パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2023年3月29日

CO・OP 2023FISパラ・ノルディックスキー
アジアカップ札幌大会 ~ウクライナ特別招待・親善大会~

4年ぶりの国際大会にウクライナも招待

「CO・OP 2023FISパラ・ノルディックスキーアジアカップ札幌大会 ~ウクライナ特別招待・親善大会~」が18日から21日まで、北海道札幌市の白旗山競技場で開催された。日本開催の国際大会は4年ぶりで、日本、韓国、モンゴル、カザフスタンの4カ国に加え、日本障害者スキー連盟が招待したウクライナが参加し、5カ国の約40人が熱戦を繰り広げた。

今季W杯で総合優勝の川除。今大会は5㎞クラシカルで優勝した

今季W杯総合優勝の川除が存在感

初日の18日に行われた5㎞クラシカルは、立位、視覚障害、座位の3クラスの選手が一緒に走りトップを競うコンバインドで実施。男子は、今季ワールドカップ(W杯)で初の総合優勝を果たした立位の川除大輝(日本大/日立ソリューソンズJSC)が、新田佳浩(日立ソリューソンズ)に6秒差をつけて優勝を果たした。

川除は、今季第1戦目となる昨年12月のW杯(フィンランド)5㎞クラシカルで優勝。1月の世界選手権(スウェーデン)では18㎞クラシカルで2位の成績をおさめた。続いて今月アメリカで開催されたW杯では、5㎞と20㎞のフリーでそれぞれ金メダルを獲得し、スプリント・クラシカルでも2位に入るなど好調を維持。この日のレースもその勢いのまま、スタート直後から最後までスピードに乗った。「今季はスプリントでも力が出せるようになった。(20㎞クラシカルで金メダルを獲得した)北京パラリンピック前から取り組んでいた体幹強化を夏も継続したことが、きつい登り坂や後半も動ける身体につながっていると思う」と、分析する。

4月から社会人になり、ますますの活躍が期待される川除。「さらに結果を出し、みなさんに良い報告ができるように頑張りたい」と話し、前を向いた。

スプリント1㎞クラシカルで力走する新田

レジェンド新田はすべての種目で表彰台

2日目のスプリント1㎞クラシカルは、男女、すべてのカテゴリーを統合したオールコンバインドで実施された。予選の上位12人が準決勝に進出し、上位6人で決勝を争う形式。コースコンディションが刻一刻と変化していくなかで、座位のバル・パヴロ(ウクライナ)が力強い走りで優勝を果たすと、後続はバックストレートからデッドヒートとなり、立位の新田が川除を逆転して2位に。3位には座位のシン・ウィヒョン(韓国)が入った。

最終日の10㎞フリーは日本からガイドを含み13人が出場。男子立位は川除が2位、新田が3位でフィニッシュし、男子視覚障害は有安諒平(東急イーライフデザイン/杏林大)が藤田佑平ガイド(スポーツフィールド)と出場し、銅メダルを獲得した。女子立位は、出来島桃子(新発田市役所)が4位、岩本美歌(北海道エネルギーパラスキーチーム/青森大)が5位だった。

42歳の新田は、3つのレースすべてで表彰台に乗る活躍を見せた。昨季限りで第一線から退くことを考えていたが、川除ら後輩たちから「一緒にやりましょう」と言われ、現役続行を決意。今年は後輩にアドバイスする立場も担いながら、世界で戦っている。「年齢を重ね、ピークの期間を維持するのは難しくなってきた」と新田。「でも、選手をやると決めたからには努力と勝利への意欲を持ち続けなければならない。来季に向けてどうすれば強くなれるのか試すなかで、3レースとも表彰台に乗れたのは、次につながる」と、力強く語った。

ウクライナ勢は「招待に心から感謝」

今大会には、生活も競技活動も制限されているウクライナチームが参加。日本障害者スキー連盟が北京パラリンピック期間中から寄付を募り、集まった支援金を活用して選手14人とスタッフ4人を招待した。

女子はウクライナ勢が席巻した

女子立位の5㎞クラシカルと10㎞フリーは表彰台を独占するなど、強豪の実力を発揮。優勝したリュドミラ・リヤシェンコは、「日本に招待してもらい、感謝している。パフォーマンスに満足している」と話し、笑顔を見せた。また、北京パラリンピックバイアスロンの金メダリストであるグリゴリー・ボウチンスキーは、「日本のトップ選手と戦えて光栄に思う」と語り、「早くこの戦争をとめたい。『戦うなら、スポーツで戦いましょう』と言いたい」と、メッセージを送った。

夏季競技にも挑戦している佐藤圭一(セールスフォース・ジャパン)は、オーストラリアで開催されるトライアスロンの大会に出場する選択肢もあったが、ウクライナの支援を重視して今大会にエントリーした。「グリゴリーは普段からやりとりする仲。今、彼らが厳しい環境のなかで生活していることも、スポーツできることが当たり前ではないことも知っている。今回は一緒にレースをして、楽しんでもらいたかった」と言葉に力を込め、レース後は国の垣根を超えて互いの健闘をたたえ合っていた。

(MA SPORTS)