第37回全日本視覚障害者柔道大会
階級変更の選手も活躍! 柔道は次のステージへ
国内における視覚障害者柔道の最高峰の大会「第37回全日本視覚障害者柔道大会」が11日、柔道の総本山である講道館で開催された。3年ぶりに有観客での実施となり、多くの観客が見守るなか、東京2020パラリンピック日本代表選手らトップ選手を含む35人が熱戦を繰り広げた。
階級を変更して男子73㎏級に出場した瀬戸。前回大会の81㎏級優勝者で体格に勝る加藤に一本勝ちした
強敵ぞろいの男子73㎏級は瀬戸が制す
視覚障害者柔道は、これまで男子7階級、女子6階級の体重別で行われてきたが、IBSA(国際視覚障害者スポーツ協会)のクラス分けルール変更により、今年1月から全盲と弱視の2つのクラスに分かれ、それぞれ男女別の4つの体重階級で実施されている。ただ、今大会は国内競技者の裾野拡大の狙いもあり、視覚障がいのレベルによるクラス分けをせずに行われた。
東京2020パラリンピック男子66㎏級の銅メダリストで、パリ大会出場を目指す瀬戸勇次郎(福岡教育大)は、階級変更が迫られるなか73㎏級に出場。東京大会の選考で争った藤本聰(徳島視覚支援学校教員)、前回大会の81㎏級を制した加藤裕司(伊藤忠丸紅鉄鋼)、同じく73㎏級で2位だった米田幸弘(住友商事)にそれぞれ一本勝ちして優勝した。右ひじのケガの影響もあって乱取り稽古を再開したのは3週間ほど前で、「この階級の身体がまだ作れていない」と課題を口にする瀬戸。とはいえ、5月の世界選手権(カザフスタン)で優勝するなど結果は残しており、「少し希望が見えた。勢力図が変わりそうなこの階級で、どう戦っていくか考えていきたい」と話し、前を向いた。
男子90㎏級を制した北薗(左)。決勝で東京パラ100㎏級代表の松本を破った
男子90㎏級は北薗が復活のオール一本勝ち
6人がエントリーした男子90㎏級の決勝は、北薗新光(アルケア)が東京2020パラリンピック100㎏級7位の松本義和(アイワ松本治療院)に大内刈りを決めて一本勝ちした。北薗はロンドン大会は100㎏級、リオ大会は73㎏級でパラリンピックに出場し、それ以降は81㎏級を主戦場としていた。この日の体重は78キロ台で「体重が足りなくて苦労した」と苦笑いをするが、「松本選手ら先輩方にどれだけ通用するか挑戦したかった」と思いを明かす。公式戦の出場は2019年以来となったが、美しく豪快な柔道は健在で「これからの私を見てほしい」と話した。
8人がエントリーした60㎏級には、前回大会の73㎏級で優勝した阿部一輝がエントリー。1回戦を小外掛けから寝技への連続技で一本勝ちすると、準決勝では背負投げで前回大会優勝の中谷拓海に勝利して決勝に進出。その決勝では、ベテランの廣瀬誠(名古屋盲学校教員)に敗れたが、存在感を示した。また、4人が出場した90㎏超級は廣瀬悠(SMBC日興証券)が制した。
女子57㎏級は接戦が続いた。優勝は廣瀬(中央)、2位は石井亜弧(左)、3位に工藤が入った
女子は競技人口増加と競技力向上に期待
女子57㎏級は廣瀬順子(SMBC日興証券)が優勝。もともと日本の女子はどの階級も選手層が薄いことが課題だったが、今大会は東京2020パラリンピック52㎏級5位の藤原由衣(モルガン・スタンレー・グループ)、同63㎏級7位の工藤博子(シミックウエル)らを含めて5人がエントリーする状況に一変。廣瀬とゴールデンスコアの接戦を演じた工藤は「一番層が厚い階級になるのでは。その一番上に行けるように頑張りたい」と語り、廣瀬もまた「パリへの道は険しいと思うが、出場を目指して頑張りたい」と、言葉に力を込めた。
70㎏級は、東京2020パラリンピック銅メダリストの小川和紗(伊藤忠丸紅鉄鋼)と、70㎏超級7位の土屋美奈子(シンプレス・ホールディングス)の2人が激突。ともに1勝ずつして迎えた3戦目は、先に小川が大内刈りで技ありを奪ったあと膠着状態になるが、試合時間残り59秒で小川の内股が炸裂して一本勝ち。大会4連覇を果たした。
70㎏超級は西村淳未のみがエントリー。48㎏級の参加者はいなかった。日本視覚障害者柔道連盟のパラリンピック柔道の髙垣治監督は、「階級によって選手層に差があるが、しっかり競わせる環境を我々が提示していきたい」と話した。
(MA SPORTS)