2023第1回全日本車いすフェンシング選手権大会
記念すべき第1回大会開催! 男女混合フルーレ個人戦を実施
「2023第1回全日本車いすフェンシング選手権大会」が7月30日、東京都の北区赤羽体育館で開催された。今大会は男女混合のフルーレ個人戦を行い、日本パラフェンシング協会(JPFA)の強化選手7人、育成選手10人が頂点を争った。
粘り強い攻撃で笹島を下し、優勝を果たした加納
実力者同士の決勝は、接戦を加納が制す!
JPFAは2022年3月に設立。同年8月にはオープン枠を設けた国内大会を4年ぶりに開いた。その流れを経て、今大会は男女混合、またカテゴリーも混合(表彰はカテゴリーごと)ながら、“初めての日本選手権”という位置づけで開催に至った。試合は、1回戦は4つのグループに分けたプール戦、2回戦以降はトーナメント戦を実施した。
そのプール戦をそれぞれ全勝とし、トーナメントでも実力を見せつけ決勝に駒を進めたのは、東京2020パラリンピック日本代表の加納慎太郎(ヤフー/カテゴリーA)と笹島貴明(IIJ/カテゴリーA)。日頃からともに練習を重ね、互いに手の内を知るだけに序盤から接戦に。そして、10-10の同点の場面で加納が鋭い突きを決めてリードを奪うと、そこから連続得点に成功。加納が15-10で笹島を破り、優勝を果たした。
加納は「笹島選手のインテリジェンスなフェンシングに対して、粘り強く、泥臭く、自分らしく戦えた」と大一番を振り返り、「観ている人が楽しんでくれる試合ができたと思う」と笑顔を見せた。
奮闘の藤田「若い選手が増えるのは嬉しい」
東京2020パラリンピック日本代表の藤田道宣(GO)は、本来はもっとも障がいが重いカテゴリーCの選手だが、パラリンピックでは実施されないため、普段からカテゴリーBにエントリーして戦っている。今大会はプール戦および準々決勝ではカテゴリーAの選手に勝利するなど存在感を発揮。準決勝で笹島に敗れたものの、カテゴリーBでは1位を獲得した。
藤田(右)はカテゴリーBの選手のなかで唯一ベスト4に進出した
ベスト8をかけた試合では、小学5年の川村凛久(川口市立幸町小学校)に15-1と完勝。小学1年で車いすフェンシングに出会い、小学4年からコーチの指導を受けているという川村は、本格的な試合は今回が初めてだといい、前日にクラス分けを受けて、カテゴリーCとなった。藤田は「小学生など若い選手が増えるのはすごく嬉しいし、頑張ってほしい」とエールを胸に抱きながら、「真剣勝負が彼の一番の練習になる」と、最後まで“本気モード”で戦う姿勢を示した。川村は、「いろんな人と戦ったり、突くのが決まったりするのが楽しい。これからたくさん試合に出て、1位を獲りたい」と話し、前を向いていた。
なお、昨年のW杯ワルシャワ大会で藤田は、「話題になれば」とあえてカテゴリーCにエントリーし、フルーレとエペの2種目で金メダルを獲得している。かつて、「僕のように(頸椎損傷で)障がいが重くても、車いすフェンシングが出来ることをアピールしたい」と話していた藤田。「競技人口が増えて、全日本でもいつか男女別、カテゴリー別に試合が成立することを願って、これからも活動していきたい」と、言葉に力を込めた。
育成選手はトップ選手との対戦を飛躍のきっかけに
川村を含め、競技歴の浅い選手にとって強化選手と試合で剣を交える貴重な機会になった今大会。未来のトップアスリートを発掘する「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト(J-STARプロジェクト)」6期生の木村美貴(PAL/カテゴリーA)も、本格的な試合は今大会が初めて。プール戦で藤田、またトーナメント戦で松本美恵子(多摩総合医療センター/カテゴリーA)と、ふたりのパラリンピアンと対戦し、いずれも敗れたが、「ふたりの剣のスピードが速いのはもちろん、すごく落ち着いてプレーしているのが印象に残った。私も冷静に対応できるようになりたい」と話し、大いに刺激を受けた様子だった。
「できる、と自分を鼓舞して戦っています」と話す木村
脳内出血の後遺症で右半身麻痺になった木村。2019年に作業療法士を通して車いすフェンシングを知り、片麻痺でも車いすを固定して戦えることなどに関心を持った。現在、木村は左手で剣を持ち、右手は車いすのフレームを握れないため、体幹で上半身をコントロールして戦う。憧れの選手は、義手を着けてプレーし、強い体幹で身体を前傾させて鋭く剣を裁くパラリンピック金メダリストのベアトリーチェ・ヴィオ(イタリア/カテゴリーB)だ。木村は、「ロサンゼルス2028パラリンピック出場が目標。その夢のために、今後は国際大会で経験を積みたいので、そこに向けてトレーニングを頑張っていく」と、力強く語った。
(MA SPORTS)