WPA公認第34回日本パラ陸上競技選手権大会
好記録続出! 世界選手権出場を懸けた白熱の戦い
7月のパリ2023世界パラ陸上競技選手権大会の日本代表選考競技会を兼ねた「WPA公認第34回日本パラ陸上競技選手権大会」が4月29日から2日間にわたり、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開催された。世界選手権の参加標準記録、また日本パラ陸上競技連盟(JPA)が定める派遣標準記録を突破する最後のチャンスとなり、各種目で激戦が繰り広げられた。
身長182センチの体格を活かし、大きな走りを見せる福永
T13の福永・川上がアジア新記録樹立!
アジア新記録が誕生した4種目のうち、視覚障がいT13の男子2種目は世界の上位記録に食い込むパフォーマンスが注目を集めた。
男子400mを制したのは、福永凌太(中京大クラブ)。従来のアジア記録を2秒近く更新する48秒34をマークした。これは東京2020パラリンピック(以下、東京2020大会)では銅メダルに相当する記録で、「前半からスピードを出して上げていく展開を意識した」と福永。また、福永は男子走幅跳で自身が持つ日本記録を塗り替える6m90で優勝し、今大会はエントリーしなかった男子100mを含め、3種目で世界選手権の日本代表に選ばれた。
そして、同男子100m決勝は、川上秀太(アスピカ)が10秒98で優勝。2週間前の愛知パラ陸上で出した10秒81(この大会ではアジア新記録は非公認)には届かなかったものの、アジア記録の快走を見せ、「確実に10秒台を出せる感覚を掴めた」と、自信をのぞかせた。また、同男子200mは日本記録となる22秒22で制した。川上は、男子100mで世界選手権日本代表に選出。東京2020大会では6着までの選手が10秒台で走っており、世界選手権ではさらに熾烈な争いが繰り広げられることが予想されるなか、日本人選手がどこまで存在感を示せるか、楽しみだ。
小野寺は好記録を連発。初の世界選手権に挑む
新星・小野寺、近藤らが初の世界選手権へ
次世代選手発掘事業「J-STARプロジェクト」4期生で、2021年のアジアユースパラ競技大会では脳原性まひ・車いす(T34)の女子100mで金メダルを獲得した19歳の小野寺萌恵(あすなろ屋羽場店)は、同女子100m、400m、800mの3種目で優勝を果たした。大会後の選考会で100mと800mの世界選手権代表に選ばれた小野寺は今後、国際クラス分けを受けたのち、初の世界の大舞台に挑む。
冬季の北京2022パラリンピックで3冠を達成したアルペンスキーの女王・村岡桃佳(トヨタ自動車)は、パリ2024パラリンピックまでは陸上に専念。今大会は車いす(T54)の女子100mと400mで優勝した。また、上肢障がい(T47)の辻沙絵(日体大)は、得意の女子400mを59秒09の大会新記録で制した。
大腿義足(T63)の男子100mは、22歳の新星・近藤元(摂南大)が13秒56で1着。この種目のアジア記録保持者である山本篤(新日本住設)を破って頂点に立った近藤は、「チャンピオンの篤さんに勝てて、素直に嬉しく思う」と笑顔を見せた。男子走幅跳は山本が6mを跳び優勝。近藤は5m91で2位に入り、ともに走幅跳で世界選手権への切符を手にした。近藤は今後、国際クラス分けを受検する予定だ。
下腿義足(T64)の短距離は、男子100mの日本記録を持つ井谷俊介(SMBC日興証券)と男子200mの日本記録を持つ大島健吾(名古屋学院大AC)のライバル対決を多くの人が見守った。2種目とも双方が大会新記録を出す僅差の展開となったレースを制したのは、井谷。惜しくも世界選手権の派遣標準記録は突破できなかったが、井谷は「充実したレースができた」と胸を張った。
男子やり投は、若生が日本新のビッグスロー
視覚障がい(F12)の男子やり投は、若生裕太(電通デジタル)が5投目に日本新記録となる60m03を投げて優勝した。東京2020大会の出場を逃し、挫折した悔しさを糧に、昨年は地道に投げのイメージを作って再現性を高める努力をしてきたという若生。元高校球児で2018年にパラ陸上に転向して以来、初となる世界選手権出場を叶え、「もっと底上げをして、世界で戦える選手を目指したい」と、前を向いた。
今季2度目の60mの大台に乗る記録を出した若生
また、上肢障がい(F46)の男子やり投は、東京2020大会7位の山崎晃裕(順天堂大職員)が58m37をマークし、派遣標準記録を突破。日本記録保持者の高橋峻也(トヨタ自動車)や東京2020大会6位の白砂匠庸(あいおいニッセイ)を抑えて優勝を果たした。世界選手権日本代表には山崎と高橋が選出された。
上肢障がい(F46)の女子砲丸投は、世界記録保持者の齋藤由希子(SMBC日興証券)が存在感を発揮。昨年3月の出産を経て、競技復帰してから今回で4大会目。体力や筋力を戻している段階ながら順調に記録を伸ばし、この日は11m52をマークした。この種目は東京2020大会では実施されなかったが、パリ大会では採用され、齋藤は一躍金メダル候補に。「過去の自分に勝たないとパリでの金メダルは厳しい。今は自分の記録更新を狙っていく」と冷静に話し、まずは世界選手権での活躍を誓った。
JPAは5月12日に世界選手権に派遣する日本代表選手を発表。男子25人、女子13人の計38人が選ばれた。各選手の最終エントリー種目は、後日発表される。
(MA SPORTS)