パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2024年3月26日

2024日本パラ水泳春季チャレンジレース 兼 パリ2024パラリンピック水泳競技日本代表推薦選手選考競技会

鈴木、木下ら22人がパリ代表に内定!

パリ2024パラリンピックの日本代表推薦選手の選考を兼ねた「2024日本パラ水泳春季チャレンジレース」が9日から2日間にわたり、静岡県富士水泳場で行われた。大会後、日本パラ水泳連盟と日本知的障害者水泳連盟は選考委員会を開き、パリ大会の日本代表推薦選手22人を発表。東京2020パラリンピック金メダリストの鈴木孝幸(GOLDWIN)や初出場となる木下あいら(三菱商事)らが選ばれた。

6大会連続のパラリンピック出場を決めた鈴木

緊張感漂う「一発勝負」の選考会

パリ大会の出場枠は、昨年の世界選手権(マンチェスター)で「男子3・女子1」を獲得。これに加え、世界パラ水泳連盟(WPS)からMQS配分獲得枠として「男子9・女子9」(合計男子12・女子10の計22人)が配分された。今大会はこの出場枠を争奪する重要な代表選考競技会であり、多くのトップ選手が参戦。各種目とも予選なしの「一発勝負」で行われ、選手は派遣基準記録突破を目指して集中力を高めていた。

なお、昨年の世界選手権の男子100m平泳ぎ(SB14)で優勝した山口尚秀(四国ガス)は、今大会に出場した時点で推薦決定となり、東京2020大会に続き、2度目のパラリンピック出場を決めた。

復調の宇津木がアジア新! 2大会連続パラ出場へ

宇津木は女子100m平泳ぎ(SB8)でアジア新記録を樹立

パリ大会でのメダル獲得を基準に設定された派遣A基準記録を突破した選手は、即時に推薦内定選手となる今大会。2日間を通し、女子は木下あいら(三菱商事)が女子200m個人メドレー(SM14)、また宇津木美都(大阪体育大)が女子100m平泳ぎ(SB8)で突破し、パリ行き切符を手にした。

宇津木はアジア記録を更新する1分25秒23で泳ぎ、7年前ぶりに自己ベストを更新した。この数年はタイムが伸びず、ライバルの福田果音(KSGときわ曽根)に先行を許す大会もあったが、「先輩として負けられない、今度こそという気持ち」で奮い立った。年明けからの調整が上手く進んでいるといい、「パリでは表彰台とタイム、その両方を狙いたい」と、力強く語った。また、初めてのパラリンピック代表に内定した木下は、「ほっとした。パリでは積極的なレースを観てほしい」と話した。

男子は、鈴木孝幸(GOLDWIN)が男子50mと100m自由形(S4)の2種目、窪田幸太(NTTファイナンス)が男子100m背泳ぎ(S8)、木村敬一(東京ガス)と富田宇宙(EY Japan)がともに男子100mバタフライ(S11)で派遣A基準記録をクリアした。

37歳の鈴木は、アテネ大会から6大会連続パラリンピック出場となる。男子50m自由形でマークした37秒86は「世界選手権でも杭州アジアパラでも出せなかったタイム」と振り返り、パリに向けては「東京では叶わなかった有観客のなかで表彰台の真ん中に立ちたい」と、東京2020大会に続く金メダル獲得を誓った。また、窪田はエントリーをメイン種目一本に絞って自らを追い込み、結果を残した。木村と富田は東京2020大会の決勝を彷彿させるようなレース展開でワン・ツーフィニッシュ。木村は「世界の競技レベルは向上している。自分たちもアップデートして、パリでは東京大会を超えるパフォーマンスを見せたい」と、意気込みを語った。

南井は最終種目で自己ベスト、石浦も体調不良乗り越え日本新

男子200m個人メドレー(SM10)で派遣基準記録を突破し、ガッツポーズを作る南井

南井瑛翔(近畿大)は、男子200m個人メドレー(SM10)で自らが持つアジア記録を1秒以上塗り替える2分18秒03で泳ぎ、派遣B基準記録を突破。2大会連続でパラリンピック代表に選ばれた。他の選手が続々と好タイムをマークするなか、先に泳いだ男子100mバタフライと50m自由形はタイムを伸ばせず「プレッシャーを感じていた」。それでも、最後のレースは今大会を見据えて合宿で泳ぎこんだ成果を発揮し、結果的に大ベストとなった。南井は「コーチや仲間が背中を押してくれた。パリまでしっかり練習したい」と語り、笑顔を見せていた。

石浦智美(伊藤忠丸紅鉄鋼)は、女子100m背泳ぎ、女子50mと100m自由形(S11)の3種目すべてで派遣B基準記録をクリア。とくに自由形はどちらも日本記録を更新し、存在感を示した。この1カ月は緑内障を発端とする睡眠障害の影響で体調不良に陥っていたという石浦。周囲の人々の支えで徐々に練習を再開し、直前の練習ではレースを想定した調整ができるまで復調。そして、大一番で結果につなげ、「パリではメダルを獲り、サポートしてくれた人たちに恩返しをしたい」と話し、前を向いた。

昨年の杭州アジアパラで金メダルを含む4個のメダルを獲得した15歳の川渕大耀(宮前ドルフィン)は、得意種目の男子400m自由形(S9)で4分20秒63をマークし、自身が持つアジア記録を更新。派遣B基準記録も突破した。生まれつき左脚が内側に曲がる障がいがあり、小学2年の時に大腿から切断した。水泳は幼稚園生の時に始め、中学から本格的に取り組むとメキメキと頭角を現した。身長は179センチで、片脚の強力なキックで推進力を生むダイナミックな泳ぎが強みだ。川渕は「パリでは自分よりも速い人と泳ぐのが楽しみ」と、力強く語った。

なお、正式な日本代表選手は今後、日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会の承認を経て決定される。

(MA SPORTS)