IWAS車いすフェンシングワールドカップ京都大会
国内初のW杯、世界トップクラスのフェンサーが集結!
「IWAS車いすフェンシングワールドカップ京都大会」が13日~16日、京都市のグランドプリンスホテル京都で行われた。日本でワールドカップ(W杯)が開催されるのは初。27の国・地域から178人の選手が参加し、日本勢では女子障害Bの櫻井杏理(日阪製作所)がフルーレで銅メダルを獲得した。
女子障害Bのフルーレ準決勝でリオ金のヴィオを攻める櫻井(右)
東京パラのランキングポイント獲得のチャンス
車いすフェンシングは、パラリンピックでは1960年のローマ大会から正式競技に採用されるなど、歴史は古い。「ピスト」と呼ばれる板に車いすを固定するため、前後の移動はない。間合いのない0.1秒の駆け引き、とりわけそのスピード感がこの競技の魅力だ。
今年11月のW杯ジョージア大会から2020年東京大会に必要なランキングポイント争いがスタート。来春まで続き、京都大会はその2戦目となる重要な大会だ。東京パラ出場を確実にしてメダル争いをするには、毎大会ベスト8以上の成績をおさめたいところだ。
日本勢で唯一、メダルを獲得した櫻井(右端)。大会後は再び渡英し、強化に励む予定だ
女子フルーレで櫻井が銅メダル獲得!
日本からは男子8人・女子4人が出場。その中で唯一、表彰台に乗ったのが、櫻井だ。女子障害Bのフルーレ準決勝では、リオパラリンピック同種目金メダリストのベアトリーチェ・ヴィオ(イタリア)と対戦。11-15で敗れて銅メダルに終わったものの、ヴィオのスピードに対し、粘りのアタックで一時は1ポイント差まで追い上げた。試合後は女王に「素晴らしい成長。油断できない選手」と言わしめ、ライバルのロシア人選手は「世界があなたを警戒している」と声をかけた。
日本を飛び出し、海外での武者修行を重ねる。求めるのは「経験値」だ。大会直前には、元日本代表監督の山本憲一コーチが所属するロンドンのレオンポールフェンシングクラブで、車いす・立位を問わず、あらゆる国の選手と剣を交えて腕を磨いた。今回、ヴィオから4連続得点を含む、過去最高の11ポイントを奪ったのは、そうした強化の成果といえる。とはいえ、「やりとりを長くして彼女の体勢を崩すことを意識したけれど、対策を読まれ、後半私が迷っていたのを彼女は見逃さなかった。もっと攻撃の精度を上げないといけない」と、櫻井は反省を口にする。山本コーチも「戦略の引き出しをもっと増やさないと」と話し、今後の伸びしろに期待をかけていた。
櫻井はエペでは準々決勝敗退。また、個人戦の男子サーブルで障害Aの加納慎太郎(ヤフー)、安直樹(東京地下鉄)、障害Bの恩田竜二(三交不動産)が、男子エペで障害Aの中川清治(中川船舶)、障害Bの藤田道宣(トレンドマイクロ)、角田成(夢真ホールディングス)が、男子フルーレで障害Aの中川、加納、安、福田勇士(兵庫医療大)、障害Bの藤田、角田、恩田が決勝トーナメントに臨んだものの、上位には入れなかった。
男女の団体戦を終え、集合写真におさまる日本選手団
白熱の団体戦は男子11位、女子は最下位に沈む
大会最終日は、男子フルーレ、女子エペの団体戦が行われ、観客の声援が飛んだ。日本女子は松本美恵子(東京都立多摩総合医療センター)、阿部知里(香川県立中央病院)、千坂香菜(ジーシー)で臨み、最下位の10位。日本男子は、加納、安、藤田(リザーブ笹島貴明/インターネットイニシアティブ)で挑み、2敗で迎えた最終戦の香港戦に45-32で勝利して12チーム中11位だった。
日本男子は1敗で迎えたドイツ戦、優位に試合を進めるも終盤に猛追を許す展開に。安が車いすの座面から尻が離れているとして審判から数枚のレッドカードを出されてしまったのだ。最大16ポイントあったリードは1ポイント差に。その後も相手の勢いは止まらず、逆転負けを喫した。「チームの足を引っ張ってしまった」と安。また、安のあとに最後に登場した加納も、「リカバリーできなかった自分も力不足。この経験を次につなげたい」と話し、前を向いた。
パラリンピックでは北京大会以降、出場を逃している日本代表。自国開催の東京大会に向け、日本車いすフェンシング協会が育成と強化を進めている。2016年、シドニーとアテネ大会の個人種目で3つの金メダルを獲得している香港出身のフン・イン・キィ氏が日本代表ヘッドコーチに就任。京都市の競技別ナショナルトレーニングセンターを中心に、強化合宿等を行っている。だが、今大会は櫻井のメダル1個に留まった。キィヘッドコーチは大会を振り返り、「車いすフェンシングの裾野拡大は急務。健常のフェンサーの協力を得て強化し、世界との差を埋めていきたい」と話した。
(MA SPORTS)