パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2017年7月26日

第16回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権

裾野広がるブラサカ界。熾烈な頂点争いは「たまハッサーズ」に軍配

ブラインドサッカーのクラブチーム日本一を決める「第16回アクサブレイブカップブラインドサッカー日本選手権」のFINALラウンドが23日、調布市のアミノバイタルフィールドで開催された。決勝戦では、たまハッサーズが1‐0で埼玉T.Wings破り、5年ぶり4度目の優勝を果たした。

たまハッサーズの黒田智成が放った得意の左足シュートが決勝点に!

黒田が大会MVP「さらなる競技力UPを目指す」

決勝にふさわしいハイレベルな一戦だった。史上初の5連覇を目指すAvanzareつくばを準決勝でPK戦の末に下し、初めて決勝に進出した埼玉T.Wingsは、男子日本代表の加藤健人を軸に、急成長を遂げる女子日本代表の菊島宙が得意の縦のドリブル突破からゲームを組み立てた。その勢いを止めたのが、たまハッサーズの黒田智成だ。前半11分、フリーキックから相手を左にかわしてゴール正面にボールを運び、左足で強烈なシュート。ジャストミートしたボールは鋭い軌道でゴールに突き刺さった。

たまハッサーズは終盤に相手の猛追を受けるが、最後まで鉄壁のディフェンスで得点を許さず、予選・決勝あわせて無失点という、堂々の優勝を飾った。大会MVPに選ばれた黒田は、「今日は優勝にこだわった堅実なサッカーをした。(昨年は3位に終わっていたので、その壁を)突き破れてよかった」と笑顔を見せた。

強豪同士の3位決定戦。両者一歩も譲らない白熱した展開が続いた

3位決定戦は、Avanzare つくばがbuen cambio yokohamaを1‐0で下した。昨年の決勝カードで今年も実力は拮抗。Avanzareつくばは森田翼やエースの川村怜が相手DFをかわして積極的にシュートを放っていく。対するbuen cambio yokohamaも、攻守の要・落合啓士がフリーキックからゴールを狙うなど、チャンスメークした。一進一退の攻防が続くなか、均衡を破ったのはAvanzareつくばだった。試合終盤の後半17分、サイドから出されたパスに森田がすかさず反応。相手GKとの1対1に持ち込み、シュートを決めた。執念のゴールは決勝点となり、選手たちは抱き合って喜びあった。

日程拡大、全国に広がるクラブチーム

今大会は、開催日程を3日間に拡大して行われた。初出場の5チームを含む、過去最多の19チームがエントリー。7月1日・2日に開催した予選ラウンドでは、4組に分かれてグループリーグを行った。全国的に競技人口が増えつつある背景として、2020年東京パラリンピック開催に向け競技の認知度が高まったことに加え、こんな理由もあるという。

パラリンピックなどの公式国際試合は、GKは弱視者または晴眼者が務め、フィールドプレーヤー(FP)は全盲から光覚までの選手(B1)のみが出場できるというルールがあるが、日本ブラインドサッカー協会によると、この大会は晴眼者もFPとしてエントリーできる。「ただ、実はそのルールはあまり周知されていなかったのが現状でした。しかし、競技人口が増えて問い合わせにお答えするうち、”それならうちのチームも出場できる”と、登録したチームが増えたとみています」

今回、その初出場の5チームは、いずれもFINAL進出はできなかったが、予選ラウンドではアグレッシブなプレーで会場を盛り上げていた。

あいにくの天気のなか、大勢の観客が会場に足を運び応援した

認知度向上を支える協会の継続的な取り組み

会場では、誰もが観戦しやすいよう、音声ガイドシステムや触地図ガイドブックなどを用意。音声ガイドシステムはもともと視覚障がいの観客のために導入したものだが、誰でも利用でき、実況が聴けることから、「ルールがわかり、観戦がより楽しくなる」と一般の観客からも好評を博している。

今大会、予選ラウンドとFINALラウンドのトータル3日間の入場者数は2138名。今年は800席の有料観覧席を設置、一部無料とした。時折、雨足が強くなるなか、その有料席も観客でほぼ埋まり、熱戦を見守っていた。

ブラインドサッカーの関心の高まりは、協会の競技普及の取り組みの成果のひとつだろう。小・中学校に選手を講師として派遣し、ブラインドサッカーを用いた体験型授業を実施する「スポ育プロジェクト」は順番待ちの状況だといい、また近年は、企業研修の一環で、ブラインドサッカー体験による「見えないコミュニケーション」を学ぶダイバーシティ教育を実践する企業も増えているという。「2020年東京パラリンピックに向けて、コア以外のファンの方にも見に来てほしい。そのためにも、こうした観戦環境をより整えていくことが課題のひとつ」と関係者は語っている。

(MA SPORTS)