パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2018年3月28日

IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2018

日本は白星発進も5位に終わる、初代王者はアルゼンチン

初開催となる「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2018」が21日~25日まで東京都品川区の天王洲公園で行われ、世界ランク9位の日本、アルゼンチン(同2位)、トルコ(同6位)、イングランド(同12位)、ロシア(同13位)、フランス(同14位)が出場。1次リーグのグループAで日本はイングランドに勝利するも、次戦でトルコに敗れ、総得点差でグループ最下位に。最終戦ではグループB3位のフランスと対戦し、1-0で勝利。5位で大会を終えた。

5位決定戦のフランス戦、川村怜が積極的にシュートを放つ

好スタートも決定力不足が響き5位

今大会は、国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)公認の国際大会として新設された。2020年までは3年続けて東京で開催されることが決まっている。昨年12月のアジア選手権で敗れ、今年6月の世界選手権(マドリード)出場を逃している日本にとっては実戦経験を積み、強化を図る貴重な機会となった。

21日の開幕戦は、体格に勝るイングランドの守備をかいくぐり、前半14分、黒田智成(たまハッサーズ)が左足でゴール右隅にシュートを決め先制点を挙げた。その後、イングランドに追いつかれるが、後半11分、再び黒田が相手DF4人に囲まれながらもボールを死守し、右脚で相手の股を抜く勝ち越し弾を入れ、勝利をおさめた。

第2戦のトルコ戦は、攻撃的な守備からチャンスを作り、日本ペースに。だが、0-0で迎えた後半、トルコに先制点を許すと、残り3分にもゴール前の混戦から追加点を許した。途中から降りだした雨で人工芝の上で滑るボールにも手こずった。ピッチコンディションを認知しきれなかったことや、黒田の負傷退場も響き、0-2で敗れた。

1勝1敗とし、勝ち点、得失点差ともにトルコに並んだ日本だったが、総得点差で3位となり、5位決定戦へ。そのフランスとの試合は、序盤から日本がプレスをかけて積極的に攻め上がり、フェンス際から中に切り出したキャプテン・川村怜(Avanzareつくば)が左足で角度のあるシュートを決め、先制。その後も日本が主導権を握り、1-0で勝利した。

東京への機運高まるなか得た課題と収穫

タイムアウトで選手に声をかける日本代表の高田敏志監督

トルコ戦では川村や佐々木ロベルト泉(Avanzareつくば)らが積極的にシュートを放つものの枠をはずれ、少ないチャンスをモノにした相手との差が結果に表れた。またフランス戦でも20本以上のシュートで試合のリズムを作りつつも、1得点に留まるなど、決定力不足が課題として浮き上がった。

「精度が足りない」と高田敏志監督。「シュートの決定力の確率があと1割上がれば、試合を有利に進められるようになる。練習で改善していきたい」と話し、2年後の東京パラリンピックを見据え、レベルアップを誓っていた。

一方で、日本がいま目指している、全員が積極的に前に出てチャンスを作る攻撃的サッカーには、最後までトライすることができた。守備の要・田中章人(たまハッサーズ)は「いい形で前の方で抑えることはできていた」と話し、また川村も「欧州の強豪国相手に、これだけ主導権を持って戦えるのは自信になった」と手ごたえを口にしていた。

決勝は、アルゼンチンとイングランドが対戦し、0-0でPK戦の末、アルゼンチンが勝利。初代王者に輝いた。ボールの中の鈴の音を消す“無音のスライドドリブル”など、光る個人技で会場を沸かせたアルゼンチンのフロイラン・パディジャがMVPを獲得した。また、3位にはロシアに競り勝ったトルコが入った。

3年にわたって大会を育てる

フェンス際で激しい競り合いをする森田翼(右/ディベロプメントゲームズ)

今大会は有料席ながら、連日多くの人が会場に足を運んだ。フランス代表のヤニック ル・コルヴェズアシストコーチは「フランスだとこういう大会を開いてもあまり人が入らない。観客がたくさんいて良かったし、よく準備されていた」と初開催の大会を評価していた。

世界ランク下位および競技上発展途上のチームによる国際強化試合「ディベロプメントゲームズ」も併催(インド、ベルギー、日本のナショナルトレセン)された。選手層の拡大とチーム力の底上げは、各国にとっても重要な課題。森田翼(Avanzareつくば)は、「身体の大きな選手に対する戦い方を学べた」と話し、貴重な機会に感謝していた。

また、会場では多くのスタッフが配置され、また実況中継が聴ける音声ガイドシステムの貸出など、さまざまなサポートツールが用意されており、観る人の立場に立った運営がなされていた。

「パラリンピックの成功なしに、2020年東京大会の成功はなし」と言われる。そこへ向けて、多角度的な視点を持った「3年間にわたる取り組み」には、これからも注目が集まりそうだ。

(MA SPORTS)