パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

<<一覧に戻る

2020年3月17日

第7回全国障がい者スノーボード選手権&サポーターズカップ

北京パラ目指す大岩根、市川、小栗が優勝

「第7回全国障がい者スノーボード選手権&サポーターズカップ」が14日、長野県の白馬乗鞍温泉スキー場・若栗ゲレンデで開催された。世界を主戦場に戦うトップ選手と一般選手がともに出場するパラスノーボードの国内唯一の大会で、今回はスノーボードクロスを実施。新型コロナウイルス感染防止の観点から競技時間短縮のため、一人ずつ滑走するタイムレースで行われた。

体格を活かしてダイナミックな滑りを見せた男子上肢障害の大岩根

隻腕スノーボーダー・大岩根が伸びやかな滑りで3度目V

男子上肢障害(UL)は3選手がエントリー。大岩根正隆(ベリサーブ)が2本目でタイムを伸ばして32秒08で制し、3度目の優勝を果たした。右腕を肩から切断している隻腕のスノーボーダー。スタートは板がまっすぐに出せるよう、左手で右側のレバーを掴む工夫をする。片手で引くため、他の選手より出遅れる傾向があるが、その後は左腕と鍛えた体幹でバランスを維持し、この日のレースも身長180㎝・体重75㎏と恵まれた体格を活かして中盤以降はスピードに乗り、レースをコントロールした。

得意種目はバンクドスラロームだが、2月のW杯フィンランド大会ではスノーボードクロスで4位と実力をつけてきている。「細かい課題がいっぱいあるが、今後はクロスでも勝ちにこだわって練習していきたい」と大岩根。北京2022パラリンピックに向けては「両種目で出場を狙いたい」と、力強く語った。

表彰式で笑顔を見せる男子下腿障害の市川(中央)と2位の岡本(左)、3位の小礒孝章

混戦の下腿障害(LL-2)は市川が制す!

後半の3連ローラーから続くカーブで転倒者が続出するなか、白熱したレース展開で会場を沸かせたのが男子下腿障害(LL-2)クラスだ。

市川貴仁(エレマテック)は美しいフォームでミスのない滑りを披露し、1本目は32秒17と好タイムをマーク。次点につけた岡本圭司(サイドウェイ)が2本目に31秒99で逆転すると、最終滑走者の市川が31秒12と再びリード。僅差で勝利する勝負強さを見せた。

昨夏、ジャンプのトレーニング中に着地に失敗して右ひざの軟骨損傷の怪我を負った市川。海外遠征を回避してリハビリと国内での練習に注力する中、同じ練習拠点(新潟・かぐらスキー場)の元木康平プロに指導を受け、とくにカービングを磨いてきた。今回は約1年ぶりの大会出場となったが、そのカービング技術で“魔のカーブ”も難なくクリアして結果を出し、「めちゃくちゃ嬉しい」と笑顔を見せた。

一方、岡本は日本におけるスロープスタイルの第一人者として活躍し、33歳の時に撮影中の事故で下半身まひの障害を負った後、パラスノーボードで競技生活に復帰。2020年1月の北米選手権では転向後の国際大会で初優勝を飾るなど、一つずつ壁を乗り越えてきた。市川ら同じカテゴリーの選手とは普段から互いのパフォーマンスを評価し合い、切磋琢磨する仲。それが自身の原動力のひとつになっているといい、「受傷前は大会前は勝ちたい気持ちでナーバスになることがあった。クロスは怪我をしてから初めて取り組んだけれど、レース前になっても“ここに立てているだけで幸せ”とか、“みんなと競い合えているのがこんなにも嬉しいことなんだ”と思えるようになった」と語る。岡本は開幕まであと1年に迫ったパラリンピックを見据え、「スノーボードができることの幸せをかみしめながら自分のスタイルを追求し、みんなと一緒に目指したい」と話し、前を向いた。

男子大腿障害の小栗は、北京パラに向けて新たな滑りを追求し続ける

今季W杯優勝の小栗「北京は金メダルを狙う」

男子大腿障害(LL-1)は、平昌2018パラリンピック日本代表の小栗大地(三進化学工業)のみのエントリー。大会直前の強化合宿中に右脚の競技用義足が壊れたため、急遽日常用の義足でレースに臨んだ影響もあり、1本目は前半に失速して43秒63、2本目は終盤に転倒して旗門不通過で失格となってしまった。

ただ、この日は精彩を欠いた小栗だが、2月のW杯フィンランド大会では第1戦、第2戦とも優勝するなど結果を残している。平昌パラリンピックのレース終了後すぐに、レギュラースタンスから右脚を前に滑るグーフィースタンスに変えた。後ろ足が健足になることでジャンプも力強さが増し、苦手としていた縦のセクションもキレのある滑りができるようになったことが、W杯での勝利につながったという。

平昌パラリンピックではスノーボードクロスで7位、バンクドスラロームで6位と2種目で入賞を果たした小栗。北京大会の目標は「金メダル獲得」と言い切り、本番に向けてさらなる強化を誓っていた。

(MA SPORTS)