パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2017年3月15日

第28回全国車いす駅伝競走大会

都大路舞台に熱戦、大分Aが10年ぶり9度目V!

早春の都大路をレーサーで駆け抜ける「第28回全国車いす駅伝競走大会」が12日、京都市内で開かれた。国立京都国際会館前をスタートし、西京極陸上競技場をフィニッシュとする5区間21.3㎞のコースで行われ、大分Aが45分56秒のタイムで10年ぶり9回目の優勝を果たした。続いて、昨年はリレーミスで痛恨の失格に終わった福岡が47分04秒で2年ぶりの表彰台。昨年2位の岡山は50分10秒で3位だった。

2位以下に大差をつけ、ガッツポーズでゴールする大分Aの廣道純

総合力の高さを発揮した大分Aがレースを牽引

府県や政令市などで作る18チームが参加した。混戦模様が予想されたが、2区と3区で区間賞を獲った大分Aが3区以降は独走態勢に入り、最後まで後続を寄せ付けない圧巻の走りで優勝を飾った。

充実した表情で集合写真におさまる大分Aのメンバー

各チームのエース級がそろう“花の1区”は、国際会館前から京都大学前まで6.4㎞の最長区間。優勝候補のひとつ、福岡は洞ノ上浩太を起用。洞ノ上は最後方3列目からのスタートにも関わらず、リオパラリンピック車いすマラソン日本代表らしい力強い走りで先頭に立った。その洞ノ上をピタリとマークしたのが、リオ大会5000m4位の長野の樋口政幸。樋口は上り坂で仕掛けて洞ノ上を抜くと、そのままリードを保って2区につないだ。

下りからほぼ平坦な道のりが続く2区で脅威の追い上げを見せたのが、5位発進の大分A。昨年、兵庫から移った吉野誠二が「ここで貯金を作りたいと思っていた」と話した通り、スタートしてすぐに前を行く大阪と岡山を抜き去る。さらに中継所手前で福岡も抜く力走で、一気に2位に浮上した。吉野は見事、区間賞を獲得。さらに、実力者ぞろいの大分Aは3区で北京パラリンンピック車いすマラソン銀メダリストの笹原廣喜がトップを奪うと、後続との差をぐんぐん広げ、独走態勢に。

2㎞ほど坂道を上り、3㎞以上の下り坂が続く過酷な4区でも、大分Aは河室隆一が安定した走りを見せ、トップでアンカーにリレーした。一方、2位の福岡は昨年の大分国際車いすマラソンを制した山本浩之が得意の下りで追いかけるが及ばず。区間賞を獲るも、「河室選手がいい走りをして、4秒しか縮められなかった。自分の仕事ができなかった」と振り返り、唇をかんだ。

大分Aのアンカーはベテランの廣道純。区間賞こそ大阪の西田宗城に譲ったが、トラックに戻ってもスピードを落とさない快走。2位福岡に1分8秒差をつけ、ゴールテープを切った。メンバーとは普段から一緒に練習をしており、「今回優勝を逃したら、もう勝てないんじゃないかというくらい安定したチームだった」と話し、全員の仕上がり具合に納得の表情。表彰式でも笑顔を見せていた。

2位の福岡に続きゴールしたのは岡山。5区の佐藤友祈は、昨年に続いてアンカーを任された。佐藤はリオパラリンピックの400mと1500mの銀メダリスト。最後までタイム差を詰められず悔しさをにじませたが、「昨年は初めて(2位で)表彰台に乗った。今年は順位はひとつ落としたけれど、その勝利がまぐれじゃなかったことを証明できた」とも話し、安どの表情を浮かべていた。

オープン参加となった茨城は76歳の今泉武がアンカーで力走

参加チーム減少も、アスリート同士の貴重な交流の場

第一回大会が行われたのが平成2年。それから四半世紀を超え、今なお駅伝の町・京都に根付く歴史ある大会だ。各都道府県で5人の選手を集め、さらに強化をしていくことは容易ではないが、愛知、京都A、岡山、高知、大分A、京都Bの6チームが第一回大会から連続出場している。一方で今大会は昨年優勝した東京のほか、兵庫や長崎が出場せず、参加数は過去最少となった。だが、全国から集まる選手たちの貴重な交流の場になっていることに変わりはなく、今年も下は14歳、上は76歳まで約100人の選手がエントリー。前途の通り、昨年のリオパラリンピック日本代表ら多くのトップ選手もメンバーに名を連ね、レースを盛り上げた。

今大会はラジオ局の中継に加え、車いす駅伝大会初の試みとして、レースの模様がネット中継された。また、フィニッシュ地点の西京極陸上競技場ではレース前に、レーサーの体験のほか、京都府下にナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設を置く車いすフェンシング(京都市)、パラパワーリフティング(城陽市)の体験会が実施され、パラスポーツの魅力をアピールしていた。

(MA SPORTS)