ブラインドサッカー チャレンジカップ2018
日本代表がアルゼンチンから初得点奪うも逆転負け
「ブラインドサッカー チャレンジカップ2018」が4日、町田市立総合体育館で開催された。世界ランク9位の日本代表は、同2位で今年の世界選手権準優勝のアルゼンチン代表と対戦し、1‐3で敗れた。
川村怜が右足を振り抜き、アルゼンチン代表から日本初得点をマーク
キャプテン川村が歴史的ゴールで先制点
前半の立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛けたのは日本代表だった。開始早々、黒田智成(たまハッサーズ)が中央を突破すると、相手DFをかわしながらシュートまで持ち込んだ。ボールは相手GKの足に当たりゴールはならなかったが、リズムを手繰り寄せた。
そして前半3分、フェンス際でボールを奪った川村怜(Avanzareつくば)からパスを受けた黒田が攻め込み、ゴール前の混戦でボールがこぼれたところを、詰めていた川村が得意の左足でシュート。GKに弾かれたものの、間髪入れず、今度は右足を振り抜き、先制ゴールを決めた。これが対アルゼンチン戦としては5度目の対戦にして日本代表の初得点となり、チームに勢いをつけた。だが、前半終了間際の19分、アルゼンチンに同点弾を許し、1‐1で折り返した。
後半は終始、アルゼンチンがボールを支配。10分にマキシミリアーノ・エスピニージョがDF3人に囲まれながらも強烈な逆転ゴールを決め、さらに17分には、フロライン・パデイジャからの縦パスを受けたマキシミリアーノが再びゴールネットを揺らした。日本代表はアルゼンチンの多彩な攻撃で押し込まれて守勢にまわり、前半の勢いを取り戻すことができなかった。
アルゼンチンはマキシミリアーノ・エスピニージョが2得点と活躍
見えてきた日本代表の収穫と課題
東京2020パラリンピックに向けてビルドアップを図る日本代表にとって、収穫と課題が明確に出た一戦となった。「個人では圧倒的な差があるが、今回は組織力でバイタルエリアまでボールを運べた」と日本代表の高田敏志監督。今年8月の南米遠征では、アルゼンチンに0-0と引き分け守備で収穫を得たものの、ほとんど攻撃の形が作れなかっただけに、ゴールをこじ開けたことは大きな意味があると言えるだろう。
一方で、同点に追いつかれてからは、アルゼンチンの個人技と体力の前に引き気味になり、試合を組み立てられなかった。大会MVPに選出されたアルゼンチン代表のマキシミリアーノは「僕たちが逆転したあと、日本が少し下がってきたので3点目を入れることができた」と話し、マルティン・デモンテ監督も「日本との差は、見る限りはないと思う。もしあるとしたら、インテンシティ(プレー強度)が続くかどうかだと思う」と日本の課題を指摘する。川村も、「リードしてからの時間の使い方に甘さがあった。相手のゴール前での強度をもっとイメージしていかなければいけない」と反省を口にし、前を向いた。
日本は昨年12月のアジア選手権で敗れ、今年の世界選手権出場を逃した。だが、積極的に海外勢と交流する機会を設け、南米遠征ではリオパラリンピック優勝国で今年の世界選手権も制したブラジルと引き分け、またベルギー遠征ではリオ銀メダルのイランを破るなど、一歩ずつ成長を遂げている。今大会を含め、数々の経験をバネにさらなる強化を図る日本代表の今後に注目が集まる。
今大会は体育館のフロアに人工芝を敷き、実施された
新たなファン獲得も視野に、2年連続で開催予定
今大会は東京2020パラリンピックに向けたブラインドサッカーの普及と、日本代表の強化を目的として、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)と日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が主催し、新設したもの。来年も東京都内で開催されることが決まっている。4日は小雨が舞うあいにくの天気だったが、天候に左右されない体育館での開催で、無料ということもあり、1762人が観戦を楽しんだ。有料席はアリーナ席のほかに、フェンスの真裏から迫力のプレーを堪能できる「透明シート席」を初めて設けるなどし、新たなファン獲得に向け、様々な工夫がなされていた。
地元の町田市に住む40代の男性は小学3年生の息子と初観戦し、「無料席の事前予約も簡単にできたし、天気を気にせず観戦できるのも良かった。何より、音だけを頼りにプレーする選手の技術の高さに興奮した。来年3月に国際大会があると聞いたので(「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ2019(品川区立天王洲公園)」/2019年3月19日~24日)、また観に行きたいと思ったし、できれば東京パラリンピックも生で観てみたい」と話していた。
(MA SPORTS)