パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2017年12月18日

第21回日本シッティングバレーボール選手権大会

男子は千葉パイレーツ、女子は東京プラネッツ女組・黒が連覇達成!

「第21回日本シッティングバレーボール選手権大会」が12月9日から2日間にわたり、神戸市立王子スポーツセンターで行われた。全国から男女あわせて24チームが参加。クラブ日本一を決めるにふさわしい熱戦が繰り広げられた。男子の部は千葉パイレーツが2大会連続7度目の優勝、女子の部は東京プラネッツ女組・黒が3連覇を達成した。

初連覇で7度目の優勝を飾った千葉パイレーツ(手前)。高い守備力が光った。

千葉パイレーツ主将の加藤は、攻守でチームを牽引。

男子決勝の東西対決は、手に汗握る大接戦!

男子の部は16チームが参戦。4つのグループに分かれて行うリーグ戦の初戦で、千葉パイレーツはいきなり強豪のサーカスと対戦。サーカスも過去2度の優勝経験があり、互いのプライドを賭けたハイレベルな試合で観客を沸かせた。この試合を制した千葉パイレーツは順当に決勝トーナメントに進出。だが、準決勝では、KOBE JETSに第1セットを奪われ、追い込まれる。それでも、主将の加藤昌彦が中心となって声を掛け合い、粘りを見せて第2セットを取り返すと、「春高バレー」経験者でこの春からチームに加わった田澤隼らの高い守備力から再びゲームを構築し、逆転勝利した。

一方、一昨年のチャンピオンで過去5度の優勝を誇る“西の雄”京都おたべーず太郎も実力を発揮し、混戦を勝ち上がった。決勝は序盤から一進一退の攻防が続き、第1セットは京都おたべーず太郎が先にセットポイントを握る。だが、千葉パイレーツが4枚攻撃などで追いつき、27-25で先制。第2セットも27-26と終盤までもつれる展開になったが、最後は千葉パイレーツのアタックが相手のブロックアウトを誘い、28-26で勝利した。熱戦を見守った他チームの選手や観客からは、両チームの激闘に大きな拍手が送られた。

千葉パイレーツの加藤は、「全日本でも今はセッターが後ろから上がるという攻撃スタイル。それを千葉でもトライして、4枚攻撃というフォーメーションに変えたことが勝因」と試合を振り返る。自身はパラリンピックのシドニー、アテネ両大会に出場後、日本代表から退いていたが、東京パラリンピックに向けて復帰した。「世界の高さにはかなわないが、母国開催で無様な負け方はできない。後世にこのスポーツをつなぐためにも、後輩たちに自分の経験を惜しみなく伝えていきたい」と話していた。

抜群のチームワークで大会を制した東京プラネッツ女組・黒。

東京プラネッツ女組・黒が国内大会全制覇!

女子の部は8チームが参加。7年ぶりの日本一を目指す京都おたべーず花子は、準々決勝でメディカルにフルセットの末に勝利したが、準決勝で“女王”の東京プラネッツ女組・黒にストレートで敗れた。「相手のアタックをマークし、クロスに打たす対策を講じたが、サーブでミスが出るなど詰めの甘さが出てしまった」と、チームの主軸・赤倉幸恵。「この悔しさを忘れず練習して、来年こそは勝ちに行く」とリベンジを誓った。

決勝は、東京プラネッツ女組・黒が埼玉レッドビーズヴィーナスをストレートで下して優勝。今年は東日本選手権大会・全国親善交流大会in白馬も制しており、昨年に続いて2017年の年間タイトルを制覇した。セッターの齊藤洋子、アタッカーの小方心緒吏、菊池智子は全日本でも活躍。どのチームより選手層の厚さが光った。齊藤は、「自分のチームの成長があって、はじめて全日本につなげていける。そういう意味では、勝つためというより、強くなるための練習がこの3連覇につながった」と自信を深め、「この先10年くらいは、どこにも破られないようなチームにしていきたい」と言葉に力を込める。

実は、斎藤は白馬大会のあとに左手薬指を骨折。3カ月間実戦から離れざるを得なかったが、その間に筋トレと柔軟に集中して取り組んだことで、パワースパイクを打つ力がついたという。「自分はバレーが巧い選手ではないので、器用さに特化したほうがいいと思っていたけれど、この変化を通して自分で限界を作っているだけだと気付いた。周囲にきちんと評価してもらえるようになりたい」と話し、前を見つめた。

また、男子MVPには田澤隼(千葉パイレーツ)が、女子MVPには菊池智子(東京プラネッツ女組・黒)が選ばれた。

垣根なく楽しめる“生涯スポーツ”としての魅力

シッティングバレーボールは、床にお尻をつき、座った状態でプレーする。年齢や障がいの有無に関係なく誰もが一緒にプレーできることから、生涯スポーツとして人気がある。日本パラバレーボール協会によると、小・中学校での出前授業や企業・自治体などでの体験会などを積極的に実施しており、体育の授業に採用する学校も増えているという。今大会には健常者のみのチームも参加し、応援団を含めて会場を大いに盛り上げていた。今後はボランティアや指導員の育成にもさらに力を入れていくといい、より一層の競技発展が期待される。

(MA SPORTS)