天皇杯・皇后杯 第40回飯塚国際車いすテニス大会(Japan Open2024)
男子の小田、女子の上地が単複2冠!
「天皇杯・皇后杯 第40回飯塚国際車いすテニス大会(Japan Open2024)」が9日から6日間にわたり、福岡県のいいづかスポーツ・リゾートテニスコート等で開催された。カテゴリーはグランドスラムに次ぐスーパーシリーズに位置づけられ、20カ国・1地域から世界のトップランカーを含む97人がエントリー。シングルスで優勝した男子の小田凱人(東海理化)に天皇杯、女子の上地結衣(三井住友銀行)に皇后杯が贈られた。
表彰式後、スタッフやボランティアらと集合写真におさまる選手たち
小田が世界1位の宿敵を破り連覇達成
小田は攻撃的なテニスを貫き、ヒューエットとの接戦を制した
男子シングルスは、世界ランキング1位のアルフィー・ヒューエット(イギリス)と17歳で同2位の小田が勝ち上がり、決勝で激突した。序盤から力強く、またコースを深く突いたショットで主導権を握った小田が第1セットを6-1で奪取。第2セットは自身のミスも重なり1-5とリードされたが、ここから高い集中力を発揮。鋭いリターンからゲームメークするなどして逆転に成功した。第12ゲームでブレークを許し、迎えた7点先取のタイブレークは互いに譲らず一進一退の攻防が続くが、最後は小田がバックハンドのクロスショットで前に出た相手を抜き、接戦を取り切った。2連覇を達成した小田は「特別な大会で優勝できてうれしい。アルフィーに対して1-5からまくれたのはいい経験になった。パリ(での優勝)に一歩近づいたと思う」と、振り返った。
また、同ダブルスで小田は三木拓也(トヨタ自動車)とペアを組み、決勝で第1シードのヒューエット/ゴードン・リード組(イギリス)と対戦。セットカウント1-1で迎えた10ポイントマッチタイブレークでは、小田のサービスエースを機にポイントを重ねて日本がリードを広げると、最後まで攻撃的なダブルスで相手を追い込み、6-4、2-6、10-6で制した。相手ペアはパラリンピックのリオ大会と東京大会で銀メダルを獲得している強敵だっただけに、ふたりは「強い相手に日本で勝てて最高」と、笑顔を見せていた。
試合中の修正力の高さが光った上地
6年ぶりの優勝を果たし、笑顔で皇后杯を掲げる上地
女子シングルス決勝は、第1シードの上地と今季好調を維持する第3シードのアニク・ファンクート(オランダ)が対戦。2-6、6-1、6-0で上地が勝利し、2018年大会以来の優勝を飾った。第1セット、上地は相手の強打とバックハンドのスライスに翻弄され、ブレークができずに落としてしまう。しかし、第2セットはファンクートの重たいサーブに対してリターンのポジションを下げるなど対応し、アウトを誘う配球やリターンエースが増えたことで、一気に流れを引き寄せた。ファイナルセットはその勢いを維持し、相手に1ゲームも与えない完勝で熱戦に幕を下ろした。
今大会、参加を見送った世界ランキング1位のディーデ・デ フロート(オランダ)との対戦は叶わなかったが、上地は連敗中のデ フロートに勝利するため、5月のワールドチームカップ(トルコ)を皮切りに、クレーコートの大会に積極的にエントリーしていくという。「時間はあまりないけれど、しっかり準備をしてパリでは金メダルを獲得したい」と、力強く語った。また、上地はホタッツォ・モンジャネ(南アフリカ)とペアを組んだ女子ダブルスでも決勝に駒を進め、高室冴綺(スタートライン)/ファンクート組を6-0、6-1で破って単複優勝と存在感を示した。
女子シングルス第2シードの大谷桃子(かんぽ生命)は準決勝を途中棄権した。大谷は昨年の全米オープンで腰を痛めケアにあたっていたが、今年の全豪オープンで痛みが再発。2月に3度目の手術をしており、今大会が復帰戦だった。大谷は「痛みがあるなかでもここまでプレーができたのはよかった。また体力と筋力、試合勘を戻して、パリに挑みたい」と話した。
クアード日本勢はメダル獲得ならず
上肢にも障がいがあるクアードは、日本勢ではロンドン大会から3大会連続でパラリンピックに出場した諸石光照(EY Japan)、杭州2022アジアパラ競技大会のシングルスで銀メダル、ダブルスで金メダルを獲得した石戸大輔(三菱オートリース)らが出場したが、シングルスは2回戦までで全員が敗退した。決勝は、世界ランキング2位のサム・シュローダー(オランダ)が第3シードのガイ・サッソン(イスラエル)を6-1、6-2で下し、大会初優勝を遂げた。
現在のクアード界の上位を席巻するのは、比較的障がいが軽く、パワーとスピードを兼ね備えた選手たちだ。そのなかで、日本勢は比較的重度の障がいで握力や腹筋が弱い選手が多い。利き手とラケットをテーピングで固定してプレーする57歳の諸石は「現状では日本人選手がスーパーシリーズの1回戦を突破すること自体が大変なこと。もっと若い子が出てきてほしい」と話し、国内のクアードの裾野拡大の必要性を訴えていた。
(MA SPORTS)