2022WWR車いすラグビー世界選手権
日本代表は銅メダルを獲得!
「2022WWR車いすラグビー世界選手権」が10月10日から16日まで、デンマーク・ヴァイレで開催された。1995年の第1回大会から4年に一度開催されている最高峰の大会で、今大会は世界ランキング上位の12カ国が参加。同1位でディフェンディングチャンピオンの日本代表は連覇を逃したものの、3位決定戦でデンマークに61-57で勝利し、銅メダルを獲得した。
3位決定戦でデンマークに勝利し、銅メダルを獲得した日本代表
進化を遂げる世界の車いすラグビー
パリ2024パラリンピックに向けて、各国ともブラッシュアップしていることがわかる大会だった。とくにトップ8のチームは、昨年の東京2020パラリンピックからさらに実力が拮抗し、今大会も1点を争う白熱した試合が多く展開された。世界ランキング5位のフランスも、予選リーグで過去4度優勝しているアメリカと東京2020パラリンピック金メダルのイギリスに競り勝つなど、存在感を示した。
また、今大会は計13人の女子選手がエントリーしたのも特徴だ。2018年に日本代表に倉橋香衣(0.5F)が加わってから他国も積極的に女子選手を招集するようになった背景がある。今大会はそれぞれのチームで女子選手を積極的に起用しており、倉橋は「そもそも男女混合競技ではあるけれど、やっぱり今大会は女子選手が多くて嬉しい」と笑顔を見せていた。
橋本は試合を重ねるごとに成長した姿を見せた
多彩なラインナップを武器に強豪を撃破
日本代表メンバー12人は東京2020パラリンピックと同じ顔ぶれ。日本の強みは、他国にはない多彩なラインナップで、東京大会から連携の精度を上げて臨んだ。車いすラグビーは、選手の障がいの程度によって、0.5点から3.5点まで0.5点刻みで各選手に持ち点が設定され、コート上の4人の合計が8点以内におさまるように編成しなければならないルールがある。メンバーを固定して戦う海外チームが多いなか、日本はコート上の4人が、比較的障がいが軽いハイポインターと障がいが重いローポインターの「ハイローライン」、選手の持ち点を平均的に組み合わせた「バランスライン」を軸に、状況に応じてメンバーをスイッチしながらバリエーション豊富な攻撃態勢を作り出して戦うことができる。疲労を溜めずにフレッシュな状態で次のプレーにいけるのもメリットだ。
デンマークの厳しいタックルをかわし、トライを決める池
予選リーグ初戦のコロンビア戦では全員が出場。また、接戦となったデンマーク戦はスタートこそ動きに硬さがみられたが、第2ピリオドで逆転に成功。チーム最年少の20歳の橋本勝也(3.5)もスピードを活かしたディフェンスとトライを決め、延長戦の勝利に貢献した。大一番のオーストラリア戦では、強化してきたディフェンスが光り、相手の動きを封じて勝利。準々決勝では、ハイポインターやミッドポインターだけでなく、ローポインターの若山英史(1.0)がトライを決めるなど活躍し、20点差をつけて勝利した。
準決勝で東京パラ銀のアメリカに屈する
だが準決勝では、約3年ぶりの対戦となるアメリカに苦杯をなめた。第1ピリオドは相手のプレッシャーの速さに日本の連携が乱された。パスミスを誘われたり、インバウンドをカットされたりしてターンオーバーを許し、連続失点。この立ち上がりのミスが影響し、空回りした状態からなかなか抜けだせない日本。時間を使って攻撃の形を作っても、アメリカの鉄壁のキーディフェンスを崩せず、トライのチャンスを奪われるという悪循環が続いた。日本は終盤に猛追するが点差は縮まらず、52-57で敗れた。
失意から一夜明けた最終日。日本は3位決定戦で再びデンマークと対戦。地元の大応援団の声援が会場中に響く“アウェー”だったが、しっかりと気持ちを切り替え臨み、序盤から試合の主導権を握る。一つひとつのプレーを丁寧に実行し、また要所でベンチの仲間やスタッフから鼓舞する声が飛び、チーム一丸となって最後まで闘い抜いた。
キャプテンの池は試合後、「今日はチームの力を試合で出せた。いいラグビーができたと思う」とコメント。また、各国のレベルが向上していることに触れ、「この競技はきっとさらに発展していく。そのなかで自分たちを高めていくには苦しさも伴うと思うが、自分自身に対する可能性をもっと高いところで持とうと思わせてくれる大会だった」と振り返り、さらなる飛躍を誓った。
また、決勝はオーストラリアがアメリカを58-55で下し、2大会ぶりの優勝を果たした。大会MVPには、231トライを決めたオーストラリアのライリー・バット(3.5)が選ばれた。
(MA SPORTS)