パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2019年10月23日

車いすラグビーワールドチャレンジ2019

強豪集結! 日本代表は銅メダルを獲得

世界ランキング上位の8カ国が参加する「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が16日から5日間にわたり、東京体育館で開催された。世界選手権覇者として優勝を目指して大会に臨んだ日本代表は、銅メダルを獲得した。優勝はオーストラリア、2位はアメリカだった。また、大会を通して3万5000人を超える観客を動員し、おおいに盛り上がった。

キャプテンの池透暢(右)は、厳しいマークにあいながらも得点を重ね、チームを引っ張った

日本のバリエーション豊富なラインナップ

世界ランク2位の日本は、予選リーグ開幕戦で初対戦となるブラジルと対戦。この試合を61-42と快勝し、続くフランス戦も51-42で勝利。予選リーグの“山場”ともいえるヨーロッパ選手権優勝の強豪イギリスとの試合も制し、全勝で準決勝に進出した。

その準決勝では、世界1位のオーストラリアに56-57の1点差で敗れ、決勝進出を逃したが、3位決定戦で再びイギリスを破り、3位に入った。

自国開催で強豪と対戦する絶好の機会となった今大会を、日本代表は10か月後に迫った東京2020パラリンピックの前哨戦と位置づけていた。優勝を目指すなかで、キャリアの浅い選手や日本の持ち味である多彩なラインナップを積極的に起用し、現段階の成長と課題を確認することも目的のひとつだった。

オーストラリアのライリー・バットにも競り負けない守備力を見せた乗松聖矢(左)

大会序盤は各選手のプレータイムを確保。ブラジル戦では登録12人の選手全員が出場した。安定感のある池透暢(3.0)、池崎大輔(3.0)、若山英史(1.0)、今井友明(1.0)のラインを中心に、最も障がいが重いクラスの長谷川勇基(0.5)、守備に定評がある乗松聖矢(1.5)や17歳の橋本勝也(3.0)らが躍動した。

日本の得点源は高さもあるハイポインターだが、本来は守備で展開を支える「縁の下の力持ち」であるローポインターも前線に走り得点するのが、いまの代表チームの特徴だ。これは、2017年のケビン・オアーヘッドコーチ(HC)の就任時から取り組む強化のひとつで、ブラジル戦では岸光太郎(0.5)がトライを決め、接戦となった準決勝のオーストラリア戦では今井が6得点、乗松が5得点と気を吐いた。

チーム最年長の48歳の岸は、「チャンスがあればトライを狙え、というのがケビンの方針。本来であればハイポインターにボールを譲る場面で、クラス0.5の自分が積極的に行けたのは、進歩だと思う」と話し、日本の可能性をかみしめた。

宿敵に敗れ、オアーHCは「自分たちを信じ切る力が必要」

日本に唯一、土をつけたのは、準決勝で戦ったオーストラリア。今年9月のアジアオセアニア選手権決勝でも日本は敗れている。技術・スピード・センスに長け、「世界最強」と称されるライリー・バット(3.5)はこの試合にフル出場。日本は、彼を軸としたハイローラインの強固なディフェンスにミスを誘われ、ターンオーバーから痛い失点を喫した。

日本にもチャンスの場面があったが、詰め切れなかったことが点差にあらわれた。試合前、「マッチアップが難しい相手。我々がどれだけ自分たちのプレーを最後まで貫けるかが鍵」と警戒していたオアーHC。この激闘後は、「勝てればいいという『hope』ではなく、自分たちを信じ切る『believe』でなければいけない。その考えをいかにチームに浸透させられるか。東京パラでは、そこが勝利のポイントになる」と話し、前を見据えた。

大観衆のなかでの試合が実現、東京パラへのステップに

5日間で3万5000人を超える観客を動員。日本チームにはひときわ大きな声援が送られた

今大会は一部有料席が設けられ、そのチケットは完売。地元の渋谷区など、都内の公立学校の小・中学生や高校生らも観戦招待され、初日から熱いエールを送っていた。コート上の選手同士の会話やベンチからの声が聞こえないほどの大声援だったが、日本チームはアイコンタクトやジェスチャーで慎重に動きを確認。また、オアーHCがパネルを使ってベンチから指示を出すなど工夫し、コミュニケーションを図っていた。

アテネ大会から4大会連続でパラリンピックに出場している島川慎一(3.0)は、「日本でここまでの声援は聞いたことがない」と驚いた様子だったが、「応援は大きな力になる。来年の東京パラ本番もこうなると思うし、チームとしてしっかり対策はできた」と、冷静に振り返る。キャプテンの池も、「こんなにも多くの人に支えられているんだということを、改めて知った。東京パラでは金メダルを獲り、みんなを泣かせたい」と熱く語っていた。

(MA SPORTS)