パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2023年11月7日

CPEDI3★GOTEMBA2023・第7回全日本パラ馬術大会

パリ目指す人馬が華麗な演技を披露

パラ馬術の国際競技会「CPEDI3★GOTEMBA2023」が3日から3日間にわたり、静岡県の御殿場市馬術・スポーツセンターで開催された。パリ2024パラリンピックの日本代表人馬の選考対象となる重要な大会のひとつで、日本障がい者乗馬協会の強化指定選手ら国内トップレベルの人馬が集結した。

性格で美しい演技を披露したグレードⅢの稲葉&カサノバ号

稲葉&カサノバ号が存在感

長方形のアリーナ内で人馬一体となって演技を行い、その正確性や芸術性を競う馬場馬術競技。障がいの種類や程度に応じて分けられたⅠ~Ⅴの5つのグレード(クラス)ごとに競技を行い、そのなかで順位を競う。

東京2020パラリンピック(以下、東京2020大会)日本代表でグレードⅢの稲葉将(静岡乗馬クラブ)は、カサノバ号とコンビを組んで出場。パラグランプリAでは歩様の移行をスムーズに成功させ、より難しい経路で行うパラグランプリBでもカサノバ号がリラックスしながらも活発さを維持した演技を披露。2種目の平均で67.667%と高い得点率をマークした。稲葉は「カサノバと組むのは1年ぶり。試合の緊張感があるなかで、スコアの更新ができてよかった」と、笑顔を見せた。また、パラグランプリフリースタイルでも72.745%とハイスコアを記録した。

パラリンピック2大会連続出場を目指す稲葉。海外の大会ではヒューゼットという馬に乗り、9月のポーランドの大会では2種目平均で67%後半の成績をおさめている。「東京パラは開催国枠での出場で、次のパラリンピックに誰も日本人選手が出場しないのはあってはいけないと思っている。自分が引っ張っていくつもりで競技に取り組んでいる」と語り、パリ出場に向けて覚悟をのぞかせていた。同グレードの常石勝義(明石乗馬協会)&ランドヴァリアント号は2位だった。

新星・城が好パフォーマンス

これからのさらなる飛躍が期待される城

グレードⅤは、城寿文(福岡県馬術連盟)&アルマーニ15号が好パフォーマンスを見せた。とくにパラグランプリBでは67.763%と得点率を伸ばし、フリースタイルでも70%台に乗せた。高校で馬術部に入部し、卒業後から現在まで乗馬専門の装蹄師として活動している49歳の城。2020年10月に交通事故に遭い、両脚を骨折し、右脚に感覚障がいと機能障がいが残った。歩行は可能なため健常者の競技会などに出場していたなか、東京2020大会をテレビで観て「馬のクオリティの高さに驚いた」と、パラの世界に関心を持った。現役の馬場馬術の選手である妻の勧めもあり、3年前にパラ馬術に挑戦し始めた。

もっとも障がいが軽いグレードⅤは競技レベルが高く、「海外の選手は、日本の健常者のトップレベルの選手と同じくらい」だという。ただ、実力差を痛感しつつも、普段の練習時間の使い方やトレーニング内容を見直すきかっけにもなったといい、引き続き、パリ出場切符獲得を目指して邁進していくつもりだ。

グレードⅡは、吉越奏詞(成田乗馬クラブ)&アルバテミス号が大きなミスなく堂々とした演技を披露。そのなかでも、とくに馬のストレッチ運動で高評価を得て、優勝を果たした。今年から社会人となり、所属先のバックアップもあって海外の大会にも定期的に出場している。今年6月のオランダでの★3の大会では、自身の馬であるジャビーロ号に乗り、フリースタイルで70%台を獲得するなど好調だ。吉越は、「パリに出場して決勝で70%台を取れればメダルも夢ではない。さらなる技術の向上に努めたい」と、力強く語った。宮路満英(水口乗馬クラブ)&ロッシーニ号は準優勝だった。

大川はグレード変更も前向きに世界に挑戦

もっとも障がいが重いグレードⅠは、大川順一郎(蒜山ホースパーク)&童夢号が唯一出場。パラグランプリAではエントリーした選手のなかでもっとも高い67.014%をマークするなど、結果を残した。

大川は手指に力を入れづらいため、手綱をループ状にするなど工夫をしている

進行性の病気を患う大川は今春、グレードⅡからⅠに変更になった。歩法が「常歩(なみあし)」と「速歩(はやあし)」から、「常歩」のみとなり、ゆっくりと大きく運動していく分、わずかなミスも目立ってしまうため、「とても難しい。今まで以上に繊細なハミ受けが要求される」と大川。日頃から、全身全霊で馬の動きと気持ちを感じながら練習するようにしているという。8月にはデンマークで開かれた2★の大会で高評価を得た。「12月にはオランダで3★の大会が開催される。もし出場できたら、70%を目標に頑張りたい」と、言葉に力を込めた。

グレードⅣは、高嶋活士(ドレッサージュ・ステーブル・テルイ)&ケネディ号が出場。パラグランプリAではハミ受けが安定しなかったが、よりコントロールが求められる同Bでは修正し、得点率を伸ばした。

(MA SPORTS)