パラFIDジャパン・チャンピオンシップ卓球大会2020
男子は浅野が連覇達成、女子は山口が大逆転で初優勝!
パラ卓球で知的障がいクラスの選手が日本一を争う「パラFIDジャパン・チャンピオンシップ卓球大会2020」が12月12日から2日間にわたり、神奈川県立スポーツセンターで開催された。今年はシングルスのみが行われ、混戦の男子は浅野俊(PIA)が制し、女子は山口美也(滋賀県障がい者卓球連盟)が初優勝を果たした。
佐々木コーチ(左)とともに、試合後の囲み取材に応じる浅野。来夏のパラリンピックでの活躍が期待される
浅野は今季から新天地でコーチと二人三脚で強化
混戦の男子シングルスの決勝トーナメントを勝ち上がったのは、浅野と竹守彪(TOMAX)。昨年と同じ決勝カードで、さらには東京2020パラリンピック代表内定同士の対決とあって、注目を集めた。
序盤から一進一退の攻防が続いた第1ゲームは、浅野が13-11で先取。第2ゲームは竹守が2-7と劣勢から逆転し、11-9と取り返した。「相手に好きにプレーさせてしまった。取らせるべきではなかった」と火がついた浅野は集中力を高め、第3ゲームは5-4の場面からコーナーを突く鋭いショットで5連続得点に成功、再び流れを引き寄せた。最終ゲームも持ち味の強打で竹守を追い込み、最後は竹守の甘く入ったサービスリターンを強烈なフォアのクロスで返し、試合を決めた。
今春、長崎の高校を卒業し、東京の医療機器製造販売の企業に就職した浅野。コロナ禍のなか、故郷そしてインターハイをともに目指した部活の仲間たちと離れ始まった新天地での生活は、「毎日が苦しかった」。それでも、6月から佐々木信也コーチと二人三脚で練習を積み、フットワークに磨きをかけ、乗り越えてきた。「卓球をしてきて、初めて泣きそうになった」と、浅野はしみじみと優勝を振り返る。
佐々木コーチは浅野について、「作戦づくりや組み立てはまだまだ。でも、彼は飲み込みがはやい。東京パラまでの伸びしろは十分にあると思う」と評価する。来夏の大舞台に向けて、さらなる飛躍が楽しみだ。
浅野の成長に「刺激を受けている」と話す竹守(奥)は、次戦でのリベンジを誓う
敗れた竹守は、次戦でのリベンジを誓う
竹守は4年前のリオパラリンピックに日本代表として出場。軽快なフットワークと攻撃的なプレー、豊富な経験を活かした戦術の組み立てのうまさは随一で、今大会でも存在感を発揮していた。準決勝までは隙のない戦いを披露していたが、決勝では「レシーブミスが響いた。コースも単調になり、闘志が少しずつ薄れてしまった」と、自らペースを乱してしまったことを反省する。これで浅野との対戦成績は4勝2敗に。竹守は「心技体で課題があると明確になったし、今回の一戦は勉強になった。自分を変えるきっかけにしたい」と話し、前を向く。
国内での次戦は、来年3月に予定されているチャンピオンリーグ。昨年は決勝で浅野を破って優勝しており、「いかに力を出し切れるか。チャンピオンリーグで浅野君にリベンジしたい」と、力強く語った。
また、3位には加藤耕也(あいおいニッセイ同和損保)が入った。
決勝で相手にチャンピオンシップポイントを握られながら大逆転勝利をおさめた山口
女子の山口は初Vに「びっくりしたけど、自信になった」
女子は18歳の新星・山口が躍動した。準々決勝でリオパラリンピック日本代表で昨年を含めこの大会を10度制している伊藤槙紀(CTCひなり)をストレートで破ると、続く準決勝でも優勝経験のある川﨑歩実(トラストシステム)を3-1で撃破。決勝では、2016年大会女王の櫨山七菜子(青葉クラブ)に0-2とリードを許し、第3ゲームは櫨山にチャンピオンシップポイントを握られる苦しい展開に。だが、土壇場で4連続で得点を決め、このゲームを12-10で奪い返すと、その後も櫨山の強打をカットマンらしく粘り強くさばき、フルゲームの死闘を勝ち切った。
中学の部活動で卓球を始めたという山口。この大会の出場は3回目で、これまではダブルスで準優勝という成績が最高。シングルスの優勝は初めてだ。ましてや、決勝は後がない状況からの大逆転勝利で、「追い込まれたけど、切り替えられた。ワクワクしていた」と話すように、試合を楽しめたことが結果につながったようす。試合後、初めての囲み取材に応じた山口は、「全員に勝てないと思っていたのでびっくりしたけど、自信になった。夢は日本代表になって、外国での試合に出ること」と、笑顔を見せていた。
3位決定戦では、川﨑が芹澤瑠奈(REGAL)に勝利した。なお、「パラFIDジャパン・チャンピオンリーグ卓球大会2020」は、来年3月6日~7日に今大会と同じ神奈川県立スポーツセンターで開催予定。
(MA SPORTS)