第1回 パラアイスホッケー日韓交流戦
日本代表が3連敗から得た収穫と課題
「第1回 パラアイスホッケー日韓交流戦」が15日から3日間にわたり、北海道札幌市の真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開かれ、世界ランキング11位の日本代表と同3位の韓国代表による3試合が行われた(世界ランキングは2022年12月13日付)。日本代表は、第1試合は1-2、第2試合は2-4、第3試合は1-2で敗れ、勝利はならなかったが、来年に予定されている世界選手権(Bプール)に向け、現在の力を試す貴重な実戦機会となった。
大会を終え、集合写真で笑顔を見せる日本代表と韓国代表の選手・スタッフたち
第1試合は石川のゴールで先制も逆転負け
日本代表は11月に韓国遠征を行い、北京2022パラリンピック出場をかけた昨年の最終予選大会以来、約1年ぶりとなる公式戦を経験。帰国後は強化合宿を実施し、格上との戦いで得た課題修正に取り組み、今大会に臨んだ。
15日の開幕戦は、序盤から守備を固めて相手の動きを封じる日本。第2ピリオドにFW石川雄大(東京アイスバーンズ)が先制ゴールを決め、その後も試合のペースを握って展開していく。しかし、第3ピリオドに同点に追いつかれると、わずかな守備の乱れを突かれてカウンターを許し、韓国のエースであるFWチョン・スンファンに逆転弾を決められた。
追い上げを見せるも勝ち切れず
16日の第2試合は、第1試合よりも速いタイミングでプレッシャーをかけてくる相手に対し、日本は攻撃のリズムをつかみ切れず、第2ピリオド終了時で0-3と追いかける展開に。第3ピリオド後半に、今大会はDF登録の塩谷吉寛(長野サンダーバーズ)がゴールを決めて1点を返す。その後、勝利をつかむためにゴールキーパーをベンチに戻し、プレーヤー6人による総攻撃を見せるが、相手にパックを奪われ、エンプティネットゴールを献上してしまう。試合終了の16秒前には新津和良(長野サンダーバーズ)が得点するが、追いつくことはできなかった。
キャプテンの熊谷はプレーでチームを引っ張った
17日の第3試合は、1点ビハインドの状況から、第1ピリオド終了間際にFW伊藤樹(ロスパーダ関西)からパスを受け取ったDF熊谷昌治(長野サンダーバーズ)がパックをゴール前に持ち込み、左手から右手へ巻き込むように動いでシュートを決め、同点に。しかし、第2ピリオドに韓国に2点目を許し、これが決勝点となって敗れた。
大会を通して、守り先行から攻撃へと転じるスタイルで世界3位の強豪を相手に得点のチャンスを作った日本代表。だが、シュートスピードと決定力の差がスコアに表れた。今季、キャプテンを務める熊谷は「ドリブル、突破力、パスの精度など、まだまだ足りない。もっと個のスキルを高めて、チーム力向上につなげていかなければ」と、悔しさをにじませた。
新チームで目指す次のステップ
日本は、長年チームをけん引してきた須藤悟(北海道ベアーズ)、吉川守(長野サンダーバーズ)らベテラン選手が昨季限りで代表を引退。現在は、ミラノ・コルティナダンペッツォ2026パラリンピックに向けて立ち上げた新チームで強化を進めている。11月の韓国遠征と今大会は、10代の選手や比較的キャリアの浅い選手も登録メンバーに名を連ねた。
次世代エースとして成長が期待される伊藤
中学生で代表入りした伊藤は17歳になり、第1セットのセンターフォワードを任されるまで成長した。ただ、今大会は攻守で存在感を見せたが、得点には絡めなかった。伊藤は、「自分へのマークを振り切るスピードが足りなかった。チームとしてもフィニッシュまでいけない。連携の精度を上げていきたい」と話した。
また、アスリート発掘事業の「J-STARプロジェクト」出身(3期生)のFW金子幹央(東京アイスバーンズ)は第1セットの右ウイングに起用され、スピードを活かしたフォアチェックで幾度と相手の動きを止めた。「格上チームと対戦し、学ぶことが多かった。まだ力不足だけど、J-STARプロジェクトの後輩たちが『アイスホッケーって格好いい』と思ってもらえるようなプレーを追求していきたい」と語り、前を向いた。
日本代表の信田憲司ヘッドコーチは大会を振り返り、「若手選手は3試合走り切れるスタミナ強化が必要だが、成長も感じられた。これから気持ちをひとつにし、次のパラリンピックに向けて『勝ち続けるチーム』を作っていく」とコメント。日韓交流戦については、韓国のキム・テホヘッドコーチも「今後も互いに行き来して試合をしたい」と話しており、日本パラアイスホッケー協会は「第2回、第3回大会の開催を実現させて、強化につなげていきたい」としている。
(MA SPORTS)