パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2023年9月22日

木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2023

男子に続き、女子大会も車いすテニスの部を新設!

WTA(女子テニス協会)ツアー公式戦「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2023」に車いすテニスの部が新設され、記念すべき第1回のトーナメントが大阪市のITC靭テニスセンターで15日から3日間にわたって行われた。8人の日本人選手がエントリーし、トーナメントディレクター(TD)を今年1月に現役を引退した国枝慎吾氏が務めた。

シングルスで優勝を果たし、初代女王に輝いた上地

シングルス初代チャンピオンは上地!

直前の全米オープン女子シングルスで準優勝した上地結衣(三井住友銀行)、田中愛美(長谷工コーポレーション)、船水梓緒里(ヤフー)、佐々木千依、須田恵美(DC1)、深山知美、ワイルドカードの佐原春香(浦安ジュニア車いすテニスクラブ)、岡あずさがエントリーした今大会。

シングルス決勝は、準決勝で須田を破った上地と、船水を破った田中のカードに。一般の決勝に続いてセンターコートで行われ、大勢の観客が熱戦を見守るなか、試合は先にブレークに成功した上地が主導権を握る展開に。田中もラリーに持ち込み応戦するが、丁寧な配球でスペースを作り、リターンエースでもポイントを重ねた上地が6-1、6-2で勝利した。上地は「地元関西の大会で、知り合いもたくさん応援に来てくれた。すごく楽しい3日間だった」と笑顔で振り返った。

ワイルドカードで出場した19歳の岡は、1回戦で上地と初対戦。完敗したものの、「プロのすごさを感じた。すごく勉強になった」と、興奮気味に語る。また、20歳の佐原はロッカールームや食堂で一般のプロ選手と一緒になった場面を振り返り、「アップの仕方や食べるものを見ていた。車いすの選手とはまた違う、試合前のコンディションづくりだった」と話し、普段は接点がないトップアスリートの姿に刺激を受けた様子だった。

ダブルスは船水・田中組が制す!

息の合ったプレーで船水(左)・田中組がダブルスを制した

ダブルスは第1シードの船水・田中組と、第2シードの上地・佐々木組が準決勝をそれぞれストレートで勝ち上がり、決勝で激突。第1セットは第3ゲームで上地・佐々木組がブレークするが、船水・田中組がすぐにブレークバック。流れを掴み、6-2とした。第2セットも上地・佐々木組が2ゲームを先取するが、船水・田中組が次第に連携の精度を上げて逆転し、6-4で勝ち切った。

今大会のダブルスは、40-40から次の1ポイントでゲームが決まるノーアドバンテージ方式を採用。第2セットの終盤までに4度のジュースのうち、上地・佐々木組が3度ポイントを取るなど勝負強さを発揮したが、船水・田中組は優勝に王手をかけた第10ゲームのチャンピオンシップポイントで40-40からブレークを果たし、会場を大いに沸かせた。田中は「ここで絶対に取る、という意識の共有ができていた。ふたりで集中力を上げていけたことが、ストレート勝利につながった」と振り返った。

また、船水は「センターコートで観客に観てもらってプレーすることはあまりないので緊張した。今回は先輩や大学時代の同期らが観に来てくれた。WTAと同時開催ということで、車いすテニスのプレーをより多くの人に観てもらうきっかけになったと思う」とコメント。実際に、観客からは「初めて生で観たけれど、車いすであんなに速く動けることに驚いた」「来年、ぜひまた観戦したい」といった声が聞かれ、車いすテニスに関心を示す人が多かった。

国枝TD「車いすテニスを広める機会に」

トーナメントディレクターを務めた国枝氏

WTAの大会で車いすテニスの部が同時開催されるのは国内初。ATP(男子プロテニス協会)公認大会である男子大会は2019年から車いすテニスの部が実施されており、それに追随する形で実現に至った。国枝TDは現役時代、男子大会において長年にわたって車いすテニスの部の新設を日本テニス協会に掛け合い、また海外選手にも積極的に声をかけ、開催実現と成功に導いた立役者でもある。昨年の小田凱人(東海理化)との激戦は、目の肥えたテニスファンをも虜にし、国内における車いすテニスの認知度を一層向上させた。そうした自身の経験からも、このジャパンオープンは「車いすテニスをプロモートする一番の機会である」と、実感していたという。

車いすテニスツアーはITF(国際テニス連盟)の管轄であり、ATP・WTAとの同時開催には管轄を超えた連携が必要になる。男子大会はもちろんのこと、パラリンピック金メダリストのエスター・バーガー氏がTDを務め、男女の車いすテニストーナメントを同時開催した2月のATP公認大会「ABN AMRO OPEN」(オランダ)も運営のモデルにした。

「こうした大会は一般のプロ選手と交流し、彼らのプレーを間近で見ることで、車いすの選手の意識もレベルも変わる。そして、観客に車いすテニスがどんなものかを直接伝えることができる」と、メリットを語る国枝TD。来年以降については、「シャワールームの段差といったハード面の課題解決や、今回は叶わなかった海外選手の参戦なども実現できたら」と話す。

(MA SPORTS)