パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2021年6月7日

Santen IBSA
ブラインドサッカーワールドグランプリ2021 in 品川

日本代表が過去最高の2位! 東京パラに向けて確かな手ごたえ

5月30日から6月5日まで「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ2021 in 品川」が東京・品川区立天王洲公園で開催された。日本は決勝でアルゼンチンと対戦し、0-2で敗れた。アルゼンチンは3連覇を達成した。3位決定戦は、スペインがタイを1-0で下した。

初めて決勝に進出し、準優勝の成績をおさめた日本代表

コロナ対策を徹底し、2年ぶりの開催を実現

ワールドグランプリは国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)公認の国際大会。2018年に3年連続で日本で開催することが関係者間で合意されスタートしたが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった。2年ぶりに開かれた今大会は、日本(世界ランキング12位)、アルゼンチン(同1位)、スペイン(同3位)、タイ(同13位)、フランス(同14位)の5カ国が参加。東京2020パラリンピックの試金石ともいえる大会で、開幕まで3カ月を切った本番に向け、各チームとも成果と課題を確かめた。

なお、今大会は無観客開催とし、ライブ配信で全試合の様子を伝えた。海外から参加する選手たちには、出国15日前よりPCR等による検査実施が義務付けられ、会場でも2段階のゾーンニングで接触人数を制限するなど、徹底した感染症対策が講じられた。

日本代表は決勝で敗れたものの、組織的な守備で世界1位のアルゼンチンを追い込んだ

決勝は守備のミスを突かれ、前半に2失点

5カ国総当たり戦の結果、大会2連覇中のアルゼンチンが3勝1分で1位通過。その強豪と対戦して唯一ドローに持ち込んだ日本代表が2勝2分で続き、初めての決勝進出を決めた。優勝をかけ再戦した決勝では、総当たり戦の4試合と同じく、ゴールキーパーに佐藤大介、フィールドプレーヤーに川村怜、黒田智成、佐々木ロベルト泉、田中章人を起用した。

序盤はアルゼンチンのエース、マキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョを佐々木と田中が身体を寄せてしっかりと抑え込んだ。均衡が崩れたのは前半9分。左サイドのフェンス際でボールを持つエスピニージョへのマークが緩くなった一瞬を突かれて突破を許し、ドリブルで中に切り込まれ失点。同15分にも同様の形で追加点を入れられた。後半は高い位置でプレスをかけ、川村と黒田が果敢にシュートを狙うが得点には至らず。最後の5分間も猛攻をしかけるが、相手の堅守に阻まれ、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

シュートの精度がパラリンピックでの勝利のカギ

日本代表にとって、海外勢との試合は1年半ぶり。今大会は貴重な実戦の場であり、世界トップクラスに対する緻密なデータ戦略、暑さ対策や連戦の戦い方など、パラリンピック本番に向けたシミュレーションができる機会と位置づけて臨んだ。決勝ではプレスとフィニッシュの強化が課題として浮かび上がったが、総当たり戦ではコンパクトで組織的な守備が機能。初戦のフランス戦、2戦目のタイ戦では先制点を挙げて勝利し、格上のスペインとアルゼンチンには引き分けて勝ち点を「8」に伸ばすなど、結果を残した。決勝戦を含む5戦でほぼフル出場で戦い抜いた主力選手の驚異的なスタミナも、科学的トレーニングによる強化の成果といえる。

決勝戦後、オンラインの囲み取材に応じたキャプテンの川村は、「守備面は分析通り。ミスから失点はしたが、相手の強度も含めて想定内で試合ができたと思う」と、手ごたえを口にする。高田敏志監督も「パラリンピック本番につながるような仕掛けを試したかった。日本は走り負けていないことがわかったし、意図的にボールと選手を動かして相手ディフェンスをつぶすことができた。また、攻撃に行く機会で失点しなかったのは評価している」とコメント。今夏の大舞台に向けては、「アルゼンチンと同等かそれ以上の力を持つブラジルや中国も出てくる。メダルの可能性は50%。シュートの精度をもう少し高めていけるように強化していく」と力強く語った。

(MA SPORTS)