に敗れ、悔しい3位に終わった。
日本のエース・上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)が、オランダに続く「要注意国」に挙げていたのがタイと中国。タイとは予選同組になり、いきなり初戦で激突した。まず、第1シングルスで堂森佳南子(ケイアイスター不動産)が接戦を制し、第2シングルスは上地とカンタシットのエース対決に。上地がカンタシットに2014年インチョンアジアパラ競技大会で敗れて以来の対戦で、注目が集まったが、危なげなくストレートで勝利。カンタシットに借りを返した。
順調に予選リーグを突破した日本は準決勝で中国と対戦。シングルスを1勝1敗とし、上地と堂森がペアを組むダブルス決戦にもつれ込んだが、終始相手にペースを握られ、2年連続の決勝進出を逃した。その流れを変えようと、3位決定戦のロシア戦では、第1シングルスに19歳の田中愛美(ブリヂストンスポーツアリーナ)を起用。田中は粘りのテニスを見せ、惜しくも世界ランク25位の選手に敗れたが、続く上地が第2シングルスを取り、上地と二條実穂(シグマクシス)がペアを組むダブルスでも勝利。銅メダルを獲得した。
上地は「カンタシットに勝てたことは自信になった。この経験を個人にもつなげていきたい」と大会を振り返った。
粘りと勝負強さを発揮して銅メダルに貢献したクアードの諸石・川野(右)組
諸石・川野組がダブルス制して銅メダルに貢献
前回2位で、悲願の優勝を狙う日本のクアードは、予選でイタリア、そして世界ランク1位のアルコット擁するオーストラリアと前回王者のアメリカと同じ“死の組”に。激闘が続く中、勝てば決勝トーナメント進出という予選最終日のアメリカ戦で日本が意地を見せた。
シングルスで1勝1敗とした日本は、ダブルスで諸石光照(フリー)・川野将太(シーズアスリート)組が世界NO.1のワグナー・テイラー組を相手に1-1となるも勝負強さを発揮。ついにはスーパータイブレークを制し、準決勝進出に貢献した。その準決勝ではイギリスに敗れたが、3位決定戦ではイスラエルに見事大逆転勝利。陽が落ち、照明が灯る中行われた最後のダブルス対決に駆けつけ、大声援を送った多くの観客と喜びを分かち合った。
諸石と川野はロンドンパラリンピックでもペアを組み4位。今大会、アメリカを含む格上のペアに勝利したことはパラリンピックに向けても大きな弾みになった。「この経験を必ず次に活かす」。ふたりの力強い言葉に、リオがより楽しみになった。
(MA SPORTS)