ヒューリック・ダイハツ BWF パラバドミントン世界選手権2022
日本勢は金3、銀2、銅5の計10個のメダルを獲得
「ヒューリック・ダイハツ BWF パラバドミントン世界選手権2022」が1日から6日まで、国立代々木競技場第一体育館で開催された。世界選手権は2年に一度行われる最高峰の大会で、今回が日本初開催。49の国・地域から、総勢250人以上の選手が参加し、頂点を争った。日本からは15人が13種目に参加し、金3、銀2、銅5の計10個のメダルを獲得した。
里見は女子シングルスで2連覇達成。山崎と組む女子ダブルスでは初優勝を果たした
女子WH1の里見が単複二冠の快挙達成!
女子シングルスでは、車いすWH1の里見紗李奈(NTT都市開発)が決勝でシンシア・マセズ(スイス)を21-9、21-10で下し、初優勝を果たした。開幕前日の公開練習時には「この1年でレベルアップしたという自信がある」と話していた里見。その言葉のとおり、予選リーグから決勝まで5試合すべてでストレート勝利と、存在感を示した。同WH2で銅メダルを獲得した山崎悠麻(同)とペアを組む女子ダブルス(WH1-WH2)でも頂点に立ち、東京2020パラリンピックに続いて単複二冠を達成した。
今大会は強敵のタイや中国の選手が参加せず、「勝たなければいけない」というプレッシャーと戦っていたという里見。安堵の表情を浮かべつつ、来季に向けて「全体的に底上げしていきたい」と語った。
上肢障がいSU5は、準決勝で亀山楓(高速)との日本人対決を制した豊田まみ子(ヨネックス)が準優勝。5度目の出場で、2大会ぶりの表彰台に立った。東京2020パラリンピック出場を逃したが気持ちを切り替え、「次のパリ大会へのステップ」と捉えて挑んだ大舞台。「気持ちの面で安定して臨めたのは自信になった。来季に生かしたい」と話し、前を向いた。また、下肢障がいSL4の今季世界ランキング1位の藤野遼(GA technologies)も銀メダルを獲得。全5試合中、決勝を含む4試合がフルゲームとタフな大会となったが、フィジカルトレーニングやフットワーク強化の成果もあり、最後まで戦い抜いた。
優勝を決めた瞬間、ガッツポーズを作った梶原
男子はWH2の梶原が世界選手権初V!
男子シングルス決勝は、車いすWH2の梶原大暉(日体大)が東京2020パラリンピックでも頂点を争った金正俊(韓国)を21-12、21-11で退け、初優勝を飾った。第1ゲームは互いに点を取り合う展開となるが、7-7から梶原が9連続得点で突き放し、第2ゲームもコートのライン際に精度の高いショットを決め、相手を追い込んだ。
金の大会5連覇を阻止し、世界王者のタイトルを手にした梶原は、「うれしい、ほっとした」と率直な想いを口にする。今季は8月のタイ国際まで7戦負けなしで、世界ランキングは堂々の1位。その裏では「いつ負けるか不安な日々が続いていた」と、プレッシャーと戦っていたことを明かした。パリ2024パラリンピックに向けては、「ちょっと自信がついた。強くなることだけを考えて、やっていきたい」と、言葉に力を込めた。
車いすWH1の西村啓汰は、初出場ながら予選リーグを全勝で勝ち上がり、決勝トーナメント1回戦もストレート勝ち。準々決勝では、ヨーロッパチャンピオンで過去に単複で4度優勝を果たしているベテランのトーマス・ワンドシュナイダー(ドイツ)にフルゲームの激闘の末に勝利するなど、大躍進を遂げた。西村は「(準決勝で敗退し)メダルはうれしいけれど、プラスアルファの強みを身につけないといけないと分かった」と冷静に振り返り、さらなる成長を誓っていた。
上肢障がいSU5の今井大湧(ダイハツ工業)は、2大会ぶりの銅メダルを獲得。また、下肢障がいSL3の藤原大輔(同)も3位に入った。
日本代表は地元開催の世界選手権で10個のメダルを獲得した
東京大会のレガシーとパリ大会に向けて
今大会は、本来は昨年のパラリンピック後に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年に延期された。会場はパラリンピックと同じで、1年前は叶わなかった有観客で実施された。「東京大会のレガシーとして重要な意味がある」と、日本パラバドミントン連盟の平野一美理事長。一般の観客のほか、都内の小・中・特別支援学校から約3200人の児童・生徒が観戦に訪れ、大会初日から大きな声援を送り、選手らは応援の力を実感した様子だった。
世界選手権は世界ツアーの12大会のうち、もっともグレードが高い最高峰の大会だ。今大会で獲得するポイントはパリ2024パラリンピックの出場権に直接影響はしないものの、来年2月にスタートする選考レースでシード権を得るための第一歩になる。来季は今大会の出場を見送った強豪の中国や海外の一部トップ選手の参戦が予想される。また、各国で強化が進んで10代の若い選手や南米の選手も力をつけており、各クラスとも競技力は年々向上している。その勢力図に日本はどこまで食い込めるか。今後の取り組みに注目が集まる。
(MA SPORTS)