パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2018年9月14日

北九州2018ワールドパラパワーリフティングアジア‐オセアニアオープン選手権大会

8階級で世界新! 日本勢は大堂が銅メダルを獲得

9月8日から12日まで、パラ・パワーリフティングの国際大会「北九州2018ワールドパラパワーリフティングアジア‐オセアニアオープン選手権大会」が北九州芸術劇場で行われた。日本勢は男子88㎏級の大堂秀樹(SMBC日興証券)が195㎏を挙げて銅メダルを獲得した。

「イメージ通りの試技ができた」と語った男子88㎏級の大堂秀樹

東京パラ出場のために参加必須の重要な位置づけ

今大会は2020年東京パラリンピックに出場するための条件として設定されている世界4つの地域選手権のうちのひとつ。大会で出された記録は東京パラリンピックランキングに反映される。東京への道を開くチャンスとあって、世界29の国・地域から約200名がエントリーした。

下肢に障がいがある選手のベンチプレス競技。障がいの程度に関係なく、男女別に体重の区分で競う。アジアにはリオパラリンピックでもメダルを量産したイランや中国など強豪国が多く、今大会もジュニアを含めて男女それぞれ4階級、計8個の世界新記録が誕生した。

280㎏をマークしたラーマン。260㎏以上の試技で初めて使用される「50㎏」の黒のウエイトを装着したのは、彼のみだった

世界一の力持ち・ラーマン登場、大堂は「195㎏は軽かった」

リオ金メダルの世界最強の剛腕、男子107㎏超級のラーマン・シアマンド(イラン)は、第3試技の285㎏が惜しくもノーリフトとなったものの、今大会で最も重い重量となる280kgをマークして優勝。大会を大いに盛り上げた。ラーマンが持つ世界記録「310㎏」は、健常者の同じ条件下の世界記録を上回る。10月のアジアパラ競技大会にも出場予定だといい、記録更新の挑戦に注目が集まる。

ジュニアの若手からベテランまで男女合わせて27名が参加した日本勢は、競技4日目に待望のメダルを獲得。ロンドン・リオパラリンピック日本代表の男子88㎏級の大堂が、自己ベストまであと1㎏に迫る195㎏を挙げ、3位に入った。第1試技の183㎏、第2試技の191㎏はいずれも3人の審判全員が成功判定。その勢いをキープし、195㎏もほぼ完璧に成功させた。

「軽かった。200㎏を挙げる気力もあった」と大堂。当初、世界選手権5位のインド人選手が持つ203㎏をターゲットにしていたが、エントリーを見送ったため、急きょ作戦を変更。日本初の国際大会に出場する「第一人者の責任」として、「記録よりもメダル」にこだわり、結果を残した。195㎏はこの時点で世界ランク5位タイの好記録。2020年東京へ期待が高まる。

そのほか、男子72㎏級の樋口健太郎(個人)が165㎏の日本新記録を樹立して4位入賞。また、女子67㎏級ジュニアの15歳、森﨑可林(立命館守山高)が50㎏、同73㎏級の坂元智香(大分銀行)が67㎏をマークし、それぞれ自身が持つ日本記録を塗り替えた。

女子67㎏級で世界新記録を樹立した中国のタン・ユージャオ

計13階級制覇、際立つ中国の強さ

各階級で存在感を見せたのが中国勢だ。男女それぞれ10階級中、男子は5階級、女子は8階級を制した。そのうちジュニア1階級を含む5階級は世界新での優勝だ。国策としてパラスポーツ強化に取り組んでいる中国。代表のリーコーチは、「東京ではリオ大会のメダル数(金3・銀6・銅3)を超えたい」と自信を見せていた。

パラ・パワーリフティングの国際大会が日本で開かれるのは初めて。音楽やライティングでショーアップした演出がなされ、大画面で試技の様子を真上から撮影した映像を流すなど、観客を楽しませる工夫が随所に見られた。また、選手の輸送やボランティアのサポートなどについては選手から好評で、女子67㎏級で139㎏の世界新記録を樹立したタン・ユージャオ(中国)は「完璧な準備だった。安全に気持ちよく、試合に臨めた」と話していた。また、体重190㎏のラーマンは「移動手段や大会運営は素晴らしかった」とする一方で、「どこの国でも同じ事が言えるが、ホテルのトイレや浴室のドアが狭くて、車いすでの使用が難しい。会議でもそういった報告がされているが、なかなか改善されない」と注文をつけた。

日本パラ・パワーリフティング連盟によると、来年9月下旬に2020年東京大会の本番会場となる東京国際フォーラムでパラリンピック・テストイベントが開かれる予定だ。吉田進理事長は「強豪国の強化ノウハウを学び、日本の競技レベル向上に引き続き力を入れていく。運営についても今大会の経験をテストイベントにつなげたい」と話した。

(MA SPORTS)