2019年度日本パラカヌー選手権大会
兼 2020パラカヌー海外派遣選手一次選考会
東京パラ出場を目指す国内選手がエントリー
カヌーの東京2020オリンピック・パラリンピックの本番会場となる「海の森水上競技場」を舞台に6日、パラカヌーの日本選手権が開催された。パラリンピック出場権獲得をかけた来年のワールドカップ(ドイツ)の派遣選手選考会を兼ねた重要な大会で、国内トップ選手がしのぎを削った。
日本のエースとして確かな実力を示した瀬立モニカ
世界選手権で代表内定の瀬立「本番まで貪欲に頑張る」
リオパラリンピック日本代表で8月の世界選手権(ハンガリー)女子カヤックシングル(WKL1)で過去最高の5位に入り、上位6人に与えられる東京2020パラリンピックの代表に内定した瀬立モニカ(江東区カヌー協会)も出場。向かい風のなか、障がいクラスの軽い選手と競い合い、4人中2番手となる59秒951でゴール。また、ヴァー(アウトリガーカヌー)にもエントリーし、力強いパドルさばきを見せた。
今夏の強化トレーニングの成果が出たのは世界選手権だった。予選と準決勝で、54秒台の好タイムを出した。その一方で、課題も明確になった。スタートダッシュを持ち味とする瀬立だが、「残り50mのラストスパートでは海外の強敵にまだ分がある。この冬場にしっかりと筋持久力を養い、漕ぐ精度を落とさずピッチを上げていきたい」。この日は代表に内定してから初めてのレース。「本番までの一日一日を無駄にせず、メダル獲得に向けて毎日貪欲に頑張っていきたい」と、21歳は言葉に力を込めた。
WKL2は宮嶋志帆(埼玉県カヌー協会)、WKL3は加治良美(ネッツトヨタ名古屋)が制した。
男子は辰己が2種目制覇!
辰己博実は2冠。「この会場で出したタイムが今後の基準になる。次のレースにつなげたい」と語った
男子は辰己博実(テス・エンジニアリング)がカヤックシングル(KL2)で、ただひとり49秒台をマークして優勝し、存在感を示した。「漕ぎ出しから30パドルでトップスピードに乗り、再び最後にギアを上げるのが理想のレース。今日はスタートがあまりよくなかったけれど、最後まで漕ぎ抜いて記録を残せたので合格点かな」と笑顔を見せた。2種目目のヴァーも制した辰己。ヴァーはアウトリガーが付いているため安定性がある一方、直線性能が低くなる。辰己の場合、体力を奪われる終盤は体幹の保持が難しくなるというが、この日のレースはゴールまでバランスを保つことができた。冬場のフィジカルトレーニングの成果を感じているといい、「これからも水上で発揮できる身体づくりをしっかりやっていきたい」と話した。
KL1は高木裕太(インフォニオンテクノロジーズジャパン)が優勝。世界選手権の経験から、これまでよりパドルのサイズを大きくし、回転数を上げるスタンスに変更してレースに臨んだ。「思ったよりも体力を奪われた」と話すように、後半に失速してしまったが、最後まで自分のパフォーマンスを追求した。「これから練習で伸ばしていく。東京に向けてしっかりやっていきたい」を話し、前を向いた。
KL3は小山真(埼玉県カヌー協会)がスタートからリードする展開を作り、逃げ切った。同クラスのヴァーは今井航一(香川県パラカヌー協会)が優勝した。
選手に聞いた、本番会場の印象
今大会は5月末に完成した「海の森水上競技場」で行われた。競技に影響が出ないよう波を抑える消波装置が設置されており、屋根付きの観客席は2,000人が収容できる。この日は健常の大会と一緒に実施され、選手の関係者や応援団などが大勢訪れた。
「声援が力になる」と選手には好評だった海の森水上競技場
参加した選手に会場の印象を聞くと、「普段は淡水で練習しているため今回初めて海水で乗艇した。ふわふわした感じがあったけれど、漕いでみると意外と重く、慣れるまで苦労した。このレースで経験できたのは良かった」(加治)、「観客席が近く、漕いでいてみなさんの応援が力になる。いいコースだなと思う」(小山)、「事前情報では波が高いと聞いていたけれど、それほどではなく、風があると感じた。また、これまで行った会場ではレース中に観客の声は聞こえなかったから、画期的だなと思った」(高木)と、それぞれ回答してくれた。
また、瀬立はこう分析する。「普段練習している旧中川は海水が流れ込んでいる。この会場は同じような感覚で漕げるので(自分に)有利に働くかもしれない。また、ここは風向きが変わりやすいところなので、いかに水と仲良くできるか、風を読めるかが大事になると思う」
1年後の大舞台で日本勢は地の利を生かせるか、活躍に期待したい。
(MA SPORTS)