パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2021年5月11日

ボート アジア・オセアニア大陸予選

PR1女子シングルスカルの市川友美が東京パラ代表に内定!

ボートの東京2020オリンピック・パラリンピック出場枠を懸けた「アジア・オセアニア大陸予選」が5月5日から7日の日程で、東京都江東区の海の森水上競技場で開催された。初日は強風の影響で中止となり、日程を2日間に短縮して実施。パラリンピック日本代表には、PR1女子シングルスカルを制した市川友美(湖猿RT)が内定した。

パラリンピック代表内定を決め、報道陣の前でポーズをとる市川

決勝レースの2000mを力強く漕ぎ切った

パラ出場枠を懸けてPR1男女シングルスカルを実施

パラリンピックのボート競技は、オリンピックと同じ直線の全長2000mのコースを使用する。障害の種類や程度に応じて3つのクラスがあり、今大会は体幹が効かないなど障害が比較的重く、上肢と肩のみで漕ぐ選手が1人乗りボートを使用して出場するPR1男女シングルスカルのレースのみを実施した(男子4カ国、女子2カ国が参加)。

5日には、スリランカのスタッフ1人が新型コロナウイルス検査で陽性と判明。6日のPR1シングルスカル予備予選には男子1人、女子1人のスリランカ人選手が参加予定で、検査の結果は陰性だったが棄権し、女子の市川は一人で出場した。その後、6日の再検査でスリランカの2選手はともに陰性が確認され、7日の決勝にそれぞれ出場した。

「今日はまっすぐ漕げたけれど、同じペースで漕ぐという課題はクリアできなかった」と決勝を振り返った市川(右)

市川の予備予選は単独漕に、決勝レースで課題修正

予備予選はペース配分が難しい単独漕となった市川。漕ぎが曲がるなどして、タイムは14分19秒47と伸びなかった。「昨日よりはできることをやろう」と気持ちを切り替えて臨んだ翌日の決勝レースは、スリランカの選手との一騎打ちに。市川はスタート直後からリードを保ち、終始安定した漕ぎで大差をつけて12分51秒40のトップでゴールした。

優勝したことで東京2020パラリンピック日本代表の内定を得た市川。レース後には、「(新型コロナで)こんな状況でどうなるかわからないけれど、東京で開催されるので、応援してくれる家族や友人たちに頑張っている姿を見せられるのはうれしい」と笑顔を見せた。


体幹強化で漕ぎに変化「本番までにさらなる向上を目指す」

市川は33歳の時にスノーボード中の事故で下半身に障害を負い、車いす生活に。2016年に参加したパラリンピック選手発掘プログラムでボートに出会い、競技を始めた。一般のボート競技のように脚を使って漕ぐのではなく、シートを固定し、上半身のみの力で漕ぐため、身長174㎝の市川の腕の長さは武器になる。コツコツと練習を重ね、2018年には世界選手権出場を叶えた。

翌年の世界選手権では14位に沈み、自身の漕ぎを見つめなおした市川は、フィジカルトレーニングの強化に着手。それにより、以前と比べて体幹を使って姿勢を維持できるようになり、「自分でも違いがわかるくらい、漕ぎ方が変わった」と進化を口にする。この1年はメンタルトレーニングにも力を入れ、「前は雰囲気にのまれてスタートで失敗したりしていたけれど、今回のレースではその課題は克服できた」と手ごたえを口にする。初出場となるパラリンピックに向けては、「本番までにどこまで自分を向上させて挑めるかという挑戦だと思っている」と語り、気を引き締めていた。

なお、パラリンピックのボート競技は2008年の北京大会から正式競技として実施されている。東京2020パラリンピックでは、1人乗りのPR1男女シングルスカル、2人乗りのPR2混合ダブルスカル(男女ペア)、4人乗りのPR3混合舵手つきフォア(男女2人ずつ)の4種目を実施する予定だ。

(MA SPORTS)