パラアイスホッケー平昌パラリンピック最終予選
日本、崖っぷちからの大復活! 2大会ぶりパラリンピック出場権獲得!
来年3月に韓国で開かれる平昌パラリンピックの出場権をかけた、パラアイスホッケー最終予選が10月9日から14日まで、スウェーデン・エステルスンドで行われた。スウェーデン、ドイツ、チェコ、日本、スロバキアの5ヵ国による総当たりの試合の結果、日本は3勝1敗で2位になり、銀メダルを獲得した2010年のバンクーバー大会以来、2大会ぶりの出場権を獲得した。
表彰式を終え、笑顔で集合写真におさまる日本代表の選手・スタッフら
キャプテン・須藤を中心に守りを固め、宿敵・ドイツの動きを封じた
波に乗った初戦、開始31秒の先制点!
前回ソチ大会の最終予選で敗れて以来、低迷期が続いていた日本。それから復活の兆しを掴んだのは、今大会最大の山場・ドイツ戦での先制点だった。
第1ピリオド開始31秒、日本はフェンス際で高橋和廣と上原大祐(ともに東京アイスバーンズ)がDFの動きをかわしながらパックをつなぎ、ゴール前にパス。これを熊谷昌治(長野サンダーバーズ)がピタリとあわせて得点を挙げた。鮮やかな連携プレーによる先制点で、ライバルの度肝を抜いた。その後、守備の要である三澤英司(北海道ベアーズ)が負傷退場するアクシデントが起こったが、キャプテン・須藤悟(北海道ベアーズ)、9月に代表に復帰した上原らDF陣をはじめ、選手全員が献身的にカバー。第2セットのFWに起用された期待の若手・児玉直(東京アイスバーンズ)がIPC公認大会で初ゴールを決めると、60歳のベテランGK福島忍(長野サンダーバーズ)も再三のファインセーブを見せ、6-2で勝利した。
第2戦のスウェーデン戦は、勝てば出場権獲得がぐっと近づく大一番。第2ピリオドに2点を入れリードするものの、終盤には粘る相手に1点差まで詰め寄られてしまう。これまでなら、焦りからプレーが乱れて同点に追いつかれることが多かった日本だが、今回は強化してきた守備のシステムが機能し、相手の捨て身の6人攻撃の猛攻もしのいだ。
たくさんの日の丸を背に、最後のチェコ戦で指示を出す中北監督
さらに第3戦のスロバキアにも4-2で勝利し、勝ち点は「9」に。最後のチェコ戦は0-1で敗れて2位でのフィニッシュとなったが、自力でパラリンピック出場を決め、須藤は「大会を左右する初戦を取ったことがすべて」と力強く言い切った。「先制点を挙げて勢いに乗れたこと、走り負けなかったこと、また2戦目のように我慢の展開で勝てたのは、チームの成長と言える」と話し、目を細めた。引退や故障で選手が減少し、「競技存続の危機、最悪のチーム状態の時もあった」が、それを耐え抜き、彼らは自らの手で未来を切り開いた。
スウェーデン戦のあと、中北浩仁監督も感極まった様子を見せた。「試合に出してやれなかった選手もいるけれど、彼らが底上げをしたからこそ、主力が頑張れた。我々が2大会連続で出場を逃すことは絶対にあってはいけないし、このスポーツが日本で発展するためにも、今日の一勝は本当に大きかった。よくやってくれた」と、選手の奮起を称えた。
ノルウェーと行った直前合宿がカギに
日本の長年の課題だった「得点力不足」。その大きな壁を乗り越えたきっかけは、どのチームよりも早く現地入りし、ノルウェーの選手と行った合宿だ。ノルウェーは世界選手権4位の強豪で、すでにパラリンピック出場を決めているライバルでもある。だが、日本とは約10年間にわたって友好関係を築いており、背水の陣で最終予選に臨む盟友・日本のために、選手5人を合宿に貸し出してくれたのだ。そして、日本人同士の練習だけでは習得しにくい緊張感を持った試合の入り方や、海外勢のホッケーのシステムを入念に確認できたことが結果につながった。日本は今年に入り、韓国やイタリアにも遠征しており、海外勢と定期的にゲームを組み、試合勘を養う重要性が改めて示された格好だ。
パラまで5カ月、日本代表の課題が明確に
大会を通して、パラリンピックに向けた課題も明確になった。スロバキア戦では勝利したものの、フォーメーションが崩れてFWとDFの間がぽっかりと空くミスがあった。また、チェコ戦では幾度と攻め上がりながら、ゴール前で数的優位の場面を作れなかった点は、早急に修正が必要だ。世界の上位チームとの対戦となれば、体力的にも戦略的にもさらにタフさが求められる。それを考えれば、やはり今大会アイスタイムが短かった第3セットのボトムアップも必須となるだろう。
2大会ぶりの大舞台で見据えるのは、上位進出だ。「平昌までの5カ月間、コンディショニングとフォーメーションを徹底的に上げていく」と中北監督。チームジャパンの真の復活に、すべてを捧げる。
(MA SPORTS)