第19回ナブテスコ日本車いすカーリング選手権大会
チーム長野が2年ぶり日本一!
「第19回ナブテスコ日本車いすカーリング選手権大会」が5月19日から3日間にわたり、長野県の軽井沢アイスパークで開催された。大会は、予選を全勝で勝ち上がったチーム長野が決勝戦でKiT CURLING CLUBを10-7で下し、2年ぶりに優勝を果たした。3位にはease埼玉が入った。
ビハインドな状況でも冷静に指示を出していたチーム長野のスキップ・和智
予選リーグからハイレベルな戦い
今大会は本州と北海道のブロック選考会を勝ち抜いた、ease埼玉、チーム長野、青森チェア、札幌アイズアップ、チーム妹背牛、今季の世界選手権日本代表のKiT CURLING CLUB の6チームがエントリー。そのうち、札幌アイズアップが出場をキャンセルしたため不戦敗となり、5チームで予選リーグを実施した。
車いすカーリングはスウィーピングが禁止されており、刻一刻と変化する氷のコンディションを読み、狙ったところに正確にストーンを投げる技術が求められる。一般のカーリングではスウィーピングの力が大きいカムアラウンド(ガードストーンの後ろへまわりこんで止めるドローショット)も、車いすカーリングでは投げ手のさじ加減ひとつという難しさがあるが、今大会は予選リーグ序盤からこのスーパーショットが随所にみられ、クラブチーム日本一を懸けた最高峰の大会にふさわしいハイレベルな戦いが繰り広げられた。
ease埼玉はミスが響き、悔しい3位
準決勝は予選リーグ4勝1敗で2位通過のKiT CURLING CLUBと、3勝2敗で3位通過のease埼玉が決勝進出をかけて対戦。前半は2度のスチールを決めたease埼玉が3-2とリードする。迎えた第5エンドの終盤、スキップの中島洋治がダブルテイクアウトに成功するが、自身のストーンもハウスの外に出てしまう。ハウス内には相手のストーンが2個残り、中島はラスト一投で起死回生を狙うが、惜しくも当たらず。最後はKiT CURLING CLUBのスキップ・坂田谷隆にドローショットを入れられて3得点を許した。第6エンドはease埼玉が2点を返して同点とするが、第7エンドで再び3点を献上。第8エンドは粘りを見せるものの追い込まれ、2投を残して負けを認める「コンシード」を出した。
パラリンピック出場経験があるease埼玉の中島
ease埼玉の中島は「第5エンドで自分の投げたストーンが残っていれば、もっといい条件で攻められた。最後の一投も、相手のストーンは狙いやすい場所にあったのに、当てらなかった。それが試合に響いた」と、唇を噛んだ。ただ、今回はパラ水泳の選手でもあるリードの花岡恵梨香が初出場ながら活躍し、またチームには中学生も新加入するなど明るい話題もある。セカンドの櫻井雄太は「バンクーバー2010パラリンピック経験者が2人いて(中島とサードの小川亜希)、僕らも指導を受けている。伸びしろのあるチームだと思うし、今回の悔しい経験を来年に生かしたい」と語り、前を向いた。
チーム長野が高いアイスリーディング力と粘り強さを発揮
準決勝を制したKiT CURLING CLUBを決勝戦で待ち構えるのは、不戦勝を除く予選リーグの全試合でコンシード勝ちをおさめたチーム長野だ。決勝戦の前半はスキップ・坂田谷の氷の読みが冴え、第3・4エンドに連続スチールするなどして優位な形で後半につなげた。
だが、ここからチーム長野の反撃が始まる。「後半は氷が重くなる」とアイスコンディションをチームで共有し、前半に苦しんでいたドローショットが決まりだすと、第5エンドで2点を入れて1点差に詰め寄る。第6エンドにはフォースの飯島秀一がセンターライン上に縦に並ぶ自軍のナンバー1、2をほぼ隠すようにハウス前にガードをぴたりと配置するなど、勝負強さを発揮。KiT CURLING CLUBの坂田谷のラストショットは、どのストーンにも当たらないスルーとなり、チーム長野が2点をスチールし、逆転した。
第7エンドはKiT CURLING CLUBが3点を追加して再逆転するが、第8エンドは両チームとも残り時間が少ない状態に。そこで、より持ち時間が短い先攻のKiT CURLING CLUBは、最初の3投は意図的にスルーを選択。対して、チーム長野は急ぐなかでもガードの裏にドローショットを投げ続ける対照的な戦略を取り、結果的に5得点のビッグエンドとした。
決勝を終え、互いの健闘を称え握手する両チーム
見事、逆転優勝を果たし、昨年2位の雪辱を遂げたチーム長野。司令塔としてチームをけん引した和智浩は、「ひやひやしたけれど、勝ててよかった」と笑顔を見せ、「飯島選手がミックスダブルスの世界選手権に出場し、チーム内の競争が高まっているので全体的にレベルアップしていると思う。これで満足せず、もっと切磋琢磨して上を狙いたい」と、力強く話した。敗れたKiT CURLING CLUBの坂田谷は、「競っていた分、時間を使ってしまい、最後にミスをしてしまった。時間管理は今後の課題」と語った。
(MA SPORTS)