パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2016年12月26日

第2回日本障がい者バドミントン選手権大会

白熱のラリーに歓声、混戦の立位混合男子シングルスは正垣が制す!

2020年東京パラリンピックから正式競技となるパラバドミントン。その日本一を決める「第2回日本障がい者バドミントン選手権大会」が12月18日から2日間にわたり、千葉県の千葉大学体育館で開かれた。試合は車椅子、立位下肢、立位混合、低身長、知的障害の各カテゴリーで行われ、約100名の選手が参加した。

多彩な配球で優勝を飾った正垣源。フィジカルの強化も単複Vにつながった

トライアスロン用の義足でプレーする藤原大輔

正垣が冷静な試合展開で雪辱

主に上肢に障がいがある立位混合(SU5+)の男子シングルス決勝は、前回大会と同じく正垣源と今井大湧のカードとなり注目が集まった。第1ゲームは今井のコースをついたスマッシュがさく裂。13点から連続5得点して突き放し、21-11で取った。だが、正垣に焦りはなかった。第2ゲーム序盤、正垣は今井がミスでリズムを崩した瞬間を逃さず、多彩な配球で主導権を握る。このゲームを奪い返すとその勢いは止まらず、第3ゲームも鋭いドライブの切り返しやネット際の技が冴え、試合を決めた。

声援に手を挙げて応え、コートを後にした時には目に涙を浮かべていた正垣。前回は最後に足がつって満足いくパフォーマンスができず、高校生の今井に初代王者の座を譲ったが、「今回はよりハードな内容だったけれど、最後まで動ききることができた」。今年7月に転職し、競技に専念できる環境を整えた。半年をかけてフィジカルの強化にも取り組んだ成果が表れた格好だ。正垣は城所孝彰と組んだダブルスでも優勝。さらなる飛躍が期待される。

立位下肢(SL3)の男子シングルスは、左足義足の藤原大輔が大会連覇。前回優勝から10か月、「一番でも満足しない」と慢心せず、トレーニングに時間を費やしてきた。11月のアジア選手権では銅メダルを獲得し、コロンビアでの国際大会でも優勝するなど勢いに乗る22歳は、「もっと上を」と話し、気を引き締めていた。

息の合ったプレーを見せた山崎悠麻(左)と小林悦子

立位混合(SU5+)女子シングルスは、鈴木亜弥子が決勝で豊田まみ子をストレートで下して優勝。「嬉しい」と充実した表情を見せた。高校時代は全日本ジュニアなどでも活躍し、パラバドミントン転向後は2010年広州アジアパラ競技大会での優勝を最後に一線を退いていたが、東京パラリンピックを目指して現役復帰。よりハイレベルな競技環境を求めて、今年5月、自ら実業団チームに飛び込んだ。アジア選手権ではシングルスで準優勝。だが、体力不足を痛感した。「来年は体力と筋力づくりに加え、基礎力も極めていきたい」と話し、レベルアップを誓う。

前後の揺さぶりとチェアワークが勝負のカギとなるのが車椅子クラス。男子ダブルス(WH1-2)の決勝では、島田務・大江守組が気迫のこもったプレーを見せ、優勝候補の長島理・山見誠治組を21-15、21-17で破って見事優勝。女子ダブルスは、フルゲームの接戦を山崎悠麻・小林悦子組が制して頂点に。山崎がクリアで立て直し、小林がカットで前に落とすといった息の合ったプレーで観客を魅了した。

2020年へ高まる気運と課題

今大会は試合に先駆け、元オリンピック代表の池田信太郎氏を迎えて選手とのデモンストレーションを行った。また、シングルスの一部の決勝戦はインターネット配信されるなど、大会を盛り上げるさまざまな工夫が見られた。日本障がい者バドミントン連盟の平野一美理事長によると、東京を目指す選手の競技に取り組む意識が向上し、連盟の登録者数も増加傾向にあるという。連盟や選手を支援する企業も増え、「2020年に向け、ようやくいい流れになりはじめた」と話す。

世界の勢力図の中で日本は上位に位置する。しかし、「強豪国と比べると国のサポートなどはこれからで、練習環境の面では世界から遅れている」と指摘するのは、強化担当の喜多努コーチ。「選手がどれだけ覚悟を持って練習しているか。またそれをどれだけバックアップできるか。パラだけでなくバドミントン業界全体の質を上げていく必要がある」と課題を挙げる。

これまでは世界選手権とアジアパラ競技大会が2大大会とされてきた。そこに「パラリンピック」が加わり、選手の大きなモチベーションになっている。待ち望んだ世界最高の舞台まであと4年。そのステージで輝くための取り組みは、これからも続いていく。

(MA SPORTS)