パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2017年9月13日

ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017

国内初の国際大会、日本人3選手が初代チャンピオンに

「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017」が9月7日から4日間にわたって、町田市立総合体育館で開催された。日本勢は金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル12個を獲得した。

格上選手に粘りの勝利。「義足でここまでできることを見てもらいたかった」と藤原

世界選手権を超える最大規模で開催

世界バドミントン連盟(BWF)公認の国際大会で、日本での開催は初。パラバドミントンは大きく分けて「車いす」と「立位」があり、障がいの状態により全部で6つのクラスに分かれている。今大会は、それぞれ男女シングルスとダブルス、ミックスダブルスを実施した。

パラバドミントンが2020年東京パラリンピックから正式競技になることもあり、今大会は参加国・参加者数ともに世界選手権を超える規模(29ヵ国/188人)となった。世界の強豪国・インドネシア代表の出場は見送られたが、中国の立位クラスなど、普段はあまり国際大会に姿を見せない選手がエントリーし、予選リーグからハイレベルな試合が展開された。

車いすの山崎、立位の藤原と鈴木が粘りの大逆転勝利!

そんななか、シングルス3種目で日本人選手が頂点に立った。

第3ゲームのインターバルでリラックスした表情を見せる山崎(中央)

女子車いすWH2の山崎悠麻(調布市役所)は、世界ランキング1位のアムノイ・ワットゥタン(タイ)にフルゲームの末、競り勝った。小学2年からバドミントンを始め、全国大会に出たこともある山崎は、高校1年の時に交通事故で両足膝下の機能を失い、車いすに。8年間のブランクを経てコートに戻り、パラバドミントンを始めて4年目になる。チェアワークと座ってシャトルを打つ筋力は「まだこれから強化が必要」だが、かつて培ったラケットワークとラリーの展開を読む力は、世界を席巻するアジア勢に対しても武器になることがわかった。「苦手なフォア奥のショットを磨いて、次も勝ちたい」と自信を深め、11月の世界選手権(韓国)に向けてさらなる成長を誓う。

男子立位SL3(下肢障がい)では、世界3位の藤原大輔(LINE)が同2位のダニエル・ベッスル(イギリス)に17-21、21-19、21-14で勝利した。SL3のシングルスはプレーコートが半面で、クリアとカットの応酬が見どころ。この試合も幾度と長いラリーが続き、会場を沸かせた。藤原は序盤、ベッスルのネットに絡みつくようなヘアピンショットに苦戦したが、持ち前の粘りで拾いまくる。終盤、疲れが見え始めたベッスルに対し、藤原は意表を突くショートサーブやドロップショットなど多彩な攻撃をしかけ、最後は突き放した。藤原は、「試合後、ベッスルから『ヘアピンをロブで拾われたのがきつかった』と言われました。簡単に優勝できる大会ではなかったので、頂点に立てて嬉しいです」と語った。

女子立位SU5(上肢障がい)シングルス決勝では、鈴木亜弥子(七十七銀行)が昨年のアジア選手権決勝で敗れた19歳の楊秋霞(中国)に逆転勝利。通算3度目の対戦での初白星となり、「嬉しいです」と笑顔を見せた。また、男子立位SU5は浦哲雄(グリーンスタンプ)が決勝に進出したが、世界1位のリク・ハウ・チア(マレーシア)にストレートで敗れた。

男子車いすは韓国勢が席巻、日本勢はベスト8が最高

村山は予選で世界5位のタイの選手に勝ち、決勝Tに進出。韓国勢には敗れたものの、今後の飛躍が期待される

日本の男子車いすは、今大会は表彰台に上がることができなかった。彼らの前に立ちはだかったのが、車いすカテゴリーで圧倒的な強さを見せる韓国だ。今大会はWH1、WH2クラスともシングルス、ダブルスで優勝、ミックスダブルスも制している。世界選手権は同国3人までという枠があるが、今回はWH1に関しては韓国から5人出場しており、ある意味、世界選手権よりもレベルが高くなったといえる。日本人選手では、村山浩(SMBCグリーンサービス)と長島理(LIXIL)のベスト8が最高で、いずれも準々決勝で韓国勢に敗れている。

その準々決勝で世界1位のイー・ドン・サップと対戦した村山は、「ショットや間の引き出しが多い。正直、何もできなかった」と振り返る。だが、ラリーの応酬から得点した場面もあり、「それを常に出せるように。彼も私も同じ人間。しかも、彼は私より障がいが重いみたいだし、私ができないと嘘になる。少しずつ強化を積み重ねていければと思います」と語り、前を向いた。

日本の喜多努監督は、「技術もチェアワークも、韓国とは大きな差がある。選手一人ひとりの考え方を根本的に変えていく必要がある」と話した。

また、日本初の国際大会を終えたBWFパラバドミントンオフィサーのシャーミ・サブロン氏は、「素晴らしくオーガナイズされたトーナメントだった。(来年の開催申請がすでにされているが)これを見れば開かないということはない」とコメントし、大会運営を評価した。

(MA SPORTS)