2019 Goalball Japan Men’s Open
男子の国際大会で日本代表Aが優勝!
ゴールボール男子の国際大会「2019 Goalball Japan Men’s Open」の決勝が14日、千葉県の佐倉市民体育館で行われ、日本代表Aがタイに15-12で競り勝ち、優勝した。3位決定戦では、日本代表Bがオーストラリアを6-3で下した。
大会最多となる24得点をマークし、日本代表Aの優勝に貢献した山口凌河
「勝つ自信を植え付ける」ことが狙い
東京パラリンピックに向けた男子代表の強化を目的に開催。日本2チームと、オーストラリア、タイ、カナダ(バンクーバー・ゴールボール・クラブ)の4カ国5チームが頂点を争った。男子の日本代表はパラリンピックに出場したことがない。今大会は初出場となる東京大会を見据えて、「勝つ自信を植え付ける」(江黒直樹監督)ことが狙いだ。その言葉の通り、両チームとも貴重な経験値を得ることができた。
優勝した日本代表Aにとって大きな一戦となったのが、総当たり予選リーグのオーストラリア戦だ。先制しながら同点に追いつかれ、試合終了間際まで混戦が続いたが、残り14秒でのタイムアウト直後に、田口侑治がゴールを決めた。1点差で勝ち切ったという自信がチームを勢いづけ、日本代表Aは決勝に進出。その決勝は、序盤こそタイに5点のリードを許す展開となったが、そこから全員プレーで挽回。身長182㎝のウイング宮食行次はセンターもこなし、相手の動きを読むサーチ力を柔軟に発揮。山口凌河の多彩な投球や、後半の辻村真貴の4連続得点などで、追いかけるタイを突き放した。
大会を通して最多となる24得点をマークした山口は、「チームで掴んだ優勝」と笑顔を見せ、辻村も「海外勢の速く、異質なボールをどう攻略するか、ずっと考えていた。諦めない気持ちがチーム一丸となる力になった」と振り返り、手ごたえを感じていた様子だった。
ウイングの佐野優人はセンターを経験し、試合を重ねるごとに成長を遂げた
若い力のさらなる成長に期待
10代の若手・佐野優人と金子和也は、日本代表Bで3位に貢献した。予選リーグのタイ戦でセンターの川嶋悠太が口の中を切るケガでチームを離脱。代わってセンターに投入された佐野が奮起し、タイ選手のボールの音を鳴らさない技ありのバウンドボールも、確かな守備力で幾度と防いだ。本来はライトウイングの選手だが、「センターも練習してきた」と佐野。江黒監督は「今大会のラッキーボーイ。一番伸びを感じた選手」と評価し、それ以降の試合も主にセンターで起用した。佐野にとってナショナルチームの代表入りは今回が初。期待に応えた若きプレーヤーのさらなる成長が楽しみだ。
金子は昨年のアジアパラ競技大会でも日本代表で活躍した成長株。世界でも珍しいサウスポーならではのキレのある投球が武器だ。3位決定戦では24分間のフル出場を果たすなど、存在感を見せた。全体の3位となる18得点を入れた金子は、「信澤(用秀)さんたちベテラン勢が盛り上げてくれて安心してプレーできた。得点を取ってチームに貢献しようと思っていたので、メダルが獲れて嬉しい」と話し、汗をぬぐった。
大会後、江黒監督は「両チームともよく頑張った。ただ、チーム失点は『3点以内』でトレーニングしてきたが、打ち合って失点する場面もあった。国際大会でしっかり勝てるチームを作ってきたい」と、言葉に力を込めた。
今大会のヘッドレフェリーを務めた新居平康さん(前列左)ら審判員も、東京パラに向けて強化を進めている
東京パラに向けた「審判員」の育成・強化も本格化
2020年に向けて、ゴールボールの審判員も育成・強化が本格化している。審判はレフェリー2名、10秒レフェリー、ゴールジャッジなどから構成される。IBSA(国際視覚障害者スポーツ協会)が認定する最上位資格「レベル3」の国際審判員で、リオ大会ではアジア人で唯一、レフェリーに選ばれた新居平康さんによると、パラリンピックは原則として開催国が最大15人のゴールジャッジを用意する必要があり、「レベル1」以上の資格取得が必須条件となる。そのため、新居さんが中心となって、日本人向けのクリニックを開催するなどして準備してきたという。
東京大会の応募は締め切られたが、競技の認知度向上に比例するように審判についての問い合わせも増加傾向にあるといい、「日本人で審判を目指す人たちに、いつかパラリンピックという最高峰の舞台を体験してほしい」と新居さん。
女子代表の国際大会である2月のジャパンパラ競技大会は、世界ランク1位のブラジル、2位のトルコ、4位の日本、6位のアメリカが参加する。まさに頂上決戦と呼ぶにふさわしいビッグトーナメントだが、ゴールジャッジらにとってもハイレベルな試合を経験する貴重な機会になる。新居さんによると、レフェリーもヨーロッパ、アメリカ、アジアから精鋭が集まる予定だそうだ。ゴールボールは音が頼りの視覚障害者競技。ジャパンパラでは、その試合と会場をコントロールする審判員たちの活躍にも、注目してみてほしい。
(MA SPORTS)