パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2018年10月4日

ヒューリック・ダイハツ
JAPANパラバドミントン国際大会2018

山崎悠麻が3冠達成! 日本勢は9個の金メダルを獲得

世界バドミントン連盟(BWF)の公認大会のひとつである「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2018」が9月26日から30日まで、町田市立総合体育館で開催された。世界14カ国から109人がエントリー。各障がいクラスごとに、男女それぞれシングルス、ダブルス、ミックス(男女混合)ダブルスの試合が行われ、日本勢は9個の金メダルを獲得した。

「3冠は初。これまでどれか落としたりしていたので、本当にうれしい」と語った山崎悠麻

山崎「出るからには3種目とも優勝したかった」

シングルスで大会2連覇を果たした車いすWH2の山崎悠麻(NTT都市開発)が、WH1の里美紗李奈(パシフィック)と組んだ女子ダブルス、韓国人選手と組んだミックスダブルスも制して、見事「3冠」を達成した。1日に3種目の決勝に挑むハードスケジュール。「身体より、メンタルが一番疲れる」と話すが、「出るからには、3種目とも優勝したい」と最後まで集中力を切らさず、戦い抜いた。

昨年、より練習に集中できる環境を求めて転職し、身体づくりにも挑戦してきた。とくに、車いすで背中を反らせた状態で負荷をかけて起き上がるトレーニングなどで、体幹を強化。「芯の部分がしっかりしてきた」と話すように、単複ともに、最短距離でシャトルに追いつき、激しいラリーを制した。6日に開幕するアジアパラ競技大会も、今大会と同じく3種目で頂点を狙う。

また、山崎と組んだダブルスで優勝した里見もWH1クラスのシングルスで金メダルを獲得。次世代アスリートとして注目される20歳は、「悠麻さんたちのプレーがすごく勉強になる」と先輩の活躍に刺激を受けながら、さらなる成長を誓っていた。

観客の声援に笑顔で応える杉野明子(手前)と末永敏明

ミックスダブルスで末永・杉野組が存在感

SL3—SU5のミックスダブルスでは、末永敏明(昭和電工)・杉野明子(ヤフー)組が頂点に立った。1次リーグから決勝まで、1ゲームも落とさない完勝だった。女子の杉野が上肢障がいで、男子の末永が下肢障がいのペア。動きの良い杉野と技術の高い末永が、自在にローテーションしながら攻撃の形を作ることができるのが強みで、決勝でも下肢障がい同士の相手を巧みに追い込んだ。

2013年に初めてペアを組み、少し間が空いたのち、2016年から再びペアを組み、その年のアジア選手権で金メダルを獲得した。普段一緒に練習する時間は少ないが、強化合宿などでプレーを磨き、現在は世界ランク2位につける。世界1位のインドネシアのペアとは、アジアパラで対戦する可能性が高い。杉野は「互いにカバーしながら、自分たちの得意な形が作れればきっと勝てると信じている」と話し、末永も「対戦して勝って金メダルを獲りたい」と言葉に力を込めた。

シングルスを制したSU5の今井大湧。「たくさんの応援が力になった。2020年も同じように盛り上がるかな、と思うとすごく楽しみ」と話した

SU5で今井が初優勝、鈴木は単複2冠!

上肢障がいSU5の男子シングルス決勝に臨んだのは、今井大湧(日体大)。8月のブラジル国際ではフルゲームの末に敗れたバルトウォミエイ・ムルース(ポーランド)を21-14、21-11で退け、リベンジを果たした。中盤まで一進一退の攻防が続いた第1ゲームでは、13-13の場面から6連続ポイントをあげ、一気に流れを手繰り寄せた。「いつもなら競り負けてしまう場面。でも、今日は自分のほうが上だという気持ちを作れたことが点数につながった」と振り返る。

この1年は所属する日体大の専属トレーナーとともに下半身を強化してきたたことで、プレーの安定感が増した。アジアパラでは、今大会は出場していない世界1位のリク・ハウ・チア(マレーシア)ら強敵が待ち構える。「いつも速いタッチとフェイントで崩される」と警戒しつつ、「自分からラリーで押して攻撃できれば」と自信をのぞかせていた。

同じくSU5女子の鈴木亜弥子(七十七銀行)は、強豪・中国勢が不在のなか、エントリーした単複ともに優勝した。

なお、今大会は会場に大型ビジョンや、コートサイドにスコアを表示する電子モニターを導入。複数のコートで試合が同時進行しているため、観客からは「結果が分かりやすく、観戦しやすい」と好評だった。また、大会ホームページでは試合の動画をライブ配信するなどし、初採用となる2020年東京パラリンピックに向け、多くのファンとつながる工夫がみられた。
※世界ランキングは2018年8月16日付

(MA SPORTS)