パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2020年2月2日

第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会

無観客開催のなか、男子3階級で日本新記録樹立!

「第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」が1月30日から2日間にわたり、東京・千代田区立スポーツセンターで開催された。男子9階級、女子5階級のうち、男子3階級で日本記録を更新した。なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外選手の参加は見送られ、無観客で実施した。

男子72㎏級を日本新記録で制し、会見に臨む宇城元(写真提供:日本パラ・パワーリフティング連盟/撮影:西岡浩記)

男子72㎏級で宇城が優勝! 2階級の日本記録保持者に

アテネ・ロンドン両パラリンピックに出場している宇城元(順天堂大職員)は、男子72㎏級にエントリー。第1試技で166㎏、第2試技で171㎏を美しく挙げると、最終試技で日本記録を1㎏上回る176㎏に成功し、優勝した。宇城は同80㎏級と合わせて、2階級での日本記録保持者となった。

5カ月間で8キロ減量し、当日の検量では体重71.7キロ。体重に比例して筋量も減少するが、新たに得たコンディショニングの知識と食事管理で身体を作り上げた。左ひじを2度手術するなどケガに苦しみ、またコロナ禍での練習量も減るなかで改めて競技に向き合い、階級変更を決断したという宇城。今後は元の80㎏級に戻す可能性もあるが、「今のところは72㎏級のほうが東京パラリンピック出場に近いと考えている」と展望を明かし、さらなる飛躍を誓った。

成長株の男子59㎏級の光瀬智洋は自己ベストを6㎏更新した
(写真提供:日本パラ・パワーリフティング連盟/撮影:西岡浩記)

男子59㎏級は光瀬、同97㎏級は佐藤が日本記録更新

男子59㎏級は、光瀬智洋(シーズアスリート)が第2試技で137㎏の自己新をマーク。第3試技は失敗したが、特別試技で再挑戦して141㎏を挙げ、戸田雄也(北海道庁)が持つ日本記録を1㎏上回った。この数年は戸田の背中を追いかけ、力をつけてきた27歳。試技後は「やっと壁を越えられた」と感極まった様子を見せた。3月のW杯など東京パラリンピック出場に向けて重要な大会が控えており、「そこで今回の自分をどこまで超えられるか。ランキングを上げていきたい」と、決意を新たにしていた。

同97㎏級は、馬島誠(日本オラクル)が自己ベストとなる161㎏を挙げて優勝した。2年ほど調子を落としていた馬島は、今大会は確実に結果を残すことを優先。154㎏からスタートする控えめな重量設定にこだわり、3試技ともオール白旗判定というパーフェクトな出来に自信を取り戻した様子だった。馬島は今後のIPC指定大会で東京パラリンピック出場に必要なMQS(派遣標準記録)突破を狙っていく。なお、全体の3位に入った佐藤和人(兵庫県警察)が特別試技で165㎏に成功。順位に影響はしないものの馬島が持つ日本記録を塗り替え、「絶対に挙げるぞ、という気持ちで臨んだ。うれしいです」と笑顔を見せていた。

同49㎏級は西崎哲男(乃村工藝社)が136㎏、同54㎏級は市川満典(コロンビアスポーツウェアジャパン)が135㎏、同65㎏級は奥山一輝が147㎏(サイデン化学)、同80㎏級は斉藤伸弘(ワトム)が160㎏、同88㎏級は大堂秀樹(SMBC日興証券)が174㎏、同107㎏級は中辻克仁(日鉄環境プラントソリューションズ)が195㎏でそれぞれ制した。

会見で「応援してくれる人たちの力が復帰への原動力になった。私が諦めてはいけないと強く思った」と語った山本恵理

山本が復帰「もう無理かも、という気持ちが払しょくされた」

女子55㎏級日本記録保持者の山本恵理(日本財団パラリンピックサポートセンター)は61㎏級にエントリー。昨年8月に亜急性甲状腺炎を発症し、現在も「病気と共生している」状況。治療でステロイドを服用しているため体重のコントロールが難しく、今回の復帰戦では階級を上げて臨んだ。記録は第1試技の60㎏に留まり、65㎏を挙げた龍川崇子(EY Japan)に敗れたが、「可能性を感じている。私はもう無理なんじゃないかという気持ちが払しょくされた」と力強くコメントした。同55㎏級は、中村光(日本BS放送)が56㎏を持ち上げた。

同41㎏級は53歳の佐竹三和子(豊島区役所)が自己ベストとなる47㎏を挙げて優勝。この階級の日本記録を保持している成毛美和(APRESIA Systems)は45㎏級で1位に。41㎏級に続く2階級目のMQS突破は逃したが、東京パラリンピック出場への熱い想いをのぞかせた。

18歳の森﨑可林(立命館守山高)は同67㎏級で、自身が持つ日本記録に肉薄する66㎏に成功した。昨秋のチャレンジカップ京都では、失敗を重ねてまさかの失格を経験。大会前は「正直、少し怖いという気持ちが芽生えていた」が、本番ではしっかりと切り替え、結果を残した。「自分が楽しむためにこの競技をやっているという初心に帰って記録を出せた。これからも努力を重ねていきたい」と、最後は笑顔を見せた。

(MA SPORTS)