パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2024年6月10日

神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会

最高峰の大会で、日本勢は21個のメダルを獲得!

パリ2024パラリンピックの代表選考を兼ねた「神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会」が5月17日から9日間にわたり、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開かれた。パラ陸上の世界選手権が東アジアで開かれるのは初で、104カ国・地域から選手1,073人が参加した。日本勢は過去最高の66人がエントリーし、銀9、銅12の計21個のメダルを獲得した。

女子円盤投げ(F53)で銀メダルを獲得した鬼谷(左)とアシスタントで夫の健太さん

3選手が新たに出場枠を獲得

2位以上に入ればその選手が所属する国にパラリンピックの出場枠が与えられる今大会。日本勢は金メダルの獲得はなかったものの、男子100m(T13)で川上秀太(アスピカ)が、女子円盤投(F53)で鬼谷慶子(関東パラ陸協)が、男子200m(T64)で大島健吾(名古屋学院大学AC)がそれぞれ銀メダルを獲得し、前回大会で獲得した出場枠を上積みした。

今年4月に日本パラ陸上競技連盟の強化指定選手になったばかりの鬼谷は、女子円盤投(F53)で自己ベストを大幅に上回る14m49をマークした。背もたれのない椅子に座れないなど重い障がいがあるが、夫の健太さんがアシスタントを務め、専用投擲台に工夫を凝らして競技を行う。学生時代に投擲競技をしていた経験も生き、パリ行き切符を掴んだ鬼谷は、「パリでは15m台を目指したい」と力強く語った。

同じく初出場の川上は、男子100m(T13)で10秒70のアジア新記録を樹立する走りを見せた。「ようやくパラのスタートラインに立てた」と喜びを表し、「2位は悔しいので、パリで金を獲ってこのモヤモヤを晴らしたい」と語った。大島は、男子200m(T64)のスタートで素晴らしい反応をみせ、コーナーでも加速。23秒13の自己ベストで、銀メダルに輝いた。同100mでは4位だった大島。「まだ義足の調整が必要だけれど、走りを修正すれば100mも200mも伸びると思えた大会だった」と、振り返った。

前川、小野寺らが銅、好パフォーマンスを発揮

2種目で銅メダルを獲得した前川

2位以上には入れなかったが、好成績を残して伸びしろを感じさせた選手も多かった。前川楓(T63/新日本住設)は、女子走幅跳と同100mの2種目で銅メダルを獲得。とくに走幅跳では1本目からシーズンベストとなる跳躍を決め、3本目には自己ベストを更新する4m66をマークした。「銀を逃して悔しいけれど、競技人生で一番良いジャンプができた」と胸を張った。

車いすT34の女子100mと同800mは、小野寺萌恵(北海道・東北パラ陸協)、吉田綾乃(関東パラ陸協会)、北浦春香(インテージ)がいずれも決勝進出を果たし、世界の強敵とわたりあった。なかでも、小野寺は同100mで銅メダルを獲得するなど活躍が光り、さらなる飛躍が期待される。

男子1500m(T11)の決勝は、転倒者が出る波乱のレース展開となったが、今季世界ランキング3位につけている十川裕次(オムロン太陽)が最後まで粘りの走りを見せ、3分55秒94で銅メダルを獲得。「世界と戦えて、収穫があった」と振り返った。また、男子やり投(F46)で山﨑晃裕(順天堂大職員)がシーズンベストの61m02で5位入賞。6月の日本選手権でさらなる記録更新を誓っていた。

前回金メダリストは連覇逃すも存在感

佐藤はレーサー破損のトラブルを乗り越え、3種目でメダルを獲得した

前回大会の金メダリストらは、惜しくも連覇はならなかった。3種目にエントリーした佐藤友祈(T52/モリサワ)は、開幕前に輸送時のトラブルでレーサーが破損するアクシデントに見舞われた。急遽、以前使用していた“代車”でレースに出場することになるなか、男子400mと同1500mで銀メダル、同100mで銅メダルを獲得。窮地に追い込まれながらも、存在感を示した。

男子5000m(T11)は、唐澤剣也(SUBARU)が15分3秒25の3位でフィニッシュ。唐澤が持つ世界記録はブラジルの選手に更新され、唐澤は「前回大会で優勝して油断があったかもしれない。パリに向けて、気を引き締めたい」と話した。また、前回大会は男子400mで優勝、同走幅跳で2位に入った福永凌太(T13/日体大)は、今大会は同400mに専念。47秒86で銀メダルを獲得した。優勝したアルジェリア人選手は自らが持つ世界記録を更新しており、福永は「パリでは彼にしっかりと勝負できるようにしたい」と話し、前を向いた。

異なる障がいの男女4人の選手がタッチで次の走者につなぐユニバーサルリレーで、日本は予選・決勝とも、第1走者に澤田優蘭(T12/エントリー/ガイドランナー・塩川竜平)、第2走者に辻沙絵(T47/日体大)、第3走者に松本武尊(T36/鎮誠会)、第4走者に生馬知季(T54/GROP SINCERITE WORLD-AC)でチームを構成。予選はスムーズなタッチで日本新記録となる47秒60をマークしたが、決勝では走者が内側のレーンをまたいだとして失格となった。レース後、4選手は悔しさをにじませながらも、「予選で日本新が出たことは大きな収穫」と話し、パリ大会でのリベンジを誓っていた。

(MA SPORTS)