パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2019年6月12日

CPEDI3★Gotemba 2019 Summer
兼 JRAD 国内競技会PartⅡ

グレードⅢの稲葉が3種目で優勝!

パラ馬術の国際競技会「CPEDI3★Gotemba 2019 Summer 兼 JRAD 国内競技会PartⅡ」が7日から9日まで、御殿場市馬術・スポーツセンターで開催された。東京2020パラリンピックの代表人馬選考の対象となる重要な大会のひとつで、国内トップレベルの人馬が集結した。

冷静沈着なパフォーマンスで、3種目を制した稲葉将&ピエノ

稲葉「東京パラに向けて勝負をかける」

「東京パラでも3種目出場できるように頑張りたい」と稲葉

人馬一体となって演技の正確性と芸術性を男女混合で競う馬場馬術競技。障がいの内容や程度により、Ⅰ~Ⅴのグレード(クラス)に分かれて行う。今大会は、規定演技を行う「チームテスト」(本来は3人馬で構成される団体課目で、今大会は団体課目用の経路で個人課目として実施)、「インディビジュアルテスト」、各自で選んだ楽曲にあわせて演技を組み合わせていく「フリースタイルテスト」を実施した。

3日間でとりわけ存在感を示したのが、グレードⅢの稲葉将(静岡乗馬クラブ/シンプレクス)&ピエノ。初日のチームテストでは、出場人馬中、唯一得点率で60%を超える63.970%をマークしてトップに立つと、8日のインディビジュアルテストも63.824%で優勝。成績上位者のみが進める9日のフリースタイルテストに、ただ一人進出を果たした稲葉は、「スコアは前回より悪かったけれど、フリーに唯一進んだ点は褒めたいと思う」と、笑顔で大会を振り返った。

今回は2頭での登録を予定していたが、初日の練習時にビーマイボーイ3から落馬するアクシデントに見舞われていた。ケガなどはなく、最終的にピエノとのみ競技会に臨むことになったが、「これだけ練習してきたんだから大丈夫」と、気持ちを切り替え、最後まで冷静に手綱を握る姿が印象的だった。

今後はさらに別の馬との大会出場も視野に入れているという。「複数の馬に乗ることで、対応力や自分自身の引き出しが増えると感じている。東京2020パラリンピックでもフリーに出たい。勝負をかけたい」と稲葉。来年に迫った大舞台に向け、さらなる飛躍を誓っていた

吉越奏詞&バイロンエイティーンも美しい演技を見せた

吉越も東京パラ出場選考基準を突破

グレードⅡの吉越奏詞(成田乗馬クラブ)&バイロンエイティーンは、2種目で優勝。フリースタイルテスト出場は叶わなかったが、インディビジュアルテストで63.432%をマークする活躍を見せた。

生後すぐの脳性麻痺で右手と両足が不自由な吉越は、もともと最も障がいが重いグレードⅠだったが、現在はひとつ軽いグレードⅡに。昨年の世界馬術選手権ではグレードⅡのフリースタイルテストで6位の成績をおさめた期待の星だ。「幼いころはずっと車いす生活と言われていたけれど、馬に乗るようになってから歩けるようになった。グレードの変更も身体が強くなったからだと思う」と吉越。

グレードⅠの歩様は最も基本的な技術である常歩(なみあし)だが、グレードⅡはそこに速歩(はやあし)が加わり、求められる技術レベルも上がる。吉越は日本体育大の学生でもあり、筋肉の使い方など学んだ知識が身体的にも技術的にも競技に活かされているといい、「大変だけど、東京パラに出場できるように頑張りたい」と、力強く話した。

なお、グレードⅤの石井直美(東京障害者乗馬協会/サンセイランディック)&ゴールドティアも2種目で優勝。グレードⅣでは、チームテストは大塚宗毅(OISO乗馬クラブ)&リトルアトムが、インディビジュアルテストは高嶋活士(ドレサージュ・ステーブル・テルイ/コカ・コーラボトラーズジャパン)&ケネディ‐Hが制した。グレードⅠはただ一人、細川裕史(東京都障害者乗馬協会)&藤風が出場した。国内競技会はグレードⅣの石山繁(サイトウ乗馬苑)&ランカスター、グレードⅤの大川順一郎(ポニースマイル)&オンディーナが出場した。

東京パラの日本の出場枠は「4」

東京2020パラリンピックに出場する条件としては、今大会を含む「3★(スリースター)」以上の競技会で、チームテストまたはインディビジュアルテストのどちらかで得点率「62%」以上を獲得という基準がある。

今大会で、グレードⅢの稲葉&ピエノ、グレードⅡの吉越&バイロンエイティーンが基準をクリア。また、2019年6月9日現在までに、すでに稲葉はビーマイボーイ3と、そしてグレードⅣの高嶋&ケネディ‐H、グレードⅡの宮路満英&サンダボーイ、グレードⅠの鎮守美奈&ジアーナも62%以上をマークしている。開催国として日本は「4枠」を得ており、これから再び基準突破を目指す人馬が増える中で、国内での競争が激しくなりそうだ。

稲葉は、「他の人馬の活躍は刺激になるし、モチベーションも上がる」と語り、気を引き締める。また、日本障がい者乗馬協会の三木則夫強化本部長は、「世界との実力差をいかに東京パラまでに詰めていくか。こうした競技会等で切磋琢磨して経験を積み、強化していきたい」と語った。

(MA SPORTS)